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  • 20年2月号 [入試に出る時事問題]これだけは知っておこう! さぴあニュースバンク

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これだけは押さえておこう! 入試に出る時事問題さぴあニュースバンク2019年 入試対策/ニュース総チェック

 2019年は「平成」という時代が終わり、「令和」という新しい時代が始まった年でした。一つの節目といえますが、皆さんはどんな出来事が記憶に残っているでしょうか。小学生といえども社会の一員であり、将来はより良い世の中を築くための担い手とならなければなりません。そのためには国内外のさまざまなニュースに無関心ではいられないはずです。みずから積極的に触れ、絶えず問題意識を持つことが求められます。中学入試でも社会科や理科で時事的な内容が頻出するようになっていますが、これは、受験生の社会に向き合う姿勢を確認したいという学校側の考えの表れなのでしょう。そこで、ここでは今年の入試に取り上げられそうな2019年の主なニュースと、その学習のポイントをまとめました。時事問題学習の総仕上げにお役立てください。 ※西暦のない日付はすべて2019年です。

国際

1NEWS CHECK イギリスのEU離脱問題

国民投票で「離脱」を選択

 事の発端は2016年6月にイギリスで行われた、同国がヨーロッパ連合(EU)を離脱するかどうかを問う国民投票でした。「離脱」が「残留」をわずかな差で上回るという結果になり、イギリスは2019年3月29日にEUから離脱することになりましたが、このことをめぐって混乱が続きました。イギリス国民の意見は分かれており、離脱予定日までに離脱後のEUとの関係についてはっきり決められなかったので、離脱の時期が何度か延期されたのです。

ジョンソン首相により総選挙を実施

EU加盟国と「ユーロ」使用国(2020年1月現在)

 しかし7月24日、新しい首相にボリス・ジョンソン前外務大臣が就任して以降、イギリスは離脱に向けて動き出しました。ジョンソン首相は離脱推進派であるため、EUと再交渉して離脱の条件などについて合意できなかったとしても、10月31日には必ず離脱すると主張しました。

 これに対して、イギリスの議会は9月、EUとの離脱協定案が否決された場合、EUに離脱延期を求めることを政府に義務づける法律を成立させました。ジョンソン首相は法律に従い、さらなる離脱延期をEUに要請し、認められました。その期限は2020年1月31日です。一方、イギリスとEUは10月17日、新たな離脱協定案に合意しました。しかし、これが議会で承認されなければ、結局は混乱が繰り返されるだけです。

 そこで、ジョンソン首相がかねてから提案していたとおり、総選挙(下院議員選挙)が実施されることになり、11月6日、下院は解散されました。イギリスの下院の定数は650なので326議席を取れば過半数ということになりますが、12月12日に投票・開票が行われた結果、選挙前に過半数割れしていた保守党は大きく議席を伸ばし、過半数を上回る365議席を獲得して圧勝しました。これにより、イギリスがEUと10月17日に合意した離脱協定案は議会で承認される見込みで、今年1月31日、イギリスは今度こそEUを離脱することになりそうです。その後は離脱による急激な変化を避けるために設けられた今年12月末までの移行期間に入り、イギリスはEUとの自由貿易協定(FTA)の締結をめざします。このFTAが発効すれば「完全な離脱」となります。ただし、FTAの交渉には何年もかかることが多いため、先行きはまだまだ不透明です。

学習のポイント

 イギリスのEU離脱をめぐる問題がここまで混乱するとは誰も予想できなかったはずです。また、EUに対して不満を募らせているのはイギリスに限りません。その主な要因は難民・移民の受け入れについてで、ドイツ、イタリア、スペインをはじめ各国で、排他的な主張を掲げる政党が台頭してきています。EUが危機的な状況に陥っている今だからこそ、そもそも発足時の理想は何だったのか、理解を深めておきましょう。

