受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2021年3月のBooks

 「星の王子さま」「アンネの日記」「アラバマ物語」「論語」「戦争と平和」。外国の学校で必読とされている本です。それぞれどこの国の必読書かわかりますか。正解は順にフランス、ドイツ、アメリカ、中国、ロシア。読書一つをとっても、お国柄が表れるものです。今月紹介する『絵で見る統計 世界の国ぐに』は、暮らしにかかわるさまざまな事柄や数字を、国別に比較する楽しい絵本です。身近な暮らしの様子がわかると、遠い外国でも親しみが湧いてくるものです。世界の国々の今を見てみませんか。

『ベランダに手をふって』

  • 葉山エミ=作

  • 植田たてり=絵

  • 講談社=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

ベランダのお母さんに 手を振って登校する 5年生のぼくってヘン?

注目の一冊

 小さいころからの習慣だけど、大きくなったからもうやめようかな、なんて思っていることはありませんか。物語の主人公、輝はお母さんとの朝の日課をやめようか迷います。輝は朝、学校に行くとき、団地の5階から下に降りてから、ベランダにいるお母さんに手を振ります。「行ってらっしゃい」「行ってきます」。小学校に入学してから5年生の今に至るまで、1日も欠かしたことがありません。
 ところがある日、いつものようにお母さんに手を振っているところを、クラスの男子に見られてしまいます。あっという間にクラスのみんなに知れ渡り、男子たちにからかわれてしまう輝。でもクラスの香帆はそんな輝に「ちっともおかしくない。みんな、笑うなんてひどいよ」と言ってくれるのでした。
 輝と香帆には共通点があります。二人ともお父さんを亡くし、お母さんと二人暮らしなのです。ベランダで手を振る習慣もそのことが原因で始まったのです。
 父との思い出を大切にしながら、母や祖父、叔父一家の愛情に包まれて暮らす輝。一方、夫が亡くなったショックから立ち直れない母と暮らす香帆。父がいないという共通点はあっても、抱えているものの大きさが違うことを輝は感じます。
 悲しみを抱えながらも、懸命に前を向いて歩こうとする香帆。香帆との出会いが、輝を変えていきます。叔母に赤ちゃんが生まれたときの場面は、命のいとおしさがあふれて印象的です。5年生の日常をていねいに描きながら、少年の成長を描く、夏から春までの半年間の物語です。

『絵で見る統計 世界の国ぐに

  • ミレイア・トリウス=文

  • ジョアナ・カザルス=絵

  • 宇野和美・中山映=訳

  • あすなろ書房=刊

  • 定価=2,500円+税

  • 対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け

宿題が多い国は? 犬より猫が好きな国は? 比べてわかる、お国柄

 アメリカは「ノア」と「エマ」、エジプトは「イブラヒム」と「ファティン」、日本は「ハルト」と「メイ」。その国の赤ちゃんにいちばん多い、男の子の名前と女の子の名前です。地図で表されているので、どこの国でどんな名前が人気か一目瞭然です。
 国ごとの人口や言語、気候、宗教といった基本事項は地図帳によく出ています。しかし、この本ではそれ以外に、「家族」の人数は何人か、何を「ペット」にしているか、どんな「朝ご飯」を食べているか、どんな「スポーツ」が人気か、「宿題」にかかる時間はどれくらいかなど、生活に密着したデータを見せてくれます。世界の国々の暮らしぶりがイラストでわかる、スペイン発のユニークな絵本です。

『フクシマ 2011年3月11日から変わったくらし

  • 内堀タケシ=写真・文

  • 国土社=刊

  • 定価=1,800円+税

  • 対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け・小学校高学年向け

人々の生活は どう変わったか 写真が語る10年後の今

 ここは福島県いわき市にある放射能汚染測定室。山や道路、公園、校庭、家の庭など、さまざまな場所の土が集まっています。測定室の人は「今でも高い放射線量が計測されることがあります。目に見えないけれど、何十年も残るものがあるのです」と言います。新型コロナウイルスで耳慣れた「緊急事態宣言」ですが、実はこの地には10年前からずっと解除されていない緊急事態宣言があります。「原子力緊急事態宣言」です。
 東日本大震災から10年を迎えた福島県。地震と原発事故という二重の災害の後、人々の暮らしはどのように変わったのでしょうか。「あの日」から10年後の福島の姿を、人々の生の声とともに写真で伝えます。

