さぴあニュースバンク
- 総チェック目次
- ウクライナ問題と国際情勢
| 政治・経済 | あれから何周年? | 社会・環境
| スポーツ
| 理科的なニュース
| 2022年の主な出来事
2022年の世界を揺るがした大きな出来事といえば、ロシアによるウクライナ侵攻でしょう。日本国内では歴史的な円安と物価高に関するニュースも注目を集めました。これらも含め、未来を担う小学生なら当然知っておくべきで、なぜそれが起こったのか、どうすれば解決できるのか、自分の頭で考えてほしいことがたくさんあります。中学入試の社会科や理科で時事的な問題が多く出されるのは、そうした姿勢を持って学んできたかを確認するためです。ここでは今年の入試に取り上げられそうな2022年の主なニュースをまとめました。6年生は時事問題の最終確認に、5年生以下はこの1年間の国内や海外の動きを知っておくために、ぜひご活用ください。 ※西暦のない日付はすべて2022年です。
社会・環境
1NEWS CHECK 成年年齢が「18歳」に
契約行為が18歳から可能に
4月1日、2018年に改正された民法が施行され、成年年齢が「20歳」から「18歳」に引き下げられました。
かつては選挙権が得られる年齢も20歳でしたが、2015年に改正された公職選挙法が2016年に施行され、「18歳」になりました。この改正には少子高齢化が関係しています。現在の日本では若者より高齢者のほうが人口が多いだけでなく、投票率も高いため、政治家は若者を犠牲にしてでも高齢者の利益を守る政策を打ち出してしまいがちです。こうした傾向を「シルバー民主主義」といいますが、若者は将来を担う大切な存在です。選挙権年齢の引き下げにはシルバー民主主義に歯止めをかけ、若者の声を政策に反映しやすくしようという狙いがありました。これを受け、民法上の成年年齢も引き下げるべきだという議論が出てきたのです。
今回の成年年齢の引き下げに伴う最も大きな変化は、18・19歳の人が法定代理人(両親など)の同意なしで契約行為ができるようになったことです。たとえば、携帯電話や賃貸アパートの契約、クレジットカードの作成、ローンを組んでの高額商品の購入などです。
18・19歳の人が自立しやすくなるともいえますが、良いことばかりではありません。未成年者が法定代理人の同意を得ずにした契約は、未成年者本人や法定代理人が無効にできることになっています。社会経験がまだ十分でない未成年者を守るために、こうした「未成年者取消権」があるのです。ところが、「未成年者」とは18歳未満の人のことになったため、18・19歳の人は対象から外れました。これにより、18・19歳の人が契約内容を十分に理解しないまま商品を買ったり、サービスを受けたりして、高額な代金を請求されるといったトラブルの増加が懸念されています。消費者教育の拡充が急務といえるでしょう。
また、成年者であることが取得の条件とされている医師、公認会計士、司法書士、行政書士、社会保険労務士などの国家資格も、形式的には18歳以上であれば取得できるようになりました。ただし、医師のように大学の医学部医学科を卒業することが国家試験受験の要件になっている資格は、事実上、18歳で取得することはできません。
その一方、同じ民法改正により、これまでは「16歳以上」だった女性が結婚できる年齢が、男性と同じ「18歳以上」に引き上げられました。ただし、飲酒や喫煙、競馬などの公営ギャンブルが許されるのはこれまでと同様、「20歳以上」で変わっていません。
補足しておくと
現在の小6生は、約6年後には18歳になります。選挙で投票したり、自分だけの判断でスマートフォンを購入したりできるようになるわけです。まさに大人の仲間入りといえますが、その半面、自分の行動の結果について責任を取ることも求められるようになります。
そこで重要になるのが、中学・高校での6年間の過ごし方です。「大人になる日は近い」ということを意識し、社会で起こっていることに関心を持つようにしなければなりません。周囲に流されず、自分の頭で考え、行動することが必要といえるでしょう。
2NEWS CHECK COP27と地球温暖化対策
「気候変動枠組み条約」とは
●気候変動枠組み条約締約国会議の歴史
1992年 | 地球サミットで条約を採択 |
97年 | COP3で「京都議定書」を採択
→先進国に排出削減義務 |
2015年 | COP21で「パリ協定」を採択
→産業革命以降の気温上昇を2℃未満に抑えることが目標に →先進国か発展途上国かを問わず、すべての国が排出削減目標を提出することに |
21年 | COP26
→気温上昇を1.5℃未満に抑えることが事実上の目標に |
22年 | COP27
→気象災害による「損失と被害」を救済へ |
