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さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

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第58回 弁護士

イメージ画像 法律の知識を使い、困っている人を助ける職業、それが弁護士です。テレビドラマなどでは、裁判所の法廷で自分の考えを主張する姿がよく描かれますが、実際にはさまざまな場所で活躍しています。今回、お話を伺った本多基記さんも、自分の事務所を持ちながら、嘱託として日本弁護士連合会の広報の仕事をしたり、企業の役員を務めたりしています。テレビドラマからは伝わってこない弁護士の世界について紹介しましょう。イメージ画像

弁護士はどんな仕事をするの?

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日本弁護士連合会 広報室嘱託
本多・森田・吉田法律会計事務所

弁護士 本多 基記 さん

本多 弁護士法という法律があるのですが、弁護士の使命について、そこでは次のように規定しています。「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」。これは簡単にいうと、何らかのトラブルで困っている人や会社などを、法律の知識を使って助ける仕事だということです。また、トラブルにならないように契約書を作ったりすることも、弁護士の大切な仕事です。

 弁護士が扱うトラブルは、大きく分けると「民事事件」と「刑事事件」の二つがあります。民事事件とは、たとえばお金を貸したのに返してくれないなど、人々の生活のなかで起こる争い事のこと。そうした民事事件では、弁護士は当事者の一方の「代理人」として、もめ事を解決するための手助けをします。話し合いで解決できない場合は裁判になることもあります。

 一方、犯罪が生じたとき、罪を犯したとされる人が本当に犯人なのか、犯人であるならどんな処罰を与えるべきかということを扱うのが刑事事件です。弁護士は、刑事事件では罪を犯した疑いのある人(被疑者)や、罪を犯したと疑われて裁判所に起訴された人(被告人)の「弁護人」として、被疑者や被告人の言い分を当事者に代わって主張します。

弁護士になるには?

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本多 弁護士になるには法曹資格を取得することが必要です。法曹とは弁護士・裁判官・検察官の総称です。難関の司法試験に合格し、約1年間の司法修習を受け、その卒業試験に当たる終了試験に合格すると法曹資格が与えられます。

 司法試験を受けることができるのは、法科大学院(2年コースまたは3年コース)を修了した人か、予備試験に合格した人です。ただし、司法試験は法科大学院修了後や予備試験合格後の5年間しか受けることができません。

 法科大学院を修了して法曹資格を取ろうとすると、大学入学から最短で8年近くかかります。これでは時間がかかり過ぎるという声に応えるため、2019年には「法曹コース」という新たな選択肢が誕生しました。このコースでは大学を3年間で卒業した後、2年間の法科大学院在学中に司法試験を受けることができるため、最短約6年で法曹資格を取得することが可能です。

 こうして法曹資格を得た後、弁護士として仕事をするには、全国に52ある弁護士会のいずれかに入会し、日本弁護士連合会(日弁連)に登録しなければなりません。

弁護士の活躍の場は?

弁護士の活躍の場
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本多 法律事務所に所属して、依頼者からの相談に乗ったり、裁判の代理人として仕事をしたりするのが一般的な働き方です。テレビドラマなどの弁護士は裁判所の法廷にいることが多いですが、実際には事務所で依頼者から相談を受けたり、メールや電話などでアドバイスをしたり、書類を作成したりしている時間がとても多いです。

 法律事務所の規模はさまざまで、弁護士が1人の事務所も多い半面、500人以上もの弁護士が所属している事務所もあります。こうした法律事務所に勤務した後に独立し、自分の事務所を開業する人もたくさんいます。

 最近では民間企業に勤務する弁護士も増えてきました。さらに、企業の役員として経営に携わる弁護士、国や地方公共団体、国際機関などで働く弁護士、大学などで教員として活躍する弁護士、政治家になる弁護士もいます。また、テレビの情報番組などでコメンテーターを務める弁護士も珍しくありません。法律問題は世の中の至るところにありますし、一見すると法律問題ではないように思える出来事も法が関係しており、法的な切り口で解説すると説得力が増すからです。

 近年、発展途上国で法整備の支援をしたり、いじめなど学校現場で生じている問題について学校側の相談相手となるスクールロイヤーとして活動したりする弁護士もいます。法律は社会生活に必要不可欠であるため、弁護士の働く場は今後ますます広がっていくでしょう。個人的には、企業間の契約交渉では法律知識も必要となること、企業の法令順守(コンプライアンス)も重視されることから、会社を経営する弁護士が増えるのではないかと思っています。

弁護士に必要な資質は?

本多 訴状などの裁判資料を書くため、弁護士にはまず文章力や読解力が必要です。それに加え、たとえば特許権をめぐる事案を扱う際は、理系の知識や考え方があると有利です。わたしは、弁護士になる前にはシステムエンジニアとして働いていましたが、その経験が役立つこともあります。いろいろな事柄に興味を持つ好奇心も大切です。ただ、最も大切なのは、依頼者を助け、依頼者のために最良の結果をもたらしたいという気持ちを持って力を尽くせることだと思います。

 将来の職業として弁護士に興味を持っている小学生のなかには、司法試験は難関だから合格は無理だと思っている人もいるかもしれません。でも、無理だと思うと、自分で自分の可能性をつぶしてしまうので、ぜひ挑戦してほしいです。わたしは、小学生のころはあまり勉強ができませんでしたが、中学生になってから、このままでは職業の選択肢が少なくなると思い、がんばって勉強して私立大学の付属高校に入学しました。

 中高生時代は本をよく読んだのですが、それが今、役立っています。たとえば、司法試験の論文式試験では、長文を読んで問題点を的確に把握し、自分の見解を書く能力が求められますが、そうした読み書きの能力は、一朝一夕には身につかないからです。弁護士になってからも、膨大な裁判資料を読み、多様な文書を作成するので、読み書きの能力はとても大切です。

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