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さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

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第52回 研究医

 「医師」と聞くと、皆さんはまず、患者の診察や治療をする「臨床医」を思い浮かべるでしょう。一方、今回紹介する「研究医」のように、医学博士の学位を持ち、大学の研究室での医学研究を主な仕事とする医師もいます。今回は順天堂大学を訪ね、医学部で薬理学の教育・研究をしながら研究医を育成している櫻井隆教授にお話を伺いました。

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研究医は、どんな 仕事をしているの?


順天堂大学 医学部
医学博士 櫻井 隆 教授

櫻井 原因がわからない病気や適切な治療法のない病気は、世の中にまだたくさんあります。そのような難病の原因を突き止め、新たな予防法・検査方法・治療法を開発するには、さまざまな研究を行い、生命現象や病気の謎を解明しなくてはなりません。研究医の使命は、「医師の視点」を生かしながら専門分野の研究を行い、医学の発展に貢献すること。より良い医療を患者さんに提供することをめざし、その基礎となる研究を行うのです。

 臨床医との大きな違いは、臨床医が基本的に自分が診察や治療を担当した患者さんしか救うことができないのに対して、研究医は自分が研究した成果によって、より多くの患者さんを救うことのできる可能性がある点です。

 医学研究を大まかに分類すると、医学の研究や臨床の基礎となる「基礎医学」、患者の治療を目的とする「臨床医学」、社会的要因と健康との関係について追究する「社会医学」の三つに分けられます。基礎医学研究にあたっては、マウスなどの実験動物に対して環境の変化、病原体の感染、遺伝子の改変などを行い、病気のモデルとします。また、法医学や国内外の医療政策にもかかわる社会医学では、集団としてのヒトや、環境・社会的な要因などを研究します。医学研究の現場では、医学部出身者はもちろん、薬学系、理学系、工学系、農学系などの大学院修士課程・博士課程を修了した人も活躍しています。

 新たに開発された薬や医療機器などを医療現場で使う前には、ヒトに用いても安全と考えられるものを使って「治験」を行い、使用に問題がないうえ、効果があることを科学的に証明する必要があります。このような基礎研究の成果と医療現場をつなぐ領域は「橋渡し研究」と呼ばれ、これからの研究医に期待される重要な役割の一つとなっています。

研究医になるには?

研究医の仕事道具の一つ、マイクロピペット。容量によっていろいろなサイズがあります

櫻井 まず、医学部での6年間で幅広い教養と医学の専門知識を身につけ、国家試験に合格して医師免許を得ることが必要です。臨床医になりたい人は、その後、2年間の初期臨床研修を受け、自分の専門を決めることになります。一方、研究医になる場合は通常、医学部を卒業後、大学院の基礎医学系または社会医学系に進みます。4年間で研究の倫理や基本的なスキルを身につけるとともに、自身の研究をもとに論文を書いて医学博士の学位を取得します。その後も研究を続ければ、研究医と認められるわけです。

 しかし、従来の課程では研究者への道を歩み始めるのが遅くなってしまいます。そこで多くの大学が、医学部在籍中から大学院の講義を前倒しして受講し、医学研究に取り組めるプログラムを設置しています。順天堂大学のプログラムでは、海外留学や初期臨床研修を並行して行っても、医学部卒業後4年以内に医学博士の学位を取得できます。

研究か臨床のどちらかを選ばなくてはいけないの?

研究室の棚には試薬の溶液を入れた瓶がずらり

櫻井 「研究医」の働き方はさまざまです。大学の研究室や研究機関などで医学研究に携わる医師は、純粋な意味での研究医だといえるでしょう。しかし、病院に勤務し、患者さんの診療をする医師の多くも研究を続けています。患者さんから得た試料や情報をもとに研究を行い、その成果を検査や治療に生かそうと努力しているのです。

 順天堂大学では、研究者の目を持つ臨床医、臨床医の目を持つ研究者の育成をめざしています。本学の卒業生には、患者さんの診療を担当しながら、大学研究室で研究に携わる多くの研究医がいます。

研究医にはどんな資質が必要?

脳神経内科の臨床医が使う仕事道具。左から眼底鏡、ペンライト、聴診器、打腱器、音叉

櫻井 どんな研究でも、医療の現場に応用できるほどの成果を得るまでには、多くの努力と長い時間が必要です。研究医には、「研究成果を患者さんの治療に役立てたい」という気持ちを強く持ち、根気強く努力を積み重ねる姿勢と、目先の情報に振り回されずに自分の研究に打ち込める信念が求められます。

 研究医と聞くと、研究室にこもって独りで黙々と実験をするイメージがあるかもしれませんが、実際はそうではありません。臨床医は患者さんと接し、看護師などさまざまな職種の医療従事者と協力しながら診療を進めますが、研究医も異なる分野の研究者たちがチームを組み、共同で研究を進めるスタイルに変化しています。つまり、研究医も臨床医と同様に、コミュニケーション能力とチームをまとめる力が求められる時代になったということです。

 将来、研究医になりたいと考えている皆さんは、いろいろなことに好奇心を持ち、興味のある対象を探究する姿勢を常に大切にしてください。また、研究医は忙しいなかでも目標に向かって少しずつ着実に研究を進めていくことが求められます。すぐには難しいかもしれませんが、時間の管理を自分でできるようにしておくことも大事です。

順天堂大学の
「基礎研究医養成プログラム」

 医学部1年次から医学研究関連の授業・実習を開始。興味のある複数の研究室で研究を体験し、所属研究室を決定後、放課後などを利用して研究に取り組みます。

 それと並行し、医学部在学中に大学院の授業を先取り受講して、大学院の単位の一部を取得。医学部を卒業し、医師免許を取得したら、基礎医学系大学院に入学します。大学院では単位の前倒し取得で生じた時間的な余裕を利用し、海外留学や初期臨床研修を大学院と並行して行います。

 医学博士の学位を取得して大学院を修了した後は、順天堂大学の教員として採用され、研究を継続。国際的に活躍する研究医、または「橋渡し研究」を推進する研究医としてのキャリアを歩みます。

「第52回 研究医」:
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