「気候変動枠組み条約」は、地球温暖化を食い止めようと、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開かれた国連環境開発会議(地球サミット)で採択されたものです。現在では約200の国とEUが批准しています。その締約国の代表は1年に一度、一堂に会して地球温暖化対策について話し合う会議を開いています。
地球温暖化が進むとどんな悪影響があるのでしょうか。南極の氷が解けることなどによる海面の上昇、猛暑の増加や山火事の多発、干ばつによる農作物の不作、台風やハリケーンの強大化、氷河の縮小による水不足、気候変動に対応できない生物の絶滅などが考えられます。
そこで、2015年にフランスのパリで開かれた第21回締約国会議(COP21)で採択されたのが「パリ協定」です(発効は2016年11月)。「産業革命以降の気温上昇を2℃未満に抑える、かつ1.5℃未満をめざす」ため、先進国も発展途上国も、それぞれ目標を設定して二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガスの排出削減に取り組むというものです。
この「1.5℃未満」は、初めは「努力目標」という位置づけでした。しかし、2021年にイギリスのグラスゴーで開かれた第26回締約国会議(COP26)で採択された「グラスゴー気候合意」では、「産業革命前からの世界の気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求する」という表現が盛り込まれました。この結果、2℃ではなく1.5℃が事実上の新たな目標となったのです。
これを実現するには温室効果ガスの排出量を「今世紀半ばには実質ゼロ」にすることが必要だとされています。この「実質ゼロ」とは「まったく排出しない」ということではなく、「森林などによる吸収量以上には排出しない」という意味です。このことを「カーボンニュートラル」といいます。
そこで重要になるのが、CO₂の主な発生源である石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を使う発電を減らすことです。化石燃料のなかでは、天然ガスはCO₂の排出量が比較的少ないのですが、石炭は大量に排出します。しかし、コストが安いので、発展途上国のなかには発電のエネルギー源を石炭に頼っている国も少なくありません。中国やインドがその代表格です。日本も石炭火力発電の割合が比較的高い国です。そこで、グラスゴー気候合意には石炭火力発電を「段階的に削減する」ことも盛り込まれました。
それにもかかわらず、2022年にはこれまで脱石炭を推進してきたドイツなどヨーロッパの国々でも、石炭火力発電に頼ろうとする動きが見られました。ロシアのウクライナ侵攻により、ロシアからの石油や天然ガスの輸出が一時的に途絶えたり、減らされたりしたためです。この石炭火力の廃止を見直す流れは、地球温暖化問題に対して暗い影を落としています。それ以前に、戦闘行為そのものにより、大量のCO₂が排出されていることも見逃せません。「戦争は最大の環境破壊」だとはよくいわれることです。
気象災害による「損失と被害」を救済へ
2022年は11月6日からエジプトのシャルムエルシェイクで、気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が開かれました。
今回、最大の論点となったのは、気候変動によると考えられる災害で「損失と被害」を受けた発展途上国をどう支援するかということでした。たとえば、2022年にパキスタンでは大雨によって国土の約3分の1が冠水したといわれています。一方、東アフリカのケニアやエチオピアは干ばつに見舞われました。これらの災害で苦しむ国や人々への支援について話し合われたのです。
こうした国々を支援する責任は、これまで温室効果ガスを大量に排出してきた先進国にあると、発展途上国は以前から主張してきました。特に、海面が上昇すると水没して国土そのものがなくなる恐れがある島国は、先進国に対し、強力な温暖化対策の実行と被害国への支援を強く迫っています。発展途上国はこれまで排出してきたCO₂の量が先進国より少ないにもかかわらず、防災のためのインフラが脆弱なこともあって、より大きな被害を受けているからです。しかし、先進国は巨額の負担を強いられかねないとして、支援には消極的でした。
とはいえ、前述したように、2022年も気候変動によると思われる大きな災害が次々に起こりました。そこで、議長国のエジプトが初めて正式な議題に取り上げたのです。
