受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ仕事カタログ

「パイロット」になるには?

◎回答者
東海大学 工学部 航空宇宙学科 航空操縦学専攻
飛行訓練センター長
中川 淳雄教授

 航空会社で働くパイロットになるにはどうすればいいのでしょうか。東海大学工学部航空宇宙学科航空操縦学専攻でパイロットを養成している、中川淳雄教授にお話を伺いました。

パイロットの活躍の場は?

中川 お客さまを乗せる旅客機のほかにも、パイロットはいろいろなところで活躍しています。たとえば、自衛隊、海上保安庁、東京消防庁などには飛行機やヘリコプターを操縦するパイロットがいます。人命救助を行うレスキューヘリやドクターヘリもパイロットが操縦します。また、パイロットをめざす学生に先生として訓練を行う人もいます。

どうやって操縦しているの?

中川 航空会社の旅客機を操縦するパイロットの使命は、出発地から目的地まで、お客さまを安全に運ぶこと。操縦室では機長と副操縦士が地上にいる航空管制官と無線で交信し、運航経路の指示を受けながら、手動で操縦したり、装置を操作したりしているのです。

 具体的には、たとえば離陸の際は最新の気象条件や衝突しそうな鳥の有無、操縦系統の異常の有無などを確認し、適切に判断しながら手動で操縦します。上空ではコックピット内の計器を確認しながら自動操縦で運航しますが、雲や濃い霧の中を飛んでいて視界が悪い場合は、外の景色を目で見て機体の位置や姿勢を判断することができなくなります。そんなときは計器に示される数値を確認し、航空管制官の指示に従って運航します。 また、旅客機に乗務していないときは航空法や航空図などの変更に対応した勉強をしていますし、フライトシミュレーターで訓練や試験を受けることもあります。パイロットになった後も、高い技術と知識を維持するための勉強がずっと続くのです。

パイロットになるには?

教室には古い型の飛行機から取り外された計器パネルが置いてあります。これはかつて使われていた計器なので針がついていますが、現在の飛行機のコックピットでは、数値は液晶パネルに表示されます

中川 パイロットは取得した免許によって操縦できる飛行機の種類が異なります。セスナ機や小型ヘリコプターを自家用機として操縦するなら「自家用操縦士」の免許が、商用目的で報酬を受けて操縦するには「事業用操縦士」の免許が、それぞれ必要です。航空会社で旅客機を運航するエアラインパイロットになるには、最低でもこの「事業用操縦士」の免許が必要。さらに、機長になるには、パイロットとして最上位の「定期運送用操縦士」の資格が求められます。そのための試験は、航空会社に一定期間勤務し、副操縦士として定められた経験を積んでから受けることになっています。

 エアラインパイロットになる道としては、次の三つの方法が一般的です。
①パイロット養成課程のある大学で事業用操縦士などの免許を取ってから、航空会社に操縦士訓練生として就職する。
②大学に2年以上在学後、または短大か高等専門学校を卒業後、「航空大学校」に入学。在学中に事業用操縦士などの免許を取得し、航空会社に就職する。
③一般の大学を卒業後、航空会社に入社。パイロットの自社養成訓練を受ける。

 なお、自社養成を行う航空会社は全日空や日本航空など一部の大手航空会社に限られており、狭き門です。

パイロットへの道

 東海大学工学部航空宇宙学科航空操縦学専攻は、2006年に日本の大学で最初に設置されたパイロット養成コースです。2009年には日本の大学で初となる「指定航空従事者養成施設(計器飛行証明課程)」に指定されました。大学が定めた教育課程を修了し、技能審査に合格すれば、学外機関で実地試験を受けることなく、パイロットに必要なすべてのライセンスが取得できます。

【入学試験】

 第一次選考(大学入試センター試験)に合格後、第二次選考で適性検査、面接(日本語・英語)、身体検査を行います。

【1年次】

 パイロットになるために必要な「事業用操縦士」「計器飛行証明」の学科試験合格をめざして、航空法規や航空力学などを学びます。また、2年次からの留学に向けて、航空英語を含む英語も集中的に学びます。

【2~3年次】

 1年次に必要な資格をすべて取得した学生は、2年次の春学期または秋学期開始時から15か月間、アメリカのノースダコタ大学(UND)に留学し、本格的な飛行訓練を行います。留学期間中に実技試験を受け、アメリカ連邦航空局(FAA)ライセンスと、日本の国土交通省航空局ライセンスを取得します。

※UNDの敷地内にある「東海大学飛行訓練センター」で、技能審査員(ANAの機長)が実地試験を行います。

【3~4年次】

 航空会社での実運航を想定したフライトシミュレーターで訓練を行い、実践的な操縦技術を磨きます。航空操縦専門科目を学び、航空に関するテーマで卒業論文にも取り組みます。

パイロットが使う計算尺の模型。風でどのくらい機体が流されるかなどを、具体的に計算できます。エアラインのパイロットの場合、操縦室のコンピューターで計算します

‌‌①帰国後は、フライトトレーニングデバイス(FTD)と呼ばれる本格的なフライトシミュレーターで訓練します。アメリカで操縦した訓練機の操縦室と同じように作られており、計器の配置や作動の仕方、操縦感覚も実際の飛行機と同一です。スクリーンに映る映像は、さまざまな空港のものに切り替えられます。もちろん、気象条件や時間帯も変えられます
‌‌②フライトシミュレーターの後ろにいる教授は、航空管制官の役をしていて、「高度3万フィートを保って飛びなさい」「左に25度曲がりなさい」などと、細かく指示を出します。なお、航空管制官とパイロットは英語で話すのが決まりです
③UNDに留学中、初期の訓練では飛行場を周回するコースを飛行し、離着陸を何度も繰り返します。約1か月の訓練を経て、離着陸が安定してできるようになると、教官の同乗なしの単独飛行を行います。そして、留学してから約3か月後に、まずアメリカの自家用操縦士の資格を取得します

「第51回 パイロット」:
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