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  • 18年10月号 さぴあ職場見聞録 第20回/国連世界食糧計画(WFP)

さぴあ職場見聞録

さぴあ職場見聞録 第20回/国連世界食糧計画(WFP)

 国際平和と安全を維持するために、そして国際協力推進のために、第二次世界大戦後の1945年に発足した国際連合(国連)。30を超える補助機関や専門機関がありますが、今回は、そんな国連機関のなかでも唯一の食料支援機関である、国連世界食糧計画(WFP/World Food Programme)を取り上げます。その使命を果たすため、国連WFPの職員はどんな仕事をしているのでしょうか。日本事務所で広報官を務める上野きよりさんに話を聞きました。

sappy 国連の食料支援機関として活動
飢餓と貧困のない世界をめざす

輸送・通信支援国連WFPは毎日、飛行機70機、船20隻、トラック5000台を世界で稼働させています。壊れた道路、港、橋などを修復し、陸路、海路、空路のあらゆる輸送手段を使って、どんな場所にも食料を届けます。緊急時には、ほかの国連機関や支援団体が被災地や紛争地に物資を輸送するのを手助けします。また、国連機(飛行機)を運航し、諸団体に対して紛争地や被災地への移動手段を提供します

緊急支援紛争や災害が発生したとき、現地の政府からの要請に応じて直ちに職員を派遣。48時間以内に最初の食料を届けることをめざし、その後、迅速に支援を拡大します。穀類、たんぱく質が多い豆類、食用油、塩などをセットした「フードバスケット」や、指定の店で食料と引き換えられる券、食料を購入するための現金・電子マネーを配布します

学校給食支援 学校で栄養豊富な給食を提供し、貧困家庭の生活を守ると同時に子どもの発育を助けます。給食は通学の強い動機づけとなり、学習能力の向上や教育の普及、ひいては国の発展にもつながります

自立支援 道路や井戸、農地などを整備する際、働いた人に対して報酬の代わりに食料を提供します。整備事業に従事する間は食べ物の心配がないうえ、完了すると地域全体の暮らしが良くなります

母子栄養支援 乳幼児や妊娠中・授乳中の母親に、栄養たっぷりの特別な食品を配布し、栄養状態を改善します。将来を担う子どもの発育を助けることで、未来の社会を支えます

飢餓や栄養不良に苦しむ人々に 必要な支援を確実に届ける

WFP国連世界食糧計画
日本事務所 広報官
上野 きよりさん

 国連WFPは飢餓のない世界をめざして活動する国連の食料支援機関です。紛争や災害の被害者など、貧しい暮らしによって慢性的な栄養不良に陥っている人々を支援しています。

 国連WFPの食料支援の柱は、「緊急支援」「母子栄養支援」「学校給食支援」「自立支援」「輸送・通信支援」の五つ。紛争や自然災害などの緊急時に食料を届けるだけでなく、開発途上国の政府と協力し、栄養状態の改善と強い社会づくりに取り組むことで、人々が自立できるよう手助けします。

 基本的な支援方法は食料を配給すること。その細かい内容は国ごとに違いますが、成人1人当たり1日2100キロカロリーが摂取できる量の食料を、家族ごとに毎月届けます。配給する食料はできるだけ現地のものを使うようにし、「地産地消」を推進しています。それは、国連WFPが地元でとれた農作物を購入し、配給することでその地域の経済や農業が活性化するからです。また、最近では、食べ物を買うための現金や、食料に交換できる券を配布する例も増えています。この場合、支援を受ける人々は地元の店で好きな食べ物を選べますし、店が利用されることでその地域の経済も潤います。このように支援される側の尊厳を大切にしながら、その土地の状況に合わせて適切な方法をとることが重要なのです。

職員の9割は現場で支援活動 日本人職員は約80人

 国連WFPの本部はイタリアのローマにあり、支援を行う国々には事務所が置かれています。職員の数は約1万4000人で、その約9割は開発途上国などの現場で支援活動をしています。支援の内容や規模などを決める人、食料を調達する人、物流を担当する人などがいて、日本人職員は約80人です。

 国連WFPで働く日本人は、大学院の修士課程以上を修め、社会経験を積んだ後、外務省が実施するJPO派遣制度を通じて職員になるケースが多いです。英語と第二外国語(フランス語・スペイン語・ポルトガル語・中国語・アラビア語など)ができ、NGOでの職務経験があると有利です。

 将来、国連WFPで働きたいと思う小学生の皆さんは、世界に目を向け、飢餓に苦しむ人々の生活や支援方法に関心を持ってください。国際社会で働くには、語学力はもちろん必要ですが、自分の意見をしっかり言える強さも求められます。

ハンガーマップ2017

sappy
上の世界地図は「ハンガーマップ」と呼ばれ、その国や地域の人口の何%が飢餓状態にあるかを色で示しています。「ハンガー」とは飢餓のこと。深刻なのは子どもの飢餓で、世界中の子どもの4人に1人は慢性的に栄養が足りません。国際社会は2030年までに世界から飢餓をなくすことを目標としていますが、2017年のデータによると、飢餓や栄養不良に苦しむ人々の数は8億1500万人。つまり、世界の9人に1人が十分な食料を得られていません。そこで、国連WFPは毎年約80か国で8000万人に食料支援を行っています

支援を必要としている人に食料を届けるまでの流れ

拠出金・寄付
政府からの拠出金や地域の支援者から寄付金が集まります
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送 金
寄付金は国連WFP協会を経由し、WFPローマ本部へ送金されます
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調 達
輸送費を抑え、途上国の農業を活性化するため、食料は原則として近隣地域から購入します
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輸 送
船やトラック、飛行機のほか、地域によってはラクダやゾウ、ロバで食料を運びます
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倉庫保管・品質管理
食料が確実に到着し、保管されているか確認します。倉庫内の食料管理も行います
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届ける
支援を必要としている人々のもとに確実に届けます

国連WFPの活動に必要なお金は、すべて各国の政府からの拠出金や、企業・団体・個人からの寄付金で賄われています。食料を調達する際は、輸送コストを可能な限り抑えると同時に、開発途上国の農業を振興するため、原則として近隣地域から購入します。輸送した先では、食料が確実に到着し、倉庫にきちんと保管・管理されているか、支援を必要としている人々にきちんと支給されているかをチェックする「モニタリング」も行います。また、食料引換券や食料購入用の現金を配布する場合も、食料の消費状況などを確認します

第20回/国連世界食糧計画(WFP):
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