2NEWS CHECK 貿易をめぐる問題

日本とEUとのEPAが発効

世界に対する日本とEUの人口(2019年)とGDP(2017年)の割合

出典:「世界国勢図会2019/20年版」 ※EUにはイギリスを含む

 2月1日、日本とEUとの間で結ばれた経済連携協定(EPA)が発効しました。複数の国や地域が貿易を活発にして経済を成長させるため、お互いに輸入品にかけている関税を下げたり、なくしたりするという取り決めを自由貿易協定(FTA)といいます。これに対し、経済活動や知的財産権(特許や著作権)のルールなども可能な限り共通化して経済全体の結びつきを強め、より大きな経済圏をつくることをめざすのが、EPAです。日本とEU(イギリスを含む)とのEPAの場合、人口は6億人を超え、国内総生産(GDP)の合計は全世界の4分の1以上を占めることになります。

 日本とEUとのEPAが発効したことにより、日本がEUから輸入するワインや衣服の関税が即時ゼロになりました。また、チーズの関税は段階的に引き下げられ、16年目に撤廃されます(3万1000トンまで)。日本の消費者は、EU加盟国であるフランスやイタリアのワインやチーズなどをより安く買えるようになったのです。その半面、日本でワインやチーズを生産する人たちは、EUからの安い輸入品との価格競争に直面するようになったため、打撃を受けることも考えられます。

 一方、日本からEUに輸出される商品については、日本酒や緑茶の関税が即時ゼロになりました。自動車の関税は8年目に撤廃されます。

TPP11も発効

TPP11参加国

①日本 ②ベトナム ③ブルネイ ④マレーシア ⑤シンガポール ⑥オーストラリア ⑦ニュージーランド ⑧カナダ ⑨メキシコ ⑩ペルー ⑪チリ 

 一方、2018年12月30日には、日本を含む、太平洋を取り巻く11の国が参加する環太平洋パートナーシップ協定(TPP11)が発効しました。これもEPAの一種で、日本、ベトナム、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、メキシコ、ペルー、チリが参加しています。

 もともとはアメリカを含む12か国で交渉が進められ、2015年に大筋合意しました。しかし、2016年のアメリカ大統領選挙で当選したトランプ大統領は2017年1月の就任直後に離脱を表明。外国から安い輸入品がどんどん入ってきて、国内の産業に悪い影響を与えるというのです。

 そこで、残り11か国はアメリカ抜きで再度話し合い、2017年11月に大筋合意したのです。11か国の人口は合わせると5億人を超え、GDPは全世界の約13%になります。しかし、アメリカは一つの国だけで全世界のGDPの約4分の1を占めているため、アメリカが抜けたことにより、経済圏としての規模は3分の1程度になってしまいました。

日米貿易協定も発効

 TPP11にはカナダやオーストラリアといった、日本に大量の農畜産物を輸出している国が参加しています。EUにもフランスなど農業の盛んな国があります。ということは、アメリカはこうした国に比べて、日本に農畜産物を輸出するうえで不利になってしまったということです。当然、国内の農家からは不満が出てきます。そこでアメリカは、日本と2国間での貿易協定を結ぶことを望み、2018年9月から交渉を始めました。その交渉は2019年9月の日米首脳会談で最終合意に達しました。

 これにより、日本はアメリカから輸入される牛肉や豚肉などの農畜産物の関税を、TPP11の参加国に認めた水準まで下げることになりました。一方、アメリカは、日本から輸入する自動車とその部品などに追加関税をかけないことにしたものの、すでに課している関税は撤廃せず、さらに交渉を続けることになりました。

 この協定は10月7日に正式に署名されました。12月には日本の国会(参議院)で承認されるとともに、トランプ大統領が関連文書に署名したため、2020年1月1日に発効しました。

学習のポイント

 貿易は、相手の国ではつくれない物を輸出し、自分の国ではつくれない物を輸入すれば、どちらも豊かになれます。しかし、産業の発展の程度は国ごとに大きな差があるため、世界の貿易を一度に全面的に自由化すると、産業が大きな打撃を受ける国も出るなど、いろいろな問題が起こります。そこで、一部の国だけでFTAやEPAを結ぶことを認め、できるところから自由化していこうとしているわけです。そんななか、それに反する動きを見せているのが、トランプ大統領です。アメリカは輸入額のほうが輸出額よりはるかに多い「貿易赤字」になっていますが、トランプ大統領はそれを問題視し、輸入品に高い関税をかけて輸入量を抑えようとする「保護貿易」に傾いているのです。アメリカは特に中国に対して大幅な貿易赤字になっており、アメリカの貿易赤字の半分近くを中国1国が占めているほどです。そのため、トランプ大統領は2018年から2019年にかけて、中国からの輸入品の関税の税率をたびたび引き上げました。中国もその都度、報復としてアメリカからの輸入品の関税の税率を引き上げたため、収拾がつかなくなっています。GDPが世界第1位のアメリカと、第2位の中国がこのように争えば、貿易額が減って、日本などほかの国も大きな影響を受けることになります。対立の背景には経済成長を続けてきた中国が、間もなくアメリカを追い越すのではないかと、アメリカが警戒するようになったということもあります。単に経済だけの問題とは言い切れないため、そのような視点も必要でしょう。

