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3月といえばひな祭り。ひな祭りはもともと「ひいな遊び」という平安貴族の女の子たちの「ままごと遊び」が、節句の儀式と結び付いたものだといわれます。「ひいな遊び」は『源氏物語』にも何度か出てきます。今月紹介する『ストーリーで楽しむ伝記 紫式部』はその『源氏物語』の作者、紫式部の生涯を物語として描いたもの。気軽な現代の言葉遣いで、平安時代の貴族の暮らしぶりを生き生きと伝えてくれます。一年に1度、ひな人形と会えるこの時期、本書とともに平安貴族の華やかな雰囲気に浸ってみませんか。
『2050年の地球を予測する 科学でわかる環境の未来』
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- ◆伊勢武史=著
- ◆筑摩書房=刊
- ◆定価=858円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
環境対策の心構えは 幻想を捨てて まず学ぶことから
ある農村で、村民たちがそれぞれウシを飼って生計を立てていました。ウシは共有の牧草地で放牧されています。ところが、ある村人がウシの数を増やして儲けたので、ほかの村人たちもウシを増やし始めました。やがて牧草は食べ尽くされ、ウシたちは飢え死にし、村人たちは不幸になってしまいました。
ある環境科学者の著作に登場する寓話です。ウシが増えれば牧草がなくなることぐらい、みんなわかっています。でも、今この瞬間にお金を増やすことをやめられないのです。著者はこの寓話を「人間が環境問題を引き起こすメカニズムの核心を突いている」と言います。この悲劇は牧草地が共有地だから起きたことです。地球上にある究極の共有地は大気と海です。牧草地が有限であるように地球も有限で、廃棄物を薄める大気や海も有限です。「この当たり前のことを現代人は忘れてはいないだろうか」と著者は問い掛けます。
なぜ環境問題は起こるのか。ほったらかしにしたらどうなるのか。こうした素朴な疑問に答えながら、環境科学を学ぶうえで必要な基礎知識を、幅広い視点で教えてくれます。若い世代に語り掛けるようなかみ砕いた説明で、環境問題は理科的な知識だけではなく、社会・経済・倫理など、「いろいろな学問の知識を総動員して解決していく問題」だということがよくわかります。大切なのは、短絡的に結論を出したり、理想論や感情論で突っ走ったりせず、広い視点でじっくり考えること。そう語る著者が、環境保全に向けて選択すべき道を示唆します。
『ねこまたごよみ』
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- ◆石黒亜矢子=作・絵
- ◆ポプラ社=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:幼児向け・小学校低学年向け
人と似ているようで ちょっと違う? ネコの妖怪たちの1年間
「ねこまた」は民話や怪談話に出てくるネコの妖怪。しっぽが二つに分かれているものが多く、何百年も生きるとか。「ねこまた」の一年は2月22日「ネコの日」を祝うカーニバルから始まります。2月には「せつぶん」と「ニャレンタインデー」もあり、3月には「おひにゃさまコンテスト」が開かれます。そして同じこの3月、「ねこまた」夫婦に五つ子ちゃんが誕生しました。
顔はネコだけど、やることは人間みたい。そんな「ねこまた」社会の一年を、五つ子たちの成長を追いながら、月ごとに楽しいイラストで紹介します。見開きいっぱいに季節の行事や植物、食べ物などがたくさん登場。家族で絵探しをしながら楽しんでください。
『ハタハタ 荒海にかがやく命』
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- ◆高久至=写真・文
- ◆あかね書房=刊
- ◆定価=1,430円(税込)
- ■対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け
ハタハタは必ず 秋田の海に戻ってくる! 願いを込めた写真集
赤・紫・オレンジなど、色とりどりに海底で宝石のように輝くのはハタハタの卵です。ここは秋田の海。ハタハタは、11月の終わりから12月にかけてこの荒海にやってきて産卵します。産卵場所を探して、大量のハタハタの群れが行ったり来たり。おなかの大きなメスが産卵のために海藻の中に入ると、オスたちも次々に飛び込みました。
秋田といえばハタハタ、というくらい昔はハタハタがたくさんとれた秋田県。ところが40年くらい前から急激に漁獲量が減りました。その後、自主的な禁漁によって一時回復したものの、現在はまた減っています。冬の海で命をつなぐハタハタの生態を通じて、持続可能な漁業の在り方を考えます。
『電車でスタンプラリーへGO!』
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- ◆本田有明=作
- ◆結布=絵
- ◆金の星社=刊
- ◆定価=1,430円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
謎の女の人は言った 「ラリーは初めてなの。 教えてくれる?」
鉄道好きの一くん。お父さんと一緒に行く予定だった鉄道会社のスタンプラリーに、思わぬ偶然が重なって、1人で行くことになりました。不安と期待を胸に電車に乗り込みますが、見知らぬ女の人に声を掛けられ、一緒にラリーをすることになってしまいます。黒服の2人組をお供に従えた、和服姿のその女の人は、どこから見ても怪しそうなのですが…。
最初は正体不明の女の人と同行するのを嫌がっていた一くんですが、一緒にラリーを続けるうちに、相手のことを思いやれるようになっていきます。モデルのわかりそうな駅名や路線名をモチーフにして、鉄道スタンプラリーの楽しさを詰め込んだ、わくわくするお話です。
『願いがかなう自動はんばいき ジャンケン必勝てぶくろ』
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- ◆山口タオ=作
- ◆たかいよしかず=絵
- ◆童心社=刊
- ◆定価=1,100円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
持てば最強になれる 不思議グッズがいっぱい 君ならどれを買う?
