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「天高く馬肥ゆる秋」。確かに秋は空が高く見える気がします。その理由の一つは、秋は上空の高いところにできる雲が多く、空の見える範囲が広くなるからだといわれます。今月紹介する『すごすぎる天気の図鑑』によれば、雲の種類は細かく分類すると100種類以上もあるそうです。さて、秋に多いのはどんな雲でしょうか。空の本を手に、広い場所に行って秋の高い空をゆっくり眺めてみませんか。
『ぼくらのスクープ』
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- ◆赤羽じゅんこ=作
- ◆講談社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
学級新聞には 「真実」を載せたい! でも「真実」ってなに?
「悪魔の証明」ということばを聞いたことがありますか。やったことは証明できても、やっていないことは証明できない。だから疑われたら最後、やっていないことはわかってもらえない。そんな不可能なことを表すことばです。
主人公のイダッチには、やっていないことを証明したい事件がありました。ある家でインターホンを押して逃げるいたずら事件が続き、その犯人に疑われてしまったのです。真相を究明して学級新聞に載せたい新聞係のイダッチ。でも、事はそう簡単にはいきませんでした。
新聞係は、新聞記者にあこがれたイダッチが「新聞係を作って学級新聞を出したい」と提案してできたもの。でも新聞係に手を挙げたのは、「魔王」とあだ名される変わり者だけでした。おしゃべりなイダッチと無口な魔王。正反対の2人は事あるごとにぶつかります。真実を新聞に載せることにこだわるイダッチに、魔王は言います。「ものの見方は人によって違ったりするよね。真実とか、うそかうそじゃないかも人によって違う。だから簡単に決められない。そういうの、載せられるの?」
良いか悪いかはっきり言えないグレーなことは多いもの。抗議はできないけれど、悔しかったり嫌だったりすることもたくさんあります。そこに手が届かないいら立ちを感じつつ、実際に起こったことの背景には、これまで気づいていなかったことがたくさんあると知ったイダッチ。さて、どんな新聞が完成するのでしょうか。それは巻末を見てのお楽しみです。
『ヘレーじいさんのうた』
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- ◆肥田美代子=文
- ◆小泉るみ子=絵
- ◆文研出版=刊
- ◆定価=1,430円(税込)
- ■対象:幼児向け・小学校低学年向け
何が本当の幸せ? ブータンならではの ほっこりするお話
小さな国のある村に住んでいるヘレーじいさん。ある日、畑を耕していると、くわにごつんと大きな切り株が当たりました。切り株を掘り出すと、なんと顔ぐらいある大きなトルコ石が出てきました。喜んで市場に売りに行こうとする途中で、ヘレーじいさんは馬を引いた男に出会い、トルコ石を馬と交換してしまいます。高価なトルコ石と馬を交換できて男は大喜びです。さらにヘレーじいさんが進んでいくと今度は…。
読み進むうちに日本の「わらしべ長者」が思い浮かびます。でもお話は逆。「どうした、ヘレーじいさん?」とはらはらするうちに結末は大きく展開します。「しあわせの国」といわれるブータンらしい民話です。
『はじめての夏とキセキのたまご』
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- ◆麻生かづこ=作
- ◆酒井以=絵
- ◆ポプラ社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
偶然見つけた丸い石 これはただの石? それとも…
お父さんの転勤で、夏休みに引っ越しをすることになった5年生の世夏。引っ越し先は、今までの生活からは想像もつかない山の中。周囲にはお店もなく、人も歩いていません。「寂しい。寂し過ぎる」。そんなどん底の気分で散歩をしていた世夏は偶然、2人の男の子に出会います。彼らと話すうちに、隣の町で恐竜の化石が出たことを知り、恐竜好きの世夏は興味をひかれるのでした。
2人との出会いが、転校で落ち込んでいた世夏の夏休みを、思いがけず楽しい夏に変えていきます。主人公たちと一緒に化石探しをしているような、わくわくした気分になる物語です。好きなことが一つでもあると、出会いが生まれ、世界が広がります。
『ゴリラのきずな 京都市動物園のゴリラファミリー観察記』
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- ◆長尾充徳=著
- ◆山極壽一=解説
- ◆くもん出版=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
動物園のゴリラだって みんな失敗しながら 家族になっていく
京都市動物園には、父のモモタロウをはじめ母、長男、次男の4頭のゴリラ一家が暮らしています。ゴリラを家族で飼育している動物園は、日本では珍しいのです。野生とは違い、動物園では彼らの生活を四六時中間近で観察できます。その毎日の生活や成長ぶりを長い間、一家の世話と観察を続けてきた飼育スタッフの著者が、豊富な写真とともに紹介します。
