さぴあ職場見聞録
日本では、都道府県ごとに警察組織がつくられていて、大阪府の警察は「大阪府警察」、神奈川県の警察は「神奈川県警察」と呼ばれます。しかし、東京都の警察は「警視庁」という特別な名称になっています。よく似た名前の機関に「警察庁」がありますが、これは各都道府県警察の指揮・監督を行う国の機関です。今回は、日本の首都である東京都全域を管轄する警察組織「警視庁」の役割や警察官の仕事などについて、警視庁採用センターのキャリアアドバイザーに伺いました。
通信指令センター▶▶▶
▶110番から犯人逮捕まで
「はい、警視庁です。事件ですか? 事故ですか?」東京都で起きた事件や事故の110番通報を受けるのは、警視庁の通信指令センターです。受理担当者が事件や事故の通報を受けると、その情報は直ちに無線指令担当者のモニターに表示され、管轄の警察署や近くにいるパトカー、交番の警察官に出動の指令が出されます。同時にその情報は、パトカーや警察署のモニター、現場の警察官が所持するスマートフォンにも表示されます。
「家に泥棒が入った」という通報があった場合、現場に到着した警察官が被疑者を現行犯で逮捕できる場合もあります。しかし、犯人がすでに逃走しているときは、被害者から事情を聞いたり、近隣の人々などに怪しい人や車を見なかったかを聞いたりする聞き込み捜査を実施。犯人が残した証拠品も捜します。また、現場には鑑識担当の警察官も駆けつけ、指紋や足跡、髪の毛などを注意深く採取。近隣に設置されている防犯カメラの映像もチェックします。こうした捜査の後、被疑者が浮かび上がったら、裁判官に令状(逮捕状)を発付してもらい逮捕します。
多種多様な専門部門が力を合わせ
首都・東京の安全と安心を守る
110番通報の受理▶▶▶
無線で警察官に指令▶▶▶
指令を受け現場に急行▶▶▶
「要人警護」は警視庁ならでは 職員は4万6000人を超える
警視庁採用センター
キャリア・アドバイザー
警視庁の役割は、首都・東京の安全と安心を守ること。都民が安全に暮らせるように、犯罪や交通違反の取締りなどの警察業務を行っています。また、東京には皇居や国会議事堂などの国の重要施設があるため、そうした施設の警備をする仕事もあります。要人警護を日常的な業務として行っているのは、警視庁ならではの仕事です。
警視庁は、「地域」「刑事」「交通」「警備」「生活安全」「組織犯罪対策」「公安」など、さまざまな部門に分かれており、事件や事故が起きると、いろいろな部門の警察職員が、力を合わせて活動します。千代田区霞が関にある本部のほか、102の警察署や、1000か所を超える交番や駐在所などの警察施設があり、そこでは「警察官」と「警察行政職員」、合わせて4万6000人以上の職員が勤務しています。警察行政職員には、事務や通訳のほか、化学や物理の知識を生かして事件や事故の原因を究明する鑑識技術者などもいて、さまざまな専門知識を持つ人々が活躍しています。
正義感と使命感は不可欠 コミュニケーション力も重要
警視庁の職員になるには、警察官採用試験、または警察行政職員採用試験を受けます。そのうち警察官採用試験は、Ⅰ類(大卒程度)とⅢ類(高卒程度)に分かれ、どちらも一次試験は筆記、二次試験は体力検査と面接などです。採用試験は35歳まで受けられるので、民間企業などを経てから警察官になる人もいます。
採用後は警察学校に入り、24時間、仲間と苦楽を共にしながら、警察官として必要な知識や技能を身につけるための訓練を受けます。期間はⅠ類で6か月、Ⅲ類は10か月で、実務や法律のほか、柔道・剣道・合気道といった武道、逮捕術なども学びます。
警察官に必要なのは、正義感や使命感。近年は犯罪も多様化しているので、警察官の仕事にもいろいろな特技が生かせます。たとえば、運動が得意な人や、パソコンが得意な人も、警察官として活躍できます。もちろん、特技はなくても社会の役に立ちたい気持ちがある人は、ぜひ警察官をめざしてほしいです。社会がどれだけデジタル化しても、人と寄り添わなければ警察官の仕事は成り立ちません。ですから、警察官になりたいと思う小学生の皆さんは、ぜひコミュニケーション力を磨いてください。

●警察官のさまざまな仕事
❶巡回連絡
❷交通安全教室
❸警衛・警備
❹捜査活動
❺鑑識活動
❻救出・救助活動
警視庁は、さまざまな部門に分かれており、警察官の仕事は所属する部門によって異なります。
❶巡回連絡は、交番勤務の警察官の大切な仕事の一つ。管轄地区の家庭や事業所などを訪問し、犯罪の予防や、交通事故などの防止に役立つ情報を発信します。
❷交通部門では、交通事故を防止するため、子どもからお年寄りまでの幅広い人々に向けた交通安全教室を実施しています。
❸警備部門では、皇族などに対する警備を行うほか、祝賀パレードに伴う警衛警備では、身辺の安全確保と、混雑などによる歓送迎者の事故防止に努めます。
❹殺人・強盗・傷害・詐欺などの捜査をするのが刑事部門の仕事。犯人に警察官だと知られないように、私服で仕事をしています。
❺刑事部門には、犯罪の現場で証拠資料を集める鑑識担当の警察官もいます。
❻地震や台風による大規模災害が起きたら、警備部門に所属する「警視庁特殊救助隊」「機動救助隊」「水難救助隊」などが出動し、救出・救助活動を行います。
●警察官になるまで
警察官は研修期間が長く、警察学校を卒業して、配属先の警察署が決まった後にも、「採用時教養」の期間(Ⅰ類は1年3か月程度、Ⅲ類は1年10か月程度)があります。
この採用時教養の期間には、最初の3か月程度で「地域」「交通」「刑事」「生活安全」といった部門を回り、先輩警察官のもとで職場実習を行います。そして、いったん警察学校に戻って「初任補習教養」という一歩踏み込んだ授業を受け、その後、交番勤務の実践実習に入ります。

- 第28回/警視庁:
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