温暖化対策をめぐっては、これまでも先進国と発展途上国との利害が対立し、話し合いが難航する場面がしばしばありました。この問題についてもやはり対立が見られましたが、発展途上国への支援が必要であることは先進国も認めざるを得ません。本来は18日までだった会期を延長して話し合いを続けた結果、難色を示していた先進国のうち、まずEUが「最も気候変動に脆弱な国」を救済する基金の創設に合意し、アメリカもそれに同調しました。最終的に、合意文書「シャルムエルシェイク実施計画」を採択し、COP27は閉幕しました。
ただし、支援の対象国や資金拠出の方法などは、2023年にUAEのドバイで開かれる第28回締約国会議(COP28)で決めることになっています。また、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑えるという目標については、「さらなる努力を追求する」との表現にとどまり、具体的な方法は盛り込まれませんでした。議題の中心が、どうやって温暖化を防止するかということから、すでに起こってしまっている温暖化の被害を受けている国を、どう救済するかに変わってきているといえます。
電力需給ひっ迫警報や注意報が発令
地球温暖化対策の観点から、日本の石炭火力発電の割合が比較的高いことは海外からの批判の対象になっています。そこで、政府は老朽化した石炭火力発電所は2030年度までに段階的に休止・廃止にする方針を示しました。
その分は太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電で補うことが考えられています。しかし、これらは天候や時間帯などによって発電量が大きく変動し、安定した電源にはなりにくいというデメリットがあります。それでも再生可能エネルギーによる発電量は増え、採算が合わなくなった火力発電所の休止・廃止が相次いでいます。その結果、災害や発電所のトラブル、猛暑や厳寒といった極端な気象条件によって電力が足りなくなり、大規模な停電を引き起こすリスクが高まりました。
そんな微妙な状況を直撃したのが、3月16日に福島県沖で発生し、宮城県と福島県で最大震度6強を観測したマグニチュード7.4の地震です。これにより、福島県の沿岸部などの火力発電所が被害を受け、運転を停止したことなどから、東京電力と東北電力の管内では電力の供給力が低下しました。
その直後の3月22日は真冬並みの寒さになることが予想され、暖房のための電力需要が供給力を上回る恐れがあったため、21日夜、東京電力管内に「電力需給ひっ迫警報」が出されました(22日当日になってからは東北電力管内にも)。これはこの制度ができてから初めてのことです。結果的に、節電の呼び掛けと揚水発電のフル稼働により、大規模停電は回避されました。
揚水発電とは夜間など電力が余っているときに、その力で水を高い所に上げておき、電力が足りない時間帯にその水を低い所に落とす力で発電するというものです。いわば電力を間接的にためていることになります。
その後、経済産業省はこの「警報」のほか、「注意報」を新設しました。電力供給の余裕を示す予備率が5%を下回りそうなときには「注意報」を、3%を下回りそうなときには「警報」を、それぞれ出すことにしたのです。実際に発令しなければならない状況はすぐに発生しました。6月下旬から7月上旬にかけて、東京で9日連続の猛暑日が記録されるほどの厳しい暑さが続いたのです。冷房用に電力がたくさん使われ、足りなくなる恐れがあったため、6月26日から30日まで、東京電力管内に「電力需給ひっ迫注意報」が出されました。
電力の使用量は冷暖房が使われる夏と冬に多くなります。日照時間が短い冬は太陽光発電もあまり期待できないため、夏以上に厳しい状況に陥る可能性があります。そのため、政府は2022年12月1日から2023年3月31日まで、全国に節電要請を出しています。
補足しておくと
パキスタンで大規模な洪水が起こったと聞くと「人ごと」のように思えるでしょう。しかし、このところ東京で電力が不足気味です。停電が起こる可能性も否定できません。そうなれば「自分ごと」になるのではないでしょうか。この二つの出来事は一見無関係のように思えるかもしれませんが、どちらにも地球温暖化がかかわっています。環境問題に国境はなく、いったん排出された温室効果ガスは全世界に影響を及ぼします。CO₂を大量に排出して豊かな生活を続けている国がある一方で、気候変動による被害を受けている貧しい国もあります。プラスチックごみの問題も同様で、わたしたちが捨てたごみが遠く離れた地域の生物の命を奪っているかもしれません。言い古されたことではありますが、まずは自分にできることはないかと考え、行動に移すことが大切です。
- 総チェック目次
- ウクライナ問題と国際情勢
| 政治・経済 | あれから何周年? | 社会・環境
| スポーツ
| 理科的なニュース
| 2022年の主な出来事
◎学校関連リンク◎
◎人気コンテンツ◎