さぴあ仕事カタログ
北里大学メディカルセンター 薬剤部
薬剤師 瀬川 聖奈さん
薬は病気の治療や健康維持に欠かせず、高齢化に伴い需要の増加が見込めるため、薬剤師は今後ますます必要とされるでしょう。手に職がつく薬剤師は、女性に人気の職業で、北里大学薬学部(6年制)の学生は約7割が女性とのこと。前ページではその主な勤務場所として病院と町の薬局とがあると紹介しましたが、ここでは北里大学メディカルセンターで働く瀬川聖奈さんにお話を伺いました。
医療チームの一員として
入院患者の治療をサポート
病院内にある医薬品情報室で。この部屋には薬に関する本がたくさん並んでいます。瀬川さんも、この部屋でよく調べものをするそうです
埼玉県北本市にある北里大学メディカルセンターは、医学部や薬学部などがある北里大学と同じ運営母体が経営する病院です。その薬剤部では40人近い薬剤師が働いており、6年目の瀬川聖奈さんは、薬剤部のなかでも主に入院患者への対応をするチームに所属しています。
そんな瀬川さんは、毎朝8時ごろに出勤すると、まず自分がその日に担当する患者の情報を電子カルテで確認します。8時30分からは薬剤部のミーティングがあり、その後、担当する患者が入院している病棟へと向かいます。
午前中には毎日決まって行う業務がいくつかあるそうです。入院してきた患者との初回面談で、患者の持参薬を確認するのもその一つ。「その薬が、どこの病院で処方されたもので、どのような目的で服用して、いつ飲むのかといったことを確認して医師に報告します」と、瀬川さんは説明します。
さらに、退院する患者への服薬指導や、「翌日内服確認」という仕事も午前中に行います。
「入院患者さんが服用する薬は、看護師が朝・昼・夕・就寝前に分けて1週間分セットするのですが、薬の使い方やセット内容が間違っていないか、飲み合わせに問題がないかなど、毎日、翌日の分について確認するのが、『翌日内服確認』という仕事です」
午後は、患者と対面で服薬指導をしたり、緊急入院してきた患者の対応をしたりします。また、医師や看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士といったさまざまな職種の医療スタッフがチームをつくり、治療方針や薬物治療上の問題点などについて話し合うカンファレンスにも参加します。瀬川さんが担当している病棟では、糖尿病カンファレンスが週1回あるそうです。
「今は手際が良くなったので、夕方5時30分から6時には仕事を終えられますが、新人のころは終電の時間までかかってしまったこともありました」と言う瀬川さん。勤務は月曜日から金曜日までの週5日で、土日は休みというのが基本です。ただし、病院なので、夜間・救急外来を受診された患者に対応するための当直や、休日出勤も月1〜2回ずつあるそうです。
患者や医師とかかわり
役に立てることが喜びに
薬は種類や量を間違えると、害になることがあるので大変です。そのため瀬川さんは、仕事をするときは、小さな見落としもしないように心がけているそうです。また、瀬川さんのような病院勤務の薬剤師は、医師や看護師と連携して仕事を進め、患者とかかわる機会も多いため、しっかりとしたコミュニケーションを大切にしているとのこと。仕事のやりがいも、そこにあります。
「患者さんと話して、『薬剤師から説明が聞けて安心できました』と言われたときは、とてもうれしいです。また、医師の先生から『教えてくれて、ありがとう』と言われたときや、患者さんの薬物治療について医師と話し合って、その患者さんが回復されたときなどは、とてもやりがいを感じます」と、瀬川さんは笑顔を見せます。


病院内の薬局の奥には調剤室があり、そこで調剤を行います。錠剤、カプセル剤などの飲み薬は、なんと約700種類もあり、種類ごとに分類して棚に収められています(右)。粉状の薬は正確に重さを量ります。このほか調剤室には、モルヒネなど医療用麻薬を保管するための金庫や、薬を冷蔵保管するための冷蔵庫などもあります(左)
国家資格を持っていても
学び続けることが必要
小学生時代は苦手だった理系科目が、獨協埼玉中学高等学校に進学してから得意になったという瀬川さん。高校生のころは、理科のなかでも特に化学が好きになったそうです。また、女性は資格を持っていたほうが、仕事をするうえでは強みになるというのが、ご両親の意見だったと言います。そこで、好きな化学を生かし、資格が取れて、人の役に立てる薬剤師をめざし、高校を卒業後、北里大学の薬学部に進学しました。
そんな瀬川さんですが、大学の薬学部では覚えることが多くて苦労したと言います。「中高時代の理数系科目は、公式を頭に入れておけば自分の力でなんとか答えを出していけるところが魅力でしたが、大学での学問はある程度覚えないと、その先を考えることができません。そのため、とにかく覚えなければならないことが多くて苦労しました」と、振り返ります。
2016年に大学を卒業し、薬剤師国家試験に合格した瀬川さんは、同年4月に北里大学メディカルセンターに就職しました。
「自分には物を相手にする仕事よりも、人と対面してコミュニケーションを取る仕事のほうが向いていると思ったので、病院勤務の薬剤師になることは、学生時代から決めていました」
また、大学5年生のとき、卒業研究のために北里大学メディカルセンターの研究室で薬剤師の仕事を体験しましたが、そのときお世話になったあこがれの先輩と一緒に働きたいと思ったことも、就職先として選択した大きな理由でした。
今後の目標について、「集中治療領域に興味があるので、その知識を深めたいです」と話す瀬川さん。薬に関する情報は、毎日、新しいものが入ってくるので、薬剤師は自分の知識が古くならないように、常に学び続けなければなりません。瀬川さんも、新しい医薬品の情報収集のために、夜まで残って文献を探したり、英語の論文を読んだりするそうです。そういう大変さもある仕事ですが、「勉強したことが、患者さんの治療に役立つのであれば」と、思いを語ってくれました。


点滴薬や注射薬には、使用する患者の名前と薬剤名を書いたラベルを貼ります(右)。糖尿病の患者のなかには、日常的に自分でインスリン注射をしなければならない人もいます。そのやり方を説明するのも薬剤師の仕事であり、病院内には患者に説明するときに使う専用の部屋も設けられています(左)
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