大坂城おおさかじょうのシロ』

  • あんずゆき=作

  • 中川学=絵

  • くもん出版=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

サチは信じていた シロは生きている 必ず戻ってくる

 父と山道を歩いているとき、一匹の犬に出会った少女サチ。白い毛並みはひどく汚れ、あばら骨が浮き出た野良犬です。その犬はサチたちをどこかに連れていきたがっているようでした。ついていくと、たどりついた粗末な山小屋に、犬の飼い主と思われる人が倒れていました…。
 ときは豊臣秀吉が天下を治めていた時代。当時、大坂城にいたといわれる虎をめぐって、サチと、山道で出会った犬のシロが繰り広げる、はらはらどきどきの物語です。どんなことがあってもシロを守ろうとするサチ。危機を奇跡的にくぐり抜け、命をつないでいくシロ。昨年の「さぴあ作文コンクール」課題図書の作者による力作です。

『星明かり』

  • 熊谷千世子=作

  • 宮尾和孝=絵

  • 文研出版=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校高学年向け

スバルは空に浮く小さな目 「こっちだよ」って 迷う人を導いてくれる

 上杉昴は6年生の女の子。昴のお母さんは自分を産んですぐに亡くなったので、今のお母さんの聡子さんが、2歳のときから自分を育ててくれています。その後に生まれた妹・花野は聡子さんに甘えてばかり。そういう姿を見ると、なぜか昴はいらいらします。前は何とも思わなかったのに。お父さんと聡子さんの本当の子どもは花野だけ。わたしは3人のなかに入れない。そう思うと胸がずきんと痛むのでした。
 星のスバルと同じ名を持つ少女が、名前をきっかけに亡き母の故郷へ出かけます。そこで知った母の思い、聡子さんの思い。そして星好きの少年との出会い。ひと冬の出来事が昴を成長させていきます。

『子どもをキッチンに入れよう!』

  • 藤野恵美=著

  • ポプラ社=刊

  • 定価=1,500円+税

  • 対象:保護者向け

上手に手伝わせれば 子どもの料理体験は いいことずくめ

 子育てをしながら毎日ごはんを作るのは大変なこと。そこで著者は考えました。料理に子どもを参加させ、家事と育児を同時に楽しもうと。子どもがキッチンに入ると面倒になる気がしますが、凝ったものを作らなければいいのです。
 著者の体験談を通して、子どもを料理に参加させる方法をアドバイス。一緒に作れるメニューのレシピも豊富です。旬の野菜や産地を知ることは社会や理科の勉強になり、リットルやグラムという単位を使うことは算数の勉強にもなります。何より一緒に料理をすることで親子のコミュニケーションが豊かになります。昨年の「さぴあ作文コンクール」課題図書の作者による作品です。

枕草子まくらのそうし

  • 角川書店=編

  • KADOKAWA=刊

  • 定価=680円+税

日常のひとこまに 今に通じる「あるある」も 古典の入り口になる一冊


仙川校 校舎責任者

 清少納言の『枕草子』は、小学校の社会科の授業で初めて知りました。平安時代の宮廷生活を描いた随筆なので、時代的にも内容的にもそのときは興味が持てませんでしたが、高校生のときに、古文の先生から内容に踏み込んだ話を聞いて興味が出てきました。たとえば「春はあけぼの」で始まる序文。「春はほのぼのと夜が明ける時間帯がいいよね」という意味ですが、カメラのシャッターで切り取ったように、それぞれの季節を時間帯で表す発想自体がユニークです。また対象ごとに光の描写が描き分けられていて、情景が目に浮かぶよう工夫されているのも清少納言のすごいところです。
 また、全体を読んでいくと、現代にも通じる「あるある」がたくさん出ていることに驚きます。たとえば「ありがたきもの」(めったにないこと)として作者が挙げているのは、「主人の悪口を言わない使用人」「全然欠点のない人」など、現代と変わりません。「はしたなきもの」(体裁が悪いもの)は、「ほかの人が呼ばれたのに、自分かと思って出てしまったとき。物をくれようとしているときは、なおさらそうだ」とあります。わたしも「鈴木」というよくある苗字のために、同じような経験があるので、よくわかります。
 清少納言は中宮(天皇の后の最高位)である定子(ていし)に仕えていました。定子は関白藤原道隆の娘でしたが、道隆が亡くなり、藤原道長が権力を握ると、次第に没落していきます。歴史的には敗者の立場となる側からの書となりますが、清少納言は「定子さまはすばらしい」と、定子をたたえる文を多く添えています。見えるものを明るく華やかに描いていますが、つらい時代のなかでも記していたことを思うと、悲しげにも見えてくる明るさにも感じます。
 まずは現代語訳でおもしろいところを読んで、興味を持ったら原文を追いかける形でもいいと思います。わたしも『枕草子』を読んでから、いろいろな古典を読むようになりました。古典や歴史に親しむきっかけになる本です。

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