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関西の名門、灘中学にはかつて国語の名物授業がありました。中勘助の小説『銀の匙』を3年かけて読み解く橋本武先生の授業です。今月紹介する『未来への授業』の著者、灘中高の和田孫博校長も、その授業を受けたそうです。和田先生によれば、「丑年生まれ」の人物が登場すれば十二支を使った時刻や方角について学び、明治時代の駄菓子が出てくればその駄菓子を食べながら話を聞いたそうです。本の読み方はいろいろ。一冊の本をきっかけに広がる世界の豊かさを感じます。
『地球のことをおしえてあげる』
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- ◆ソフィー・ブラッコール=作・絵
- ◆横山和江=訳
- ◆すずき出版=刊
- ◆定価=1,760円(税込)
- ■対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け
知らないことは まだまだあるけれど みんなこの星で暮らしている
もし宇宙から来る誰かさんに、地球がどんなところか教えるとしたら、あなたならどう説明しますか。どんな説明を考えたとしても「それだけじゃないよ」と言われそうです。地球のすべてを説明するのはとても難しいことです。この絵本はその難題にチャレンジしました。
主人公の男の子は、宇宙から来る誰かさんに向けて説明を始めます。宇宙から見た緑と青の地球のこと。人が住んでいるいろいろな場所や家族について。人それぞれに違う見た目や表情、服の話。さらに天気、乗り物、職業、学校、海や陸にすむ生き物たちまで。ページを開けるたびに、地球に存在するたくさんのものが登場します。そこには作者が子どもたちからもらった、地球を説明するためのアイデアが詰まっています。それを作者独自の視点、独自の構成で、きれいな楽しい絵にして見せてくれます。
作者は民間・非営利国際組織「セーブ・ザ・チルドレン」の活動をするなかで、世界中の子どもたちと会ってこう思いました。「みんなの心が一つになる物語を描きたい」と。そこから生まれたのがこの絵本です。どのページも文字は少ししかありません。でもすべてのページが「地球」を、「世界」を感じさせます。そして国の違い、人種の違い、職業の違い、動物と人間の違いなど、いろいろな違いはあるけれど、みんな「地球で生きている」と感じさせます。独りでさまざまに思いを巡らせながら、また友だち同士や親子で話しながら、どのページもていねいに読んでほしい一冊です。
『すきなこと にがてなこと』
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- ◆新井洋行=作
- ◆嶽まいこ=絵
- ◆くもん出版=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:幼児向け・小学校低学年向け
「好き」と「苦手」で 支え合えば、世界の人と つながることができる
ぼくはスポーツが大好き。でもみんなの前で発表するのは苦手。そんなときは、りんちゃんが一緒に発表してくれる。りんちゃんは動物が苦手。だから動物好きのけんちゃんが、飼育係の仕事を手伝ってくれる。けんちゃんはさて、何が苦手なのでしょう。でも苦手なことがあっても大丈夫。独りじゃないのですから。
誰でも好きなこともあれば、苦手なこともあります。苦手なことをなくしていこうとがんばることは大切ですが、それと同じくらい、苦手なことがある自分を受け入れることも大切だと、作者は言います。お互いがそれぞれの違いを認め合って支え合って、世界はつながっていく。そのすばらしさが伝わってきます。
『サイコーの通知表』
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- ◆工藤純子=作
- ◆講談社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
通知表はただの紙切れ あんなので、ぼくらの何が わかるんだろう
4年生の朝陽の通知表は「できる」ばかり。「よくできる」も「もうすこし」も一つもありません。「普通の人間です」と言われているようで、すごく嫌です。「通知表なんかでぼくらの何がわかるんだろう」というのは、クラスのみんなも同じ考えです。ある日父親から、「大人も上司がつける成績で給料が決まる」と聞いた朝陽は、子どもたちで先生の通知表をつけることを思いつきます。でも人を評価するのは簡単ではありませんでした。
通知表は何のためにあるのか。本当に必要なのか。通知表作りを通して、子どもたちが、当たり前にあるものに疑問を持ち真剣に考えていきます。さて最後はどんな通知表ができたのでしょうか。
『わたしの気になるあの子』
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- ◆朝比奈蓉子=作
- ◆水元さきの=絵
- ◆ポプラ社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
女の子が突然坊主に!! でもそれって いけないことなの?
