受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ職場見聞録

さぴあ職場見聞録 第27回/動物病院

手術に使う器具は、トレイに置いた状態で滅菌します

 皆さんのなかにも、犬や猫を飼っている人は多いことでしょう。ペットは家族の一員ですから、もしも病気やけがをしたら、なんとか元気にしてあげたいですね。そんなとき、頼りになるのが動物病院です。それを大きく分類すると、一次診療施設と二次診療施設とがあります。今回は、二次診療施設である日本獣医生命科学大学付属動物医療センター(東京都武蔵野市)を訪問し、院長の藤田道郎教授に、二次診療施設の役割などについてお聞きしました。

専門性の高い医療と設備で
町の動物病院では治せない犬・猫を助ける

耳の中に腫瘍ができてしまった犬に、「総耳道切除(そうじどうせつじょ)」という手術を行っています。手術着の色でポジションがわかるようになっており、白は皮膚科の獣医師、黒は麻酔担当の獣医師、ピンクは動物看護師、青は研修中の学生です。このように、手術はチームで行います

まるで人間の大学病院! 各分野の獣医師がいる二次診療施設

日本獣医生命科学大学
獣医放射線学研究室
第1種放射線取扱主任者
動物医療センター院長

藤田 道郎教授

 病気やけがをしたペットを診療する動物病院には、一次診療施設と二次診療施設とがあります。飼い主がペットを最初に連れていくのが一次診療施設。町の動物病院など、いわゆる“かかりつけ医”がこれに当たります。動物病院によっては、犬や猫だけでなく、鳥やハムスター、爬虫類なども診療しているところがあります。一次診療に従事する獣医師は、骨折などの目に見えるけがから、目には見えない内臓の病気まで、さまざまな症状の動物を診療するので、幅広い知識が必要です。

 こうした一次診療では治せない病気やけがを診療するのが、二次診療施設です。人間向けの診療施設では大学病院に相当します。原則として、一次診療の獣医師から紹介される症例を受け入れます。わたしが院長を務める日本獣医生命科学大学付属動物医療センターには、MRI、CT、超音波診断装置、内視鏡といった画像診断装置や、放射線治療装置など、高レベルな設備が整っています。また、次のような18の診療科を置き、それぞれの診療分野における専門性の高い知識と技術を持った獣医師が診療しています。

【内科系】一般内科、循環器科、腎臓科、呼吸器科、消化器科、内分泌科、皮膚科、神経科、腫瘍内科、行動治療科、放射線科

【外科系】一般外科、整形外科、産科・生殖器科、軟部外科、脳神経外科、腫瘍外科、眼科

 当センターで働く獣医師には、最初の数年間はいくつもの科で経験を積み、幅広い知識を身につけてから自分の専門性を深めることを勧めています。

動物看護師や臨床検査技師も活躍 大切なのはコミュニケーション力

 当センターには、獣医師のほか、動物看護師、血液検査などを行う臨床検査技師、受付などを担当する職員も勤務しています。犬・猫を診る小動物診療部門のほかに、牛・豚といった産業動物の診察を行う大動物診療部門もあり、ここに所属する獣医師は、都内の牧場などで飼育されている家畜を対象に往診をしています。

 動物医療に従事する人には、「動物が好き」という気持ちはもちろん必要ですが、飼い主ときちんと会話ができるコミュニケーション力も求められます。獣医師の場合、時には安楽死など、つらい選択を提案しなければならないので、状況判断がしっかりできる冷静さもなければなりません。

獣医師が働くさまざまな場所

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農林水産分野

畜産農場
動物検疫所

野生動物分野

動物園
水族館

公衆衛生分野

家畜保健衛生所
食肉処理場・食肉加工所

小動物臨床分野


動物病院

 獣医師は、ペットや家畜の診療だけでなく、口蹄疫(こうていえき)や鳥インフルエンザなどの家畜伝染病(かちくでんせんびょう)の防疫、食品の安全確保のための業務など、幅広い分野で活躍しています。国家公務員である農林水産省の職員や、地方公務員である家畜保健衛生所や食肉処理場の職員のなかにも、獣医師免許を保有している人がたくさんいます。また、かつては男性が多い職業でしたが、20~30代の若い世代では半数が女性です。獣医師は今、女性が活躍する職業になっているのです。

高校卒業後、「愛玩動物看護師」になるまでの道

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高校

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動物看護師を養成する
学科を持つ4年制大学

↓
↓

動物看護師を養成する
専門学校(3年以上)

↓

「愛玩動物看護師」国家試験

↓

動物病院、ペットクリニックなどに就職

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 動物看護師は、獣医師の管理のもとで犬・猫の臨床検査や治療の手伝いをする専門性の高い職業です。そんな動物看護師になるには、動物看護師統一認定機構が定める特定の専門学校や大学で動物看護学を学んだ後、動物病院などに就職するのが一般的です。これまでは、動物看護師になるための公的資格はありませんでしたが、ペットが家族の一員として大切な存在となった今、動物看護師の重要性も高まり、2019年に愛玩動物看護師法が成立し、「愛玩動物看護師」という国家資格が設けられることになりました。その第1回の試験は、2023年末までに実施される予定です。受験資格は、実務経験が5年以上あることのほか、大学で指定の科目を修めて卒業したことや、専門学校で3年以上必要な知識・技術を習得したことなど。今後は、「愛玩動物看護師」の国家資格を持っていないとできない行為が出てきます。国家資格になることで、動物看護師の社会的な地位も、ますます上がることでしょう。

第27回/動物病院:
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