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さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ仕事カタログ

第51回 パイロット

 飛行機を操縦して大空を飛ぶパイロット。皆さんのなかにも、あこがれている人は多いのではないでしょうか。ひと言でパイロットと言っても、操縦できる飛行機の種類や仕事の内容は、持っているライセンス(免許)によって異なります。今回は大型旅客機のパイロットの仕事について紹介しましょう。全日本空輸(全日空/ANA)でボーイング787の副操縦士を務める柳川亮さんにお話を伺いました。

フライトは“一期一会” 安全な運航がパイロットの責務

全日本空輸株式会社(ANA)フライトオペレーションセンター
B787 副操縦士 柳川 亮さん
中高時代を桐光学園で過ごした柳川さん。東海大学ではパイロット養成コース(工学部航空宇宙学科航空操縦学専攻)の第1期生として学び、2010年4月にANAに入社しました

 柳川亮さんが乗務しているB787型機はボーイング社の最新機種です。B787が就航している路線であれば、国際線・国内線を問わず乗務しますが、その8割は国際線が占めるとのこと。具体的な渡航先は北米、ヨーロッパ、メキシコ、インドなどです。このような長距離フライトを月に1~2回、東南アジアなどへの中距離フライトを月に2~3回担当するほか、中国や台湾、国内などへの近距離フライトもあるため、スケジュールはかなりハードです。

 「長距離フライトの場合、渡航先で2泊するため、現地では1日半くらいの自由時間があります。東南アジアへの便は基本的に片道が夜中のフライトとなり、現地に丸1日滞在してから日本に戻ります。中国へは日帰りまたは1泊2日、台湾や国内は日帰りが多いですね」

 副操縦士は運航の全般で機長を補佐し、万が一、機長に不測の事態が生じた場合は直ちにその職務を代行しなくてはなりません。離着陸時の操縦は基本的に機長が行いますが、副操縦士が操縦桿を握ることもあります。こうして副操縦士は経験を重ねます。

 このようなパイロットの仕事をするうえで、柳川さんが肉体的に最も大変だと感じるのは「時差」です。特に、日本との時差が大きい北米やハワイなどに行ったときは、滞在中に体調を崩さないよう注意し、しっかり自己管理をして次のフライトに備えなければなりません。

 一方、パイロットの仕事の醍醐味は、「毎回のフライトが一期一会であること」。行き先、天気、気流がその時その時で異なるのはもちろん、同乗するほかのパイロットやキャビンアテンダント、機体を整備する整備士や運航を支える航空管制官などのスタッフも含めて、フライトの条件がすべて同じになることは二度とないからです。「毎回状況が異なるだけに、その都度、適切に判断しながら巨大な旅客機を操縦することには難しい一面もありますが、大いにやりがいを感じます」

 そんな柳川さんは「安全にフライトを完結すること」を第一に考え、少しでも疑問に思ったことはその場で確認するそうです。地上にいる航空管制官からの指示を、もう一度聞き直すこともしばしばです。「人間ですから、言い間違いや聞き間違いは必ず起こります。お客さまと乗務員の命を預かっている以上、小さなミスも許されません。コックピットでは機長と副操縦士が常に緊張感を持ちながら、情報を確認し合い、操縦しているのです」

夢は、信頼される機長として
チームを率いること

ANA国内線の出発ロビーと到着ロビーがある羽田空港第2ターミナル。その展望デッキからは、待機しているたくさんの旅客機や、離着陸の様子が見られます。柳川さんも、子どものころには家族とよく羽田空港を訪れ、わくわくしながら飛行機を眺めていたそうです

 「子どものころ住んでいた家は東京都西部の横田基地の近くで、その上空を飛ぶ飛行機をよく見上げていました」と話す柳川さん。飛行機が大好きな少年はやがて、「大きな旅客機を自分で操縦したい」と夢見るようになりました。具体的に行動を起こしたのは高校3年生のときです。東海大学工学部航空宇宙学科がANAと連携し、航空操縦士(パイロット)養成コースを新設することを知った柳川さんは、説明会に参加し、受験しようと決めたそうです。

 こうして東海大学工学部航空宇宙学科航空操縦学専攻の第1期生となった柳川さん。同じ夢を持つ同期のメンバーとは仲が良く、互いに得意な学科を教え合うなど協力し合いながら勉強に励んだそうです。「入学してすぐ、教授から『受験勉強は競争だけれど、パイロットの訓練や資格試験は競争ではない』と言われたことが印象に残っています。安全な運航にはチームワークが欠かせませんからね」

 卒業後、ANAに入社した柳川さんは、1年余りの研修期間中に運航支援に携わり、地上勤務を経験しました。その後、1年4か月にわたってB767の飛行訓練と実地研修を受け、副操縦士になりました。

 副操縦士として6年目を迎えた柳川さんの目標は、「機長になること」。そのためには副操縦士の経験を10年間積んだ後、機長への昇格試験を受ける必要があります。目標とする機長像について、柳川さんは「熟練した操縦技術と豊富な知識を持つことはもちろん、“チームのメンバーが力を十分に発揮できる環境”をつくれる機長になりたい」と言います。

 機長は旅客機を操縦するだけでなく、フライトの全行程に責任を持つ総指揮官でもあります。「機長が最終的に適切な判断をするうえで、その材料となる正確な情報がメンバーからどれだけ集められるか。それは、機長を中心とするチームがつくりだす環境にかかっているからです」。柳川さんは笑顔でそう語ると、この日も大空へ飛び立っていきました。

パイロットのカバンの中を拝見!

カバンの中には、いわば七つ道具が必ず入っています。

①‌帽子…‌さまざまな計器やスイッチが頭上にもあり、帽子は邪魔になるため、コックピットの中では着用しないそうです
マニュアル…航空法規などが書かれた冊子
フライトログブック…乗務便名や飛行時間を記録します
ヘッドセット…コックピットから地上にいる航空管制官や機上の客室乗務員と会話ができます
サングラス…強い日光から目を守るための必需品
白い手袋…合図をしたときに見えやすく、汗をかいたときは滑り止めにもなります
iPad…電子化されたマニュアルがiPadで確認できます
カバン…必要なものをすべて入れると10キロ以上になります。持ち手を伸ばして引っ張れば、床の上を転がして運べます

「第51回 パイロット」:
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