受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ仕事カタログ

「教師」 ってどんな 仕事をするんですか?

◎回答者
都内公立小学校教諭/東京学芸大学 教職大学院
総合教育実践プログラム 在学 佐藤 由佳さん

 前のページでは、先生の仕事や、なる方法などについて紹介しました。ここでは実際に都内の公立小学校で教えている佐藤由佳さんに登場していただきましょう。先生になって13年になる佐藤さんは、これまでに全学年の担任を経験したそうです。日々どんなことを心がけながら、子どもたちと向き合っているのでしょうか。

大切にしているのは
子どもたちとの信頼関係

「小学校の先生はとても楽しい職業です。忙しいですが、子どもたちからエネルギーをもらい、自分も元気になれます」と話す佐藤由佳さん。子ども一人ひとりのキラリと光るところを見つけて、ほめることを大切にしています

 小学校の先生の朝は早く、子どもたちより30分以上前に登校するケースがほとんど。その日に使う教材などを用意してから、校門や玄関、教室で子どもたちを出迎えます。1時間目が始まる前の短い時間で宿題や連絡帳を集め、欠席者の確認などを行います。佐藤由佳さんの場合、さらに本の読み聞かせをすることもあるそうです。

 学校では、時には子ども同士がけんかになり、先生が間に入ることもあります。休み時間などを利用して、当人たちから話を聞きますが、「どちらの一方が悪いと決めつけないで、なぜそうしたのか、両者の言い分をしっかり聞くことを大切にしています」と佐藤さん。そのようにして、子どもたちが先生と本音で話せるように信頼関係を築いていきます。なかには、自分からは先生に話しかけてこない子どももいるので、その日の振り返りノートを全員に書いてもらい、子どもたちが思っていることを知る機会を作っています。

 放課後は、その返事書きやテストの採点、翌日の授業の準備をします。授業の準備をする際は、前回の授業で子どもたちがどんな反応をしたかを思い返し、それを参考に、進め方や問いかけなどを考えるそうです。

先生によっては、クラス全員の家庭に配布する学級通信を書くことも。佐藤さんは週に1度のペースで書き、受け持ったクラスによって「ハイタッチ」「ナイスファイト」などとタイトルを変えています。遠足や運動会といった行事での出来事のほか、学校での児童の様子も書いて保護者に知らせます

子どもたちの成長を
間近で見られるのが幸せ

 先生たちは、子どもたちに勉強を教えるほかに、学校内の仕事も役割分担を決めて受け持っています。たとえば、集会や委員会などを担当する「特別活動部」、児童が学校でのルールやマナーを大切にして楽しく過ごせるようにする「生活指導部」、教科書に関する届出などを行う「教務部」などがあり、佐藤さんは先生たちの校内研修を担う「研究部」を担当しています。そうした仕事は、放課後のほか、受け持ちのクラスが音楽や図工といった、専科の先生による授業を受けている時間に行うことも多いそうです。

 また、学期単位で行う仕事として、通知表の作成があります。公平に評価し、コメントを書き、間違いがないように何度もチェックしますが、そうした仕事は通知表を渡す日に間に合うように逆算して、計画的に行うのが大事です。そして年度末には、通知表をもとに子ども一人ひとりの「指導要録」を作成。これは、各家庭に渡されることはありませんが、1年間の学びの記録として学校にずっと保管されます。

 このように、子どもたちの見えないところでも、先生は多くの仕事をしています。そのため、「学校の先生には、いつまでに何をやるか、時間の見通しを立てて、いろいろなことを同時に進行できる力が必要です」と、佐藤さんは話します。

 常に時間が足りないのが、先生という職業の大変さ。その一方で「子どもたちが日々成長していく姿を間近で見られるのは、何物にも代え難い喜びです」と、佐藤さんは笑顔を見せます。

週に1度、1週間分の授業計画(週案)を立ててノートに書き込み、管理職の先生に提出します。この週案は、全クラスの授業の進度を合わせたり、経験の浅い先生が授業計画の立て方を学んだりするのに役立てられます

佐藤さんが先生になって初めて受け持ったクラス(1年生)で、「くじらぐも」を取り扱った国語の授業風景

小学校の先生は
いろいろな経験が役立つ仕事

小学校の先生が黒板に書く文字はとてもきれいです。文字を正しく学ばなければならない小学生が見るので、文字を崩さず、省略せず、正しい筆順で書くことを、すべての先生が心がけています。黒板に書いてくれたことばは、佐藤さんから皆さんへのメッセージです

 小学校の先生になりたいと思い始めたのは、小学生のころだったと言う佐藤さん。勉強だけでなく、絵を描いたりエレクトーンを弾いたりするのが好きだったので、小学校の先生になれば、そうしたいろいろなことが生かせると思ったそうです。そのため、大学では教職課程を選択し、塾でアルバイトも経験。しかし、佐藤さんが進学した大学で取得できるのは、中学校・高等学校の先生になれる免許状でした。そこで、大学ではまず中学校・高等学校の数学と、高等学校の情報の先生になれる免許状を取得。4年生のときには文部科学省が行う「小学校教員資格認定試験」を受けて、小学校の先生になれる免許状を取りました。

 その後1年間は、障害を持つ子どもたちのための施設に勤務し、翌年、東京都の教員採用試験を受けて合格。少し回り道をして小学校の先生になった佐藤さんですが、「学生時代にした短期留学やボランティア活動を含め、これまでのさまざまな経験が教師の仕事に役立っています」と振り返ります。

 2021年度は1年間の出張という扱いで、東京学芸大学の教職大学院で研究活動をしているとのこと。どんな目的の研究なのでしょうか。

 「子どもたちがもっと自分らしさを発揮して学べるよう、先生たちがチームで協力しながら、よりよく働ける組織にするための研究です」

 来年度には小学校の先生に戻り、研究で得た成果を仕事に生かしていきたいそうです。将来、先生になりたいと思う小学生には、「社会に関心を持ち、答えが決まっていない道徳的な問題についても考えるようにしてください。そして、読書をしてくださいね」と、アドバイスをくれました。

「第62回 教師」:
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