3NEWS CHECK 世界の核問題の現実

進まない北朝鮮の非核化

 2019年も核兵器をめぐるさまざまな出来事がありました。

 まず注目されたのが、核実験やミサイル発射を繰り返していた朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正恩朝鮮労働党委員長と、アメリカのトランプ大統領との首脳会談です。2018年6月、シンガポールでこの両者による史上初の米朝首脳会談が行われ、朝鮮半島の非核化に向けて双方が努力することで合意しました。しかし、目立った動きはそこで止まります。

 これを打開するため、2019年2月27日・28日にはベトナムのハノイで、2回目の米朝首脳会談が行われましたが、物別れに終わりました。大阪でのG20サミット直後の6月30日には、トランプ大統領の呼び掛けに金委員長が応え、大韓民国(韓国)と北朝鮮との軍事境界線上にある板門店で2人が会いました。しかし、その後も進展が見られません。アメリカは北朝鮮の完全な非核化が実現するまでは経済制裁をやめるつもりはないようですが、それに反発した北朝鮮は、アメリカ本土には届かないような射程の短いミサイルの発射実験をたびたび行っています。

「イラン核合意」が崩壊の危機

 中東のイランをめぐる緊張も高まっています。イランは核兵器を開発しようとしていると疑われ、経済制裁を受けていました。しかし、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国、ドイツの6か国がイランと交渉した結果、2015年に、イランは核兵器の開発につながるウラン濃縮などの活動を大幅に制限される代わり、経済制裁が解除されることになりました。これを「イラン核合意」といいます。

 ところが、トランプ大統領は2018年5月、合意の重要な部分に欠陥があるとして、この合意から離脱すると表明しました。つまり、アメリカはイランへの経済制裁を再開すると宣言したわけです。国際的には、イランは合意を守ってきたというのが共通認識になっており、アメリカの一方的な離脱を批判する声もありました。一方、イランも黙ってはいませんでした。その1年後の2019年5月、ハサン・ロウハニ大統領は合意によって課せられていた義務の一部を守ることをやめると宣言し、ウラン濃縮にかかわる活動を再開すると表明したのです。

 ここで仲介役として登場したのが日本です。日本とイランとの関係はさほど悪くないからです。安倍首相は6月12日から14日まで同国を訪問し、ロウハニ大統領に加え、最高指導者のアリ・ハメネイ師とも会談しました。イランの国のトップはイスラム教シーア派の宗教法学者であるハメネイ師なのです。安倍首相はそのハメネイ師から「イランは核兵器を製造も保有も使用もしない」ということばを引き出しましたが、イランのアメリカへの不信感は非常に強く、トランプ大統領との対話には否定的な姿勢を示しました。

 イラン情勢の悪化で最も懸念されるのは、ペルシア湾の出入り口にあたるホルムズ海峡をタンカーが安全に通過できなくなることです。日本の原油輸入先はサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウェートなどですが、これらの国の原油はいずれもホルムズ海峡を通って日本まで運ばれてきます。そこが通過できなくなれば、日本のエネルギー供給が一気に不安定になってしまうのです。

INF全廃条約が失効

 このように、核兵器の拡散は深刻ですが、世界の核兵器のほとんどはアメリカとロシアが保有していることも事実です。ここでも懸念される動きがありました。2月1日、アメリカが旧ソビエト連邦(ソ連。現在のロシアなど)と1987年に結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄すると宣言したのです。この条約は地上発射型の射程500〜5500キロのミサイルを全廃することを決めたものでした。

