受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ職場見聞録

動物病院で働くって、どんなこと?

 前のページでは、動物医療における二次診療施設の役割などについて解説しました。ここでは、二次診療施設である日本獣医生命科学大学付属動物医療センターに勤務する獣医師の三浦香奈さんと、動物看護師の柚原亜紀さんに登場していただきます。お二方とも、10年超の経験を持つ動物医療従事者です。それぞれの仕事内容や、この職業を選んだ理由などについてお聞きしました。

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Q1どんな仕事をしているの?

Q2なぜ動物医療の仕事を選んだの?

Q3動物病院で働きたい人へメッセージを!

A1動物相手だからこそ
麻酔はいろいろな場面で必要



日本獣医生命科学大学
付属動物医療センター

獣医師三浦 香奈さん

 わたしは麻酔担当獣医師として働いています。動物は人間と違い、じっとしていることが難しいので、MRIやCTといった、人間なら麻酔なしでできる検査にも麻酔が必要です。そのため、いろいろな診療科の獣医師と仕事ができるのが、麻酔担当獣医師の魅力の一つです。

 麻酔をかける前には計画を立て、その動物を検査し、研修医と一緒に薬剤を準備します。手術中は、心電図などの数値をモニタリングし、動物の様子も見ながら麻酔の微調整を行います。手術が終わり麻酔を切った後も、動物の状態が安定するまで、動物のそばで様子を見ます。

 仕事をするうえで心がけているのは、動物に痛みや不安を感じさせないこと。麻酔から覚めた後の動物が、苦痛のない穏やかな表情を見せてくれるとき、仕事のやりがいを感じます。

A2生物と化学が得意で
手に職をつけたかったから

麻酔をかける前の検査も、三浦さんの大切な仕事。こうした検査は、手術の前日に済ませることもあるそうです

 子どものころから動物が好きで、テレビの動物番組はよく見ていましたし、動物園も大好きでした。勉強の面では理系科目、特に生物と化学が好きでした。将来の職業を考えたとき、デスクワークよりも体を動かす仕事で手に職をつけたかったので、獣医師になろうと考え、東洋英和女学院高等部から北里大学の獣医学部獣医学科に進みました。卒業してからは、二つの動物病院で働いた後、この動物医療センターで研修獣医師として4年間の研修を受け、昨年から専従獣医師として働いています。

 獣医師のキャリアプランとしては、動物病院を開業するという道もありますが、わたしは自分の専門分野を持ち、チーム医療に携わることに魅力を感じました。研修中にすべての診療科を経験した結果、サポートをする役割が多い麻酔の分野が自分に最も適していると思い、麻酔担当獣医師になることにしました。

A3飼い主の気持ちに
寄り添う姿勢が大切

 獣医師には、動物が好きという思いだけではなく、飼い主の気持ちに寄り添う姿勢も求められます。人の気持ちを察するには、さまざまな経験を積むことが重要で、それはどんな仕事でもプラスにはたらきます。小学生の皆さんは、この先、いろいろな場所でたくさんの人と話をして、多くの経験を積んでください。そして、動物ともたくさん触れ合ってほしいです。また、獣医師になるかどうかにかかわらず、将来の選択肢を狭めないように、しっかり勉強もしておきましょう。


A1獣医師をサポート
供血犬・猫のお世話も



日本獣医生命科学大学
付属動物医療センター

動物看護師柚原 亜紀さん

 診察や手術での獣医師の補助、預かっている動物のお世話などが、動物看護師の主な仕事です。わたしは外科を担当しているので、手術のサポート業務が中心です。手術前には手術室の準備や器具の滅菌を行います。手術中には獣医師のサポート役として、手術に必要な物を出し入れしたり、手術で取り除いた組織の撮影をしたりします。毎日行う仕事としては、供血犬・猫のお世話があります。供血犬・猫は、輸血が必要な犬・猫に血液を提供するための動物で、動物医療センターで飼われています。

 わたしが動物看護師として心がけているのは、その動物をよく観察して個性や特徴をとらえること。動物はことばが話せないからです。また、チーム医療の現場では、獣医師がスムーズに治療を行えるよう、状況を適切に判断しながらサポートしています。

 当センターは重い病気やけがの動物も多く、死という悲しい場面に立ち会うこともあります。一方で、つらい治療を乗り越え、喜ぶ飼い主と共に退院していく動物たちの姿を見ることもあり、一番のやりがいを感じる瞬間です。

A2興味があった医療分野で
生き物とかかわる仕事をめざす

 幼少期から生き物全般が好きで、虫や金魚など、たくさんの生き物に触れてきました。動物看護師になろうと決めたのは、進学する大学を選ぶときです。大好きな生き物にかかわる仕事がしたいと思っていたのに加え、医療分野に興味があったからです。また、病気を診る獣医師よりも、動物そのものと向き合う動物看護師のほうが自分には向いていると思い、お茶の水女子大学附属高等学校から日本獣医生命科学大学の獣医学部獣医保健看護学科に進学しました。卒業後、ほかの動物病院で6年間の経験を積み、5年前から当センターで働いています。

A3体力と精神力も必要
相手の気持ちを考えて動ける人に

診察台に載せた猫に恐怖を感じさせないよう、優しく声をかけて落ち着かせる柚原さん

 「動物が好き!」という気持ちを持つことが一番ですが、勤務時間が不規則で死に立ち会うこともあるので、体力も精神力も必要です。また、ことばの通じない動物を相手にするため、相手の気持ちを考えて行動できる人に向いていると思います。動物看護師に興味のある小学生の皆さんは、たくさんの動物と触れ合い、機会があれば飼ってみましょう。お世話をすることでその動物の特徴、そして命の大切さなど、多くのことを学び、感じ取ることができるはずです。

第27回/動物病院:
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