赤ちゃんを逆さに抱いてしまう母のゲンキ。子育てに参加できないモモタロウ。手加減することを知らず、弟に痛い思いをさせてしまう兄のゲンタロウ。エピソードの一つひとつが、試行錯誤しながら家族になっていく成長物語であり、飼育スタッフたちの苦労と感動の記録です。
『キラリモンスター ちょっと変わった偉人伝』
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- ◆小川凛一=著
- ◆大野太郎=絵
- ◆砂田智香=デザイン
- ◆大和書房=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
現代の偉人は語る 「きみは変わらなくても そのままで最高!」
ロボット開発者の吉藤オリィさんは、病気で寝たきりの人の分身になるロボットを開発して、世界で評価されています。このロボットを作ったのは「世の中から孤独をなくしたかったから」。人づき合いが苦手で、不登校になり孤独な日々を過ごした経験があって生まれた目標でした。
「キラリモンスター」とはすべての人が持つ自分らしさのこと。少し変わったところや不格好なところも含めての、自分らしさです。それを進化させ、仕事や生き方に生かして活躍している15人を楽しい切り口で紹介します。職業はユーチューバー、モデル、起業家、映画監督などさまざま。個性の育て方、未来の描き方のヒントが詰まっています。
『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』
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- ◆荒木健太郎=著
- ◆KADOKAWA=刊
- ◆定価=1,375円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
雲がわかれば 天気がわかる 空の疑問を一気に解決
大気の状態が不安定なときに発達する雲、積乱雲。遠くから眺めるときれいな形をしていますが、雲の真下は土砂降りの雷雨になっています。積乱雲の中には水が含まれていて、とても発達したものだと、最大でおよそ600万トン、25mプール1万杯もの水が含まれているそうです。空に浮かぶ雲の中に、そんなに大量の水があるなんて、不思議な感じがしませんか。
空も雲もとても身近なものなのに、不思議なこと、知らないことがたくさんあります。「空が青いのはなぜか」「雲ができるのはどんなときか」「どこを見れば天気が急変しそうだとわかるか」などなど、空の不思議について、写真やイラストを使ってわかりやすく説明します。
『鬼の橋』
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- ◆伊藤遊=作
- ◆太田大八=画
- ◆福音館書店=刊
- ◆定価=825円(税込)
鬼が身近だった平安時代 あの世に渡る橋の上では… 歴史ファンタジーの魅力が詰まった一冊
豊洲校 校舎責任者歴史上の人物を主人公にした、読みやすいファンタジーです。同じ作者の作品が、サピックスの5年生冬期講習の国語のテキストに出ています。テキストのほうは現代の物語ですが、授業で知ったことを機に同じ作者の別の作品を読んでみるのもいいと思います。
主人公は小野篁という平安時代の有能な官僚で、その少年時代の物語です。この時代は今より夜の闇がずっと濃かった時代。鬼や魔物が人々の生活に密接にかかわっていました。本書も鬼が本当にいたのではないかと思わせる時代背景のおもしろさが、一つの魅力になっています。小野篁は百人一首に歌があり、漢詩文も残されているなど才能が豊かな人です。また不思議な伝説が数多く残されていて、昼は朝廷に仕え、夜は霊界に行って閻魔大王の下で役人をしていた、という話も伝えられています。そんなマルチな人物なら、歴史好きの人でなくても気になると思います。
篁は妹の死について罪悪感を持っています。同じようにほかの登場人物たちも陰の部分を持っています。両親と死に別れて孤独を抱えて生きる少女、人間として生きたいのに鬼の本性がぬぐえずに苦悩する鬼、そして死後も非情な任務を背負わされる征夷大将軍の坂上田村麻呂。そうした人物の深い悲しみが描き分けられていて、ストーリーの展開を楽しみながらも、人間の奥深い部分の描写に引き込まれます。最初は不出来で頼りなかった主人公が、少女や鬼に出会うことでだんだん強い人間になっていく。全体がそうした成長物語になっているのもおもしろさの一つです。
歴史上の人物を生き生きと描いているのが、歴史ファンタジーのおもしろさ。歴史に興味がある人ならわくわくしながらページをめくれるのではないでしょうか。もっと読みたいと思ったら、同じ作者の物語で、同じく平安時代を舞台にした怨霊がテーマの物語『えんの松原』、魂を宿した道具にまつわる物語を集めた『つくも神』もお薦めです。
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