クルミはジャンケンが苦手。クラスの係決めも、劇の役決めも、ジャンケンに負けたせいで悔しい思いをしてきました。そんなクルミの前にある日突然、空からロケットが降りてきました。「イラッシャイマセ」。ロケットが言うと、機体の四角いドアが左右に開き、自動販売機が現れました…。
不思議な自動販売機に出合った3人の子どもたちの物語です。自動販売機が売るのは「ジャンケン必勝てぶくろ」「算数すきすきメガネ」「ピアノ名人ハンドクリーム」など、あれば最強になれそうな商品ばかり。調子に乗ってひどい目にあったり、人の気持ちに気づくきっかけになったり、不思議グッズは、使う人次第。楽しさと優しさが詰まった物語です。
『ストーリーで楽しむ伝記 紫式部』
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- ◆令丈ヒロ子=著
- ◆鈴木淳子=絵
- ◆岩崎書店=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
「源氏物語」誕生秘話から どきどきの恋のお話まで 多感な人生を物語で紹介
『源氏物語』で有名な平安時代の物語作家、紫式部は小さいときから本が大好き。平安時代の女性には不要といわれた漢文の知識もあり、「男に生まれていたらなあ」と父親に言われたというエピソードは有名です。
そんな紫式部の人生を、娘の賢子(のちの大弐三位)が、歌人・和泉式部の娘である小式部に教えるという形式で進行します。「紫式部さまってどんな方? どうして源氏物語を書かれたのか、なぜあんなすてきな恋の物語が書けるのか知りたいわ」と小式部。賢い一方、人づき合いが苦手で傷つきやすい紫式部。その人となりを中心に、宮廷仕えの気苦労や恋愛事情などまで、貴族の女性の生き方や思いが物語を通じて伝わってきます。
『アンデルセンの童話』全4巻
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- ◆ハンス・クリスチャン・アンデルセン=著
- ◆イブ・スパング・オルセン=画
- ◆大塚勇三=編・訳
- ◆福音館書店=刊
- ◆定価=1~3巻各935円(税込)4巻770円(税込)
楽しさ、悲しさ、切なさ 多様な感情を呼び起こす物語が 情緒も想像力も豊かにしてくれる
上大岡校 校舎責任者小学生のとき、家にアンデルセンの童話集があって、病気で学校を休んだときなどによく読んでいました。特に好きだったのは、この童話集の1巻にも出ている『一つのさやからとび出した五つのエンドウ豆』です。病気の女の子が寝ている窓辺にエンドウ豆が飛んできて、芽を出し、花を咲かせて女の子を元気づけるお話です。自分のところにも飛んでこないかなと思ったものです。
童話は、絵本で読むとハッピーエンドが多いですが、ここで紹介したような原作本で読むと、悲しい出来事もあれば、ひどい人も出てきて、切ない結末で終わるものもあります。それだけに、読めば情緒面でいろいろな体験ができます。また、どの物語も発想が豊かなので、想像力が鍛えられます。たとえば1巻にある『妖精の丘』には、魔物たちを招待するために、恐ろしそうな怪しい物がご馳走として登場します。そういうわからないものをきちんと想像できることは大事だと思います。
以前、6年生の国語の授業で、問題文の中に「裸の王様」ということばが比喩表現として出てきました。「裸の王様」もアンデルセンの童話ですが、まったく知らないと、特に女の子は「裸」という表現だけで拒否反応を示します。でも「裸の王様」がテキストに比喩表現として出るということは、知っていて当然の一般常識として扱われているということです。
だからといって勉強のために読んでほしいわけではありません。教訓を読み取るために読んでほしいというわけでもありません。物語として楽しく読めばいいと思います。そうするうちに心に染みこんでいくものがある。それが古典の良さだと思います。小さいお子さんなら保護者の方が読み聞かせてもいいでしょう。本棚に置いておいて何年後かにあらためて一人で読んでみると、また違った印象を持つかもしれません。1巻から4巻まで違う雰囲気の物語が集まっています。お気に入りのお話を見つけてください。
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