受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ仕事カタログ

第59回 パティシエ

イメージ画像 ケーキや焼き菓子などのスイーツを、おいしく、しかも美しく作るには、高度な技術が必要です。そうした職人技を持つ専門家が「パティシエ」。腕を上げると、メディアで取り上げられる機会も増える花形職業です。そんなパティシエになるにはどうしたらいいのでしょうか。製菓技術者を養成する専門学校として60年の歴史を持つ日本菓子専門学校を訪問し、阿部悟先生にお話を伺いました。イメージ画像

パティシエになるには?

阿部 悟さん画像
専修学校 日本菓子専門学校
教育局 次長

阿部 悟 さん

阿部 パティシエになるために必ず取得しなくてはならない資格はありませんが、お菓子作りに関する知識や技術は必要です。それらを身につける方法は、一般的に二つあります。一つは、専門学校で学ぶこと。もう一つは、洋菓子店などに就職し、現場で仕事をしながら修業を積むことです。以前は、いきなり洋菓子店などに就職して修業する人も多かったのですが、今は製菓の専門学校に通う人がほとんどです。専門学校では、専属の講師に加え、さまざまな店やホテルで活躍しているパティシエから教わる機会もあるため、必要な知識と技術を幅広く学ぶことができます。また、専門学校に通うと、同じ道をめざす仲間もいるため、励みになるのもメリットです。

専門学校ではどんなことを学ぶの?

イメージ画像 実習に取り組む生徒たち。パティシエをめざす仲間と共に協力しながら、お菓子作りに励みます

阿部 本校の製菓技術学科は2年制です。1年次は洋菓子・和菓子・製パンのすべての基礎を学び、2年次からは洋菓子科と和菓子科に分かれます。

 実際にお菓子作りをする「実習」では、さまざまなお菓子の作り方をはじめ、道具の使い方や衛生管理の方法などを学びます。一方で、講義形式の「学科」では、二つの国家資格の学科試験に必要な知識や、技術の裏付けとなる理論を学びます。具体的には衛生法規、公衆衛生学、食品学、食品衛生学、栄養学、製菓・製パン理論などの講義があります。

 なお、二つの国家資格とは「菓子衛生師」と「菓子製造技能士」です。「菓子衛生師」は将来、菓子店を開くうえで有利になる資格です。独学の場合、菓子作りの業務経験が2年ないと受験できませんが、専門学校で学べば、2年次に受験できます。それに対し、「菓子製造技能士」は、菓⼦製造の幅広い知識と⾼い技術を身につけていることを証明できる資格です。洋菓子と和菓子に分かれているのですが、それぞれ1級と2級があり、専門学校を卒業すれば実務経験がなくても2級の受験資格が得られます。

海外で修業する必要は?

阿部 語学の習得と同じように、洋菓子作りも海外に留学したほうが有利ではないかと思う人もいるでしょう。考え方は人それぞれです。ただ、確実にいえるのは、現在の日本の洋菓子は、おいしいだけでなく、見た目もたいへん美しく、世界的にも最高レベルにあるということです。よって、必ずしも海外で修業する必要はありません。ただ、和菓子と異なり、洋菓子の文化はヨーロッパで始まりました。それだけに、ドイツやフランス、イタリアなどでその国の伝統菓子や文化に触れれば、日本では得られない経験となることは間違いありません。もし、その経験をより深いものにしようと思ったら、若いうちに、その国のことばをしっかり身につけてから行くことをお勧めします。

パティシエの働く場って?

パティシエになるには
パティシエになるには画像

阿部 専門学校を卒業した人の就職先でいちばん多いのは、個人経営の洋菓子店です。そのほか、ホテルやレストラン、カフェ、結婚式場などもあります。また、研究開発や商品開発の部門を持つ菓子メーカーに採用されるケースもあります。

 同じパティシエでも、持ち帰りが中心の洋菓子店と、その場で食べるホテルやレストランなどとでは、作る洋菓子の種類も勤務時間も異なります。お店によっては、厨房に入ってスイーツを作る以外に、販売やサービスなどの接客を行うこともあります。将来、自分のお店を持ちたい場合は、いくつかのお店で修業を積み、さまざまな仕事を覚えてから独立・開業するケースが一般的です。

 洋菓子店では早朝から仕事が始まり、その日にショーケースに並べて販売する生ケーキなど20~30種類のスイーツを、開店時間までに作ります。そして午後は、翌日以降に販売するマドレーヌやフィナンシェなどの焼き菓子や、ムースに使うスポンジケーキなどを作るのです。一つのお菓子をすべて一人で作るのではなく、ある人は生地作りを、別の人はクリーム作りをするといったように、一緒に働くパティシエと分業するのが一般的です。一方、カフェやレストランで働くパティシエは一日のスタートが遅く、洋菓子店ほどたくさんの種類は作りません。お皿に載せてお客さまに提供するスイーツのパーツを準備しておき、注文に応じ、それを見た目よく仕上げていきます。

パティシエにはどんな資質が必要?

阿部 まず、いろいろなお店のスイーツを食べることが好きで、お菓子作りを職業にしたいという気持ちを持っていることが大切です。技術的なことは経験を積めば身につくからです。

 人は疲れたとき、おいしいスイーツを食べると、幸せな気分になれます。ですから、パティシエは人を幸せにする仕事だと思います。また、スイーツはおいしさとともに、見た目の美しさも要求されます。そのため、パティシエの仕事には絵心や芸術的なセンスを生かすこともできます。ただし、自己満足ではいけません。食べてくれるお客さんを喜ばせたいという思いでお菓子を作り、それを楽しむことができるかどうかが大切です。

製菓技術学科2年生の実習作品を見学!

製菓技術学科2年生の授業は8割程度が実習で、より応用的な技術を学びます。1回の実習で作るのは3~5製品。昨年12月中旬に取材した際、実習室には2日間で製作したクリスマスケーキがずらりと並んでいました。ケーキは、各生徒が思い思いのアイデアで作ったマジパン細工でデコレーションされ、同じデザインは一つもありません。生徒一人ひとりの技術と芸術的なセンスが生かされています。阿部先生は「生徒たちの技術は実習を重ねるなかで、着実に向上していきます」と話し、教え子たちのクリスマスケーキを前に思わず笑みをこぼしました。
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