瑠美奈はおじいちゃんが苦手。「女の子らしくしろ」と言ってくるのも、弟のことを「大事な跡取り息子」とかわいがるのも、女性を軽視しているようで気に入りません。そんなある日学校に行くと、なんと同じクラスの女子、詩音が頭を坊主頭に刈り上げていました。からかう男子たち。転校生の詩音はますますクラスで孤立してしまいました。
人がしない「普通ではないこと」をするのは、勇気がいります。ヘンに思われる、外される、独りぼっちになる。でも一人でも、理解しようとしてくれる人がいれば違います。自分らしくあること、そして自分らしくあろうとする人を尊重すること、の大切さが伝わってくる物語です。
『青の読み手』
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- ◆小森香折=作
- ◆平澤朋子=絵
- ◆偕成社=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
1冊の本に導かれて 動き出した少年の冒険 その予言された運命とは?
ラベンヌ王国の都で暮らす貧しい孤児の少年、ノアはある日、黒ずくめの男から「修道院に行って本を持ち出してきてほしい」と頼まれます。その修道院は魔法が使えるお坊さんがいるといううわさがあり、人から不気味がられていました。それでも、本を持ってくれば行方不明の姉の居場所を教えてくれるという話を聞いて、ノアは修道院に忍び込むことにしました。
ノアが依頼されたのは、選ばれた者だけが読むことができる魔法の本。選ばれた者とは誰なのでしょう。迫力ある黒魔術師との戦い、人語を話す不思議なネズミとの冒険、王女の出生にからむ王家の争いなど、1冊の本をめぐって物語はスピーディーに展開します。
『未来への授業』
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- ◆和田孫博=著
- ◆新星出版社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
「正解を探す問題でなく 正解のない問題に挑戦を」 灘校校長がアドバイス
なぜ勉強するんだろう。本当の自分って何だろう。どうやって好きなことを見つけたらいいんだろう。小中学生が直面する問題を取り上げ、灘中学校・高等学校の校長先生が、豊富な教員経験をもとに優しく語り掛けてくれます。
灘校に在籍している中学・高校生の話をはじめ、各界で活躍する卒業生たちの体験談も豊富です。登場するのは、世界が認めるレゴのプロビルダー、福島県で放射線の調査を続ける医師、アメリカでも活躍する落語家、新型コロナウイルス感染防止器具の開発に取り組む医師などさまざま。中高時代の思い、社会に出てからの学びなど、体験をベースに語られるメッセージは、どれも貴重なアドバイスです。
『アリになった数学者』
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- ◆森田真生=文
- ◆脇阪克二=絵
- ◆福音館書店=刊
- ◆定価=1,430円(税込)
「なかったこと」にして ゼロから考えてみよう そこから新しい何かが生まれる
横浜校 校舎責任者何かを考えるとき、既成概念を取り払って、「もしこれが存在しなかったらどうだろう」と考えたことはありますか。たとえば、数というものが存在しなかったらどうか。この絵本では、そんな物語がわかりやすく描かれています。
物語は、数学者が突然アリになってしまうところから始まります。アリになった主人公は仲間のアリと一緒に木の実を運びます。でも人間には当たり前の数の「1」というものが、アリの世界にはありません。木の実が七つあっても「7」の意味がわかりません。主人公は「アリに人間の数学はわからない」と思います。でも実はアリにも「アリにとっての数」があり、それを主人公は理解できません。アリに理解できるようなことが人間に理解できない。そういう未知のものが存在することに、主人公は驚きます。
数の世界では最初に自然数ができ、後にマイナスの数や「虚数」が加わってきます。マイナスも「虚数」も今や数学では当たり前の存在ですが、それが生まれる前は想像すらされなかった世界だったのでしょう。そう考えると数に限らず、現在の科学では思いもよらないような世界がどこかに広がっていて、誰かに発見されるのを待っているような気がします。ノーベル賞を受賞した研究者の多くは、それまでの通説をくつがえす発見をしています。皆さんのなかにも将来研究者になりたいと思っている人がいると思いますが、もしかしたら、今まで考えもつかなかった世界を突き詰めていくことになるかもしれません。皆さんの前には、そんなとてつもなく大きな可能性が広がっているのです。
文章が難しい部分もあるかもしれませんが、カラフルな、不思議で楽しい絵がたくさん入っているので、文章に重点を置かなくても、冒険物語のように読むことができます。同じ著者の『数学する身体』には、冒頭にこの絵本と似た話が出てきます。こちらもおもしろいので、中学生になって数学を勉強するようになったら読んでみてください。
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