受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ職場見聞録

さぴあ職場見聞録 第21回/気象情報会社

 皆さんのなかには「運動会や遠足の前には必ず天気予報を確認する」という人も多いでしょう。近年では大型台風や豪雨、豪雪などによる自然災害が毎年のように発生しており、気象情報の重要性が一層増しています。今回は千葉市の幕張新都心にある株式会社ウェザーニューズを訪ね、広報の安井百合愛さんに気象情報会社の仕事について聞きました。

顧客の要望に合った
「対応策情報」を提供する

開放的な雰囲気の予報センター。写真の「ゲリラ雷雨防衛隊本部」では、ゲリラ雷雨を観測する「WITHレーダー」の観測データや、「ゲリラ雷雨防衛隊」と呼ばれる全国のウェザーリポーターから送られてくる空の写真などに基づき、90%以上の精度でゲリラ雷雨をとらえます 予報センターには自社の人工衛星や全国各地のウェザーリポーターから届く情報が集められ、24時間365日、予報技術者や気象予報士が常駐して分析しています。その日の予報の大方針を決めるのは、「プリズムマスター」と呼ばれる責任者(写真左)です 予報センターで働く人たちは、パイロットシャツ風のおしゃれなデザインの制服を着ています ウェザーニューズの社内にはスタジオがあり、インターネットで気象情報の生配信をしています。番組が始まる前には、キャスターが伝える情報の内容について打ち合わせをします

海運・航空・鉄道・コンビニなど 44の幅広い市場を持つ

株式会社ウェザーニューズ
広報
安井 百合愛さん

 気象情報や防災情報は、気象庁や国内に約60ある民間の気象情報会社によってつくられ、顧客に届けられます。民間の気象情報会社は、気象予報士を派遣する会社や、航空気象だけを扱う会社のように、ある分野に特化していることもあります。

 ウェザーニューズは、船舶向けに波の状態や天気を知らせる気象情報会社として、1986年に設立されました。現在は海運・航空・鉄道・コンビニエンスストアなど、44の市場を持っていますが、主力は海運会社向けの「航海気象」です。全世界に約2万隻ある外航船舶(外国航路に就航する船)のうち、約7000隻の運航をサポートしており、船舶が安全かつ経済的に航海できるよう、海の気象情報のほかにも、必要とされる「対応策情報」を提供します。たとえば船舶向けには、予測データに基づき、「より少ない燃料で効率良く安全に航海できるルート」や「必要な燃料の量」などの情報をつくるのです。

 また、航空会社なら、運航の安全性はもちろん、乗客が飛行機の中で快適に過ごせることも重視しています。そのため、乱気流をなるべく避けられる飛行高度や、揺れの少ない状態で機内食が食べられる時間帯なども提案します。

気象・海象・地象などを それぞれのチームで監視・予測

 このように、さまざまな市場ごとに的確なサービスを提供するため、ウェザーニューズでは顧客の「バリュー(価値)」を熟知したうえで対応策情報をつくっています。

 業務の中枢となる予報センターは、「幕張天気街」と呼ばれるフロアにあり、専門分野ごとにチームが分かれています。「グローバルストームセンター」では全世界の台風を、「海象センター」では波や海流など海の現象を、「グローバルアイスセンター」では北極海などの海氷を、「地象センター」では全世界の地震・津波・火山の現象をそれぞれ監視・予測しています。幕張天気街では、予報技術者、顧客に対応策情報を伝えるリスクコミュニケーター、システムを開発するIT技術者が働いています。また、中国や韓国の顧客に現地の言語で情報を伝える外国籍の職員や、多種多様な顧客の業務を熟知する人材として、元パイロットや元ラグビー選手など、さまざまな経歴を持つ人がいます。

 ウェザーニューズで働きたいと思ったとき、気象予報士の資格は必須ではありません。当社は「いざというとき、人の役に立ちたい」という会社の起源に共感し、人々や地域に貢献したいと考えている人が活躍している会社です。

独自の観測機が活躍しています

 ウェザーニューズは、2機の超小型衛星をはじめ、3000台に上る気象観測センサー「WITHセンサー」、ゲリラ雷雨をとらえるための超小型気象レーダー「WITHレーダー」などを設置することにより、独自の観測インフラを整え、天気予報の精度向上に努めています。

