受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ職場見聞録

警視庁大崎警察署
地域警察官

 前のページでは警視庁の役割や、警察官のさまざまな職種などを紹介しました。そのなかでも、地域住民にとって最も身近な存在であるのが地域警察官です。警察学校卒業後の第一歩は、この地域警察官から踏み出します。ここでは、警察官になって3年目の方に登場いただき、勤務地である大崎駅前交番での仕事や、これまでの道のりについてお聞きしました。

警視庁大崎警察署
地域警察官

Qどんな仕事をしているの?

 交番勤務の警察官の移動手段は、徒歩か自転車。自転車の前輪の両脇には停止灯を収めるパイプが付いています。身に着けている仕事道具は、警察手帳、警棒、拳銃、無線機、手錠、催涙スプレー、懐中電灯、メジャー、メモ帳、筆記用具、スマートフォンなど。着用しているベストの内側には鉄板も仕込まれているので、かなりの重さです

 交番勤務の警察官は、事件・事故が発生したときの初動捜査をはじめ、パトロールや巡回連絡、地理案内、遺失届・拾得物の取り扱い、地域住民からの相談への対応など、幅広い仕事をしています。

 事件が起きて110番通報が入ったら、近くの交番の警察官が現場にいち早く急行し、最寄りの警察署から駆け付けた刑事さんと一緒に初動捜査に加わります。また、交番から徒歩や自転車でパトロールに出掛け、交通違反の取り締まりや、不審者への職務質問などを通じた犯罪の予防・摘発、少年の補導などを行います。さらに地域の安全と平穏な生活を維持するため、巡回連絡という仕事もします。巡回連絡では、受け持ちの地区にある家庭や事業所(お店や会社)などを訪問して、変わったことや困ったことがないかどうか話を聞くと同時に、身近で発生する犯罪の予防や交通事故の防止などに役立つさまざまな情報を提供するのです。

 ある晩、受け持ち地区の住民から「マンションの前で、酔っぱらいが寝ている」という通報が入りました。現場に急行すると、そこには酔っぱらいではなく、そのマンションに住むおばあさんが倒れていたので、急いで救急車を呼びました。わたしは、巡回連絡でそのマンションに何度も行ったことがあったため、おばあさんとは顔見知りでしたし、同じマンションに親族の方が住んでいることも知っていたので、すぐにその方に連絡することもできました。この出来事はとても印象に残っています。

Q仕事のやりがい、大変さは?

 時には怖い現場に行くこともありますが、1人で向かうことはけっしてありません。女性の場合、訓練していても力では男性にかなわないため、目撃者情報を集めるなど、自分にできることをしっかりやるようにしています。

 一方で、女性の警察官だからこそ、できる仕事もたくさんあります。たとえば、男女間のトラブルでは女性に寄り添って話を聞いたり、女性の酔っぱらいを介抱したり、女性の加害者の身体検査をしたりといった仕事がそれに当たります。幼い子どもも、女性の警察官が接したほうが心を開いてくれることが多いです。

 交通違反の取り締まりをしているときなどに、違反者から心ないことばを浴びせられると、つらい気持ちになります。でも、「違反していたなんて気づかなかった。教えてくれてありがとう」「怖い思いをしていたから、注意をしてくれて助かった」といった、感謝のことばをいただくこともあります。そんなとき、「自分の仕事には意味があるのだ」と、実感することができます。

Q警察官になろうと思ったのはなぜ?

 交番では、人が道を尋ねに来たり、落とし物を届けに来たりと、さまざまな交流があります。子ども、高齢者、外国人など、いろいろな人とコミュニケーションをとる能力が、地域警察官には必要です。警察官の制服を見ると緊張する人は多いもの。そのため、相手の立場になってコミュニケーションをとることを大切にしているそうです

 わたしが小学生のころ、巡回連絡で女性の警察官が自宅に来たことがあり、とても感じの良い方であこがれました。そんなわたしが大学生になって卒業後の職業を決めるとき、真っ先に頭に浮かんだのが警察官だったのです。人の役に立てる仕事がしたいという思いがあり、そのイメージにぴったり合ったからです。また、わたしは人と接するのが好きなので、そのような機会が多い警察官は自分に向いていると思いました。さらに、外国人に地理案内をすることもあるため、大学生時代にオーストラリア留学で身につけた英語力を生かせるとも考えました。

 交番では、人が道を尋ねに来たり、落とし物を届けに来たりと、さまざまな交流があります。子ども、高齢者、外国人など、いろいろな人とコミュニケーションをとる能力が、地域警察官には必要です。警察官の制服を見ると緊張する人は多いもの。そのため、相手の立場になってコミュニケーションをとることを大切にしているそうです

 警視庁の警察官採用試験を受けるための勉強は、ほぼ独学でしたが、通っていた大学の公務員講座も受講しました。

 採用が決まると、警察学校で寮生活をしながら、警察官として必要な法知識や実務を身につけます。集団生活にはさまざまなルールがあり、初めは決められた時間内にやるべきことを終わらせるのが大変でした。警察学校で学んだなかで、とても心に残っているのは、「仲間意識を持つことの大切さ」、そして、教官がよくおっしゃっていた「友愛」の精神です。「威圧感を持って人と接するのではなく、友愛の気持ちを持って温かいことばをかけなさい」と教わりました。

さっぴー5 さっぴー6

警視庁の地域警察官は24時間体制 画像

 警視庁の地域警察官は24時間体制で町の安全を守るため、①第一当番(日勤)、②第二当番(夜勤)、③非番(夜勤明け)、④週休(休み)のローテーションで勤務する「4交替制」をとっています。

 道・府・県の警察の場合は3交替制で、4交替制を導入しているのは警視庁だけ。ほかの道府県に比べ、東京都は地域警察官が勤務中に取り扱う事件や相談事案が多く、その分、心と体をしっかりと休ませるために、4交替制にしているのです。ちなみに、夏休みは12日間と、たっぷり取ることができます。

Q将来の目標は?

 警視庁では、最初に交番勤務を経た後、希望の部署への配置転換がかなうことも多いです。わたしは将来、交通課の警察官になって、子どもたちに交通安全を教える仕事がしたいと思っています。小学校を訪問し、正しい横断歩道の渡り方や、自転車が守らなければならない交通ルールなどを教えるのです。

 将来、警察官になりたいと思っている小学生の皆さんは、さまざまなことにチャレンジしてください。警察官は多種多様な人と接するので、多くの経験をしている人ほど、それを生かして対応できることも多くなります。正義感があり、身近な人を守りたいという気持ちのある人なら、きっと良い警察官になれると思いますよ。

第28回/警視庁:
|2

ページトップ このページTopへ