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  • 18年12月号 さぴあ仕事カタログ「第53回 科学捜査研究所研究員」

さぴあ仕事カタログ

第53回 科学捜査研究所研究員

 事件や事故が発生したとき、解決するための基本中の基本は「証拠を調べること」です。証拠のなかには、科学的な分析が必要なものもあるため、各都道府県の警察には科学捜査研究所(科捜研)と呼ばれる付属機関があり、そこで働く研究員が証拠となる資料の分析や鑑定を行っています。今回は警視庁の科捜研を訪ね、第二化学科長の高橋善一さんに主な仕事について伺いました。

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科捜研では どんな仕事をするの?

薬物鑑定 警察で押収され、科捜研に資料として持ち込まれた薬物が、覚醒剤や麻薬、危険ドラッグなどの違法薬物かどうかを調べるため、その薬品に合わせた方法で分析します

 事件や事故の現場に残されたさまざまな手がかりから、その事件などを解決する糸口や捜査の決め手となる事実を見つけ出すのが科捜研の仕事です。科捜研は各都道府県の警察にあり、管轄の各警察署が事件現場などから収集した資料を科学的に分析・鑑定します。今は犯罪を立証するために、科学的な手法で得た客観的な証拠を用いることが多いので、科捜研の重要性も高くなってきているといえるでしょう。

 東京都の警察である警視庁の科捜研の場合、東京都内の各警察署が収集した資料を扱い、鑑定する資料の種類によって、次の五つの科に分かれています。

●法医科⋯犯罪現場に残された血液、唾液などの体液や、骨、歯、毛髪などから血液型やDNA型を鑑定します。

●物理科⋯主に、火災、爆発、作業事故、交通事故などの原因究明や、犯罪に使われた車両、工具、銃器、弾丸などの鑑定を行います。時には現場に出向いて鑑定をすることもあります。また、容疑者の顔を特殊なカメラで撮影したデータに基づき、防犯カメラなどに映っていた犯人の顔写真と重ねるなどして鑑定する3次元顔画像鑑定も行います。

●文書鑑定科⋯筆跡や印影、偽造された疑いのある身分証や通貨の真偽鑑定、ポリグラフ検査を行います。ポリグラフとは、いろいろな生理的反応の指標を測定できる装置のこと。これを使って、被検査者に事件に関する記憶があるかどうか、隠している情報がないかどうかを明らかにします。ポリグラフ検査とほかの鑑定との大きな違いは、その対象が生身の人間であることです。

●第一化学科⋯火薬、爆発物、塗膜、繊維などを鑑定します。たとえば、痴漢の被疑者の手についていた微細な繊維片を調べ、それが被害者の衣服の繊維と一致すれば有力な物証となります。また、接触事故を起こした自動車の傷に残った塗膜の成分を分析し、それが相手の自動車の塗膜と同じものかどうかを鑑定します。放火の可能性がある火災現場では、現場の状態を見なければ鑑定できないので、研究員が現場に出向くこともあります。

●第二化学科⋯警察で差し押さえるなどした薬物を分析し、それが覚醒剤や麻薬、危険ドラッグなどの違法薬物であるかどうかを調べます。

 以上の各科では、分析・鑑定をするだけでなく、鑑定手法に関する研究も行っています。研究員は何らかの学会に入っており、その分野の新しい情報を入手したり、自分の研究結果を発表したりもしています。

科捜研の研究員になるには?

微物鑑定 顕微鏡と分析装置を使って、事件現場に残された微物(火薬、塗膜、繊維などの数百ミクロン以下の微小な証拠物)の形態や成分分析の鑑定から事件解明に役立つ情報を探し出します ポリグラフ検査 呼吸、血圧、脈拍など、人間の生理的反応の指標を同時に測定できる装置を使って、被検査者が犯人にしか知りえない情報を知っているかどうかなどを判断します

 大学を卒業後、または大学院を修了後、各都道府県警察が実施する、一般教養と専門知識を問う採用試験を受験します。

 募集は毎年必ずあるわけではなく、退職者が出たときや、特定の専門分野の増員を図る場合などに行われます。したがって希望者は、希望する各都道府県警察のホームページや新聞などで、採用の有無を小まめに確認することが大切です。

 採用後は、次のようなステップを経て一人前の研究員となります。まず、約1か月間にわたり、警察学校において警察職員としての研修を受けます。この期間は警察学校の寮に入ります。その後、各部署に配属され、先輩研究員の鑑定を見ながら鑑定方法を一つひとつ学んでいきます。

 そして、1年目の秋には、千葉県柏市にある科学警察研究所(全国の警察をまとめる警察庁の付属機関)に付属する研修機関で、全国で採用された新人研究員たちと共に「養成科」と呼ばれる研修を3か月間にわたって受けます。このとき学ぶのは、それぞれの専門分野の鑑定技術です。この養成科が終わると、一人で鑑定書を書けるようになります。そして、配属先に戻ってからは、先輩研究員の仕事を手伝いながら、知識を広げ、経験を積んでいきます。

 さらに、「現任科」と呼ばれる研修があり、もっと高度な鑑定技術を学びます。この研修を終えるころには研究者として一人前とみなされます。しかし、鑑定技術の進歩はめざましく、まさに日進月歩ですから、その後も勉強や研究が欠かせません。

科捜研の研究員に必要な素養は?

 鑑定結果は事件の捜査や裁判などに大きな影響を及ぼすだけに、科捜研の研究員は責任感を持ち、正確な鑑定を行わなくてはなりません。けっして華やかな仕事ではないので、地道な作業を着実に続けられる根気強さが必要です。また、最新の技術や新たな分析方法をみずから学ぼうとする積極性やチャレンジ精神も欠かせません。

 将来、科捜研の研究員になりたいと考えている小学生の皆さんは、いろいろなことに興味を持ち、勉強をして幅広い知識を身につけてください。なぜなら、警視庁の採用試験では一般教養も問われるからです。さまざまなことを学んだうえで、自分の好きな分野の勉強を深めるといいでしょう。

科学捜査の専門分野と研究員の主な出身学部・学科

分野主な出身学部・学科
法医農学部(獣医学科・農芸化学科など)、理学部・工学部・教育学部等の動物系生物学科、薬学部の各学科、医学部の各学科。
物理工学部・理学部等の電気系、機械系、物理系、情報系および材料系の各学科。
化学工学部、理学部、農学部等の化学系学科、薬学部の各学科。
文書工学部・理学部等の画像工学系学科、情報系学科、印刷工学系学科など。
心理文学部・教育学部・人間科学部などの心理系学科。
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