全国約1000人のウェザーリポーターのベランダに設置される「ポールンロボ」(写真左)。かわいい顔の口の部分から、成人が呼吸するときとほぼ同じ量の花粉を吸い込み、観測します。花粉の数によって目の色が5段階に変化し、観測データは1分ごとに自動でウェザーニューズに送信されます

日本の沿岸に30基設置されている「TSUNAMIレーダー」(写真右)は、東日本大震災を機にウェザーニューズが開発したもの。沿岸から沖合30kmまで電波を発射し、6秒ごとに観測することで、津波が到達する約15分前に情報をとらえることをめざしています

独自の観測機が活躍しています

 ウェザーニューズは、2機の超小型衛星をはじめ、3000台に上る気象観測センサー「WITHセンサー」、ゲリラ雷雨をとらえるための超小型気象レーダー「WITHレーダー」などを設置することにより、独自の観測インフラを整え、天気予報の精度向上に努めています。

全国約1000人のウェザーリポーターのベランダに設置される「ポールンロボ」。かわいい顔の口の部分から、成人が呼吸するときとほぼ同じ量の花粉を吸い込み、観測します。花粉の数によって目の色が5段階に変化し、観測データは1分ごとに自動でウェザーニューズに送信されます

日本の沿岸に30基設置されている「TSUNAMIレーダー」は、東日本大震災を機にウェザーニューズが開発したもの。沿岸から沖合30kmまで電波を発射し、6秒ごとに観測することで、津波が到達する約15分前に情報をとらえることをめざしています

気象情報が届くまで

1観測データの収集
 ウェザーニューズ独自の観測機(上)で集めた観測データのほか、各国の気象庁など全世界の公的機関の観測情報も収集します。さらに、全国のウェザーリポーターからは、機械では測れない「人の感測」による実況情報が、スマートフォンなどを通じて1日平均18万通も届きます。
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2「数値予報」の算出
 場所ごとの気温、風の強さ、湿度など、集めた観測データに基づき、スーパーコンピューターで時間変化を計算し、天気予報の土台となる「数値予報」を出します。
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3データの検討
 算出された数値予報を予報センターで細かく検討し、責任者であるプリズムマスターが、その日の予報の大方針を決めます。
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4対応策情報の作成
 予報技術者の知見を反映させて予測し、顧客ごとに必要とされる対応策情報を作成します。
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5対応策情報の提供
 リスクコミュニケーターが、その日の気象情報と対応策情報を顧客に届けます。

選手のパフォーマンスを最大化し 勝利に導く「スポーツ気象」

 気象情報はスポーツの分野でも活用されています。五郎丸歩選手が活躍した2015年ラグビーワールドカップから始まったのが、選手のパフォーマンスを最大化し、チームを勝利に導く「スポーツ気象」の提供です。

 ラグビーは雨天時、ボールが滑って落としてしまうキャッチミスを防ぐために、パスを減らす戦略で戦います。そのため、ボールを持ったまま走り抜け、トライできるスタミナのある選手を起用するのです。しかし、海外の遠征先では現地の気象情報が入手しにくいため、雨天と晴天の両方のパターンを想定しなければなりません。

 そこで、ウェザーニューズが毎朝、現地の気象情報を日本代表チームに送り、それを活用して戦略を立てることにしたのです。日本代表チームが開催国のイングランドに到着したときは荒天でしたが、南アフリカ共和国戦が行われた日、雨は降りませんでした。当日の天候があらかじめわかっていた日本代表チームは、晴天時の戦略のまま現地で調整し、勝利したのです。日本代表チームは、「気象リスクを気にせず競技に集中できた」と語りました。

 その後、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、7競技18チームに気象情報を提供しました。さらに、2020年の東京オリンピックに向け、新たな取り組みも始まっています。5m四方ごとの気温や湿度、日陰の位置などが予測できる技術を筑波大学と共同で開発し、観測データを収集。マラソン、トライアスロンなどの競技で、当日の戦略や、観客の熱中症対策などに活用される予定です。

第21回/気象情報会社:
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