 これを受け、翌2日にはロシアのウラジーミル・プーチン大統領も同条約を守ることをやめ、それまで禁止されていた新型ミサイルの開発に着手すると表明しました。条約は半年後の8月2日に失効し、「冷戦」の時代のような軍備拡張(軍拡)競争が再び始まるのではないかと懸念されています。

 冷戦とは、資本主義のアメリカと社会主義のソ連の、どちらの体制がより優れているかをめぐる対立のこと。アメリカとソ連が直接戦ったわけではないので、「冷たい戦争(冷戦)」と呼ばれたのです。第二次世界大戦の終結直後から1980年代まで続いていました。

ローマ教皇が長崎と広島を訪問

 こうした危険な状況を踏まえて、日本からも重要な発信がありました。11月23日から26日まで来日したローマ教皇フランシスコが24日に被爆地の長崎と広島を訪ねたのです。ローマ教皇の来日は1981年のヨハネ・パウロ2世以来、38年ぶりのことでした。今回、教皇フランシスコは長崎で「核兵器や大量破壊兵器を保有することは、人の心にある平和と安定という望みをかなえる回答にはならない」と演説しました。そして、広島では「戦争のために原子力を使用することは犯罪以外の何物でもない」というメッセージを発したのです。

 ローマ教皇は世界に約13億人の信者がいるキリスト教のカトリック教会のトップです(バチカン市国の元首でもある)。よって、その発言には重みがあり、カトリックの信者だけでなく、ほかの宗教の信者にも大きな影響力があります。中長期的には世界を動かすことになるかもしれません。

学習のポイント

 核兵器が使用された後の悲惨さは筆舌に尽くし難いものがあります。長崎と広島の惨禍からもそのことは明らかです。それにもかかわらず、世界のあちこちで核兵器を増強しようとする動きがあります。そんななか、ローマ教皇が被爆地でメッセージを発したことには大きな意義があるといえます。核兵器はなぜなくならないのか、なくすためにはどんなことが必要になるのか、根本的なことから考えるようにしましょう。

4NEWS CHECK G20サミットとG7サミット

G20サミットが大阪で開催

 6月28日・29日、大阪市住之江区の臨海部にある人工島・咲洲で、主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれました。このG20サミットは主要20か国・地域のトップが主に世界経済について話し合う会議で、日本で開かれるのはこれが初めてです。サミットは「山の頂上」という意味の英語です。

 今回は主に自由貿易の在り方について話し合われましたが、アメリカと中国との貿易摩擦が激化するなかで開かれただけに、「保護主義と闘う」などの強いことばは首脳宣言に入りませんでした。また、海洋プラスチックごみ対策についても話し合われ、2050年までに海に流れ込むプラスチックごみをゼロにするという目標を決めました。

G7サミットはフランスで

G20サミットとG7サミットのメンバー

 一方、8月24日から26日までは、フランス南西部のビアリッツで主要7か国首脳会議(G7サミット)が開かれました。これは日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの首脳が年に1度集まり、世界の政治問題や経済問題などについて話し合う会議です。この7か国の首脳に加え、EUからヨーロッパ理事会常任議長(大統領)とヨーロッパ委員会委員長も参加します。今回は緊迫するイランの核問題、アメリカと中国との貿易摩擦、デモが続き混迷する香港情勢などについて話し合われました。

 なお、2020年のG7サミットはアメリカで開かれます。アメリカ政府は12月、首都ワシントンDCの近郊にあるキャンプデービッド大統領山荘で開くと発表しました。

学習のポイント

 G20サミットもG7サミットも、世界の主要な国と地域の首脳が直接顔を合わせて話し合う貴重な場で、世界が直面する重要な問題について認識を共有し、その解決策を考えることがその本来の役割です。しかし、同じ価値観を共有できる国ばかりではないG20サミットでは、基本的に政治問題は扱われません。G7サミットは民主主義や人権の尊重といった価値観を共有する国の集まりですが、それでも2019年は合意できた項目が少なく、何らかの問題に対して世界が一丸となって取り組むことが難しくなりつつあるのがわかります。しかし、そうしている間にも事態は進行していくのです。環境をはじめ、貿易、難民・移民など、各国の利害が激しくぶつかる問題をどう解決していけばいいのかは、真剣に考えなければなりません。

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