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さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

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第54回 博物館研究員

 小学生の皆さんのなかには、東京・上野の国立科学博物館を見学したことがある人も少なくないでしょう。同館は自然史・科学技術史に関する国立の唯一の博物館です。ここでは、たくさんの研究員が標本資料の収集や管理をしながら、自分の専門分野の研究をしています。今回は、そんな国立科学博物館の研究員について紹介します。同館の標本資料センター長で、恐竜の研究者でもある真鍋真博士にお話を聞きました。

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国立科学博物館って、
どんなところ?

国立科学博物館
標本資料センター
分子生物多様性研究資料センター

センター長 真鍋 真 博士

横浜国立大学卒。米イェール大学理学部修士課程修了、英ブリストル大学理学部博士課程修了。1994年より、国立科学博物館の地学研究部 生命進化史研究グループ・研究主幹に勤務。2002年より、カナダ・ロイヤル・ティレル古生物学博物館・客員研究員も兼任。研究テーマは「恐竜など中生代の化石から読み解く爬虫類、鳥類の進化」。恐竜に関する図鑑や学習漫画など、数々の図書監修を手がけている。『世界ふしぎ発見!』(TBS)、『視点・論点』(NHK)ほか、ニュースなど多くのテレビ番組にも出演

真鍋 国立科学博物館(以下、科博)は、日本とアジアにおける科学系博物館の中核となる施設です。自然史・科学技術史の調査・研究を行うと同時に、一般の方々が地球や生命、科学技術に関する認識を深められるよう、標本資料の収集・保管と展示・学習支援を行っています。これらについて、①上野公園内の日本館(重要文化財指定)とそれに隣接して建てられた地球館、②筑波地区の実験植物園や研究棟、標本棟、③港区白金台の自然教育園(天然記念物指定)の、主に三つの地区で活動しています。

 都道府県立・市区町村立の博物館には、資料の収集・展示・調査研究などを担当する学芸員という専門職員を置くことが博物館法に定められています。一方、国立の科博は博物館法の適用外となる施設です。そのため、学芸員ではなく、研究員を置いているのが大きな特徴の一つです。

博物館の研究員は
どんな仕事をしているの?

真鍋 科博では現在、約130人の常勤職員が働いていますが、そのうち約半数が研究員です。彼らは自分の専門分野の研究をしながら、博物館で調査・研究する標本資料を収集し、それを収蔵庫に保管・管理する仕事もしています。研究だけをするなら、大学をはじめとするいろいろな研究機関に所属しても行うことができますが、標本資料の保管・管理は、博物館の研究員に特有の仕事です。

国立科学博物館といえば、昨年発見されて50周年を迎えたフタバスズキリュウの復元骨格。これは白亜紀後期(約8500万年前)のものです

 また、収集した標本資料を調査・研究し、その成果を生かして展示を新しくしたり、標本資料とともに展示する解説パネルの文面を考えたりすることも大切な仕事です。さらに、「特別展」「企画展」などと呼ばれる期間限定の展覧会を企画したり、その期間中に実施する入場者向けのイベントを考えたりもします。こうした仕事がある点も、大学などに所属している研究員とは大きく違うところです。

 ところで、人間の社会には国境がありますが、生き物にはありません。日本の自然の特性を理解するには、アジアなど周辺地域も調べて比較することが大切です。だから、研究員の調査対象となる地域も、国内だけでなく世界に広がっています。また、貴重な標本資料は人類共通の財産でもあります。海外の博物館などの研究員と協力して、自然災害や紛争などによって失われるのを防ぐため、標本資料やそのレプリカ(複製品)を必要に応じて交換するといったことも行います。

博物館の研究員になるには?

真鍋 科博の研究員に求められるのは、高い専門性を有していることです。そのため、博士の学位を持っていることが、研究員の公募に応募できる資格の一つとなっています。

 なお、科博には、研究部組織図で紹介しているように、「動物研究部」「植物研究部」「地学研究部」「人類研究部」「理工学研究部」という五つの研究部があり、各研究部はさらにいくつかのグループに分かれています。たとえば、地学研究部の生命進化史研究グループには、海生哺乳類化石、陸生哺乳類化石、脊椎動物化石、植物化石という四つの専門分野があり、各専門分野を1人の研究員が担当しています。そのため、各研究員の守備範囲はかなり広く、仕事には大きな責任があります。そして、ある専門分野の研究員が辞めた場合のみ、その専門分野の研究員の公募が行われます。

博物館の研究員には
どんな資質が必要?

真鍋 当館にはさまざまな人が見学に来ます。そこで、高い専門性を持つ研究を行うだけでなく、小さな子どもにも専門的なことをわかりやすく説明する能力も求められます。

 また、研究は成果が出るまでに長い時間が必要ですから、うまくいかない時期も落胆せず、あきらめないで続けていくことが大切です。さらに、新しい発見によって従来の定説がひっくり返ることもあるので、先入観を持たずに調査研究をしなくてはなりません。

 研究員として活躍している人を見ていると、たとえば植物でも昆虫でも、自分が子どものころから好きだったことを大人になっても大切にしています。大好きなものやことがある子ども時代を過ごした経験は、将来、何をするか迷ったときにも助けになるのだと思います。

 ですから、小学生の皆さんは、好きなものはとことん調べたり、集めたり、観察したりする時間を大切に積み重ねてください。研究員に必要な“あきらめない姿勢”は、苦手科目をあきらめずに勉強することでも養えるはずです。

特別展を見に行こう!

 国立科学博物館では次のような特別展が開催されます。特別展には常設展では見られない展示と解説があり、そこには研究員の最新の研究成果が詰まっています。

①特別展 大哺乳類展2-みんなの生き残り作戦

開催中。6月16日(日)まで

 哺乳類はどのようにして生き残ってきたのか、その作戦に迫る展覧会。500点以上に及ぶ剥製や骨格標本が展示され、映像なども交えながら、哺乳類の移動運動を軸に、「食べる」「産む・育てる」際の作戦にも迫ります。
公式ホームページ https://mammal-2.jp

展示会メインビジュアル

②恐竜博2019

2019年7月13日(土)~10月14日(月・祝)

 2.4mの長い腕を持つデイノケイルス。その貴重な頭骨などの実物化石と全身復元骨格が世界で初めて公開されます。さらに、日本の恐竜研究史上最大の発見といわれる、「むかわ竜」の全長8mを超える全身復元骨格は、むかわ町以外で初めて公開されます。
公式ホームページ https://dino2019.jp

※特別展は、通常の入館料とは別に入場料が必要となります

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