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さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ仕事カタログ

第64回 全国通訳案内士

イメージ画像 訪日外国人のツアーに同行し、日本各地を案内する通訳ガイド。その国家資格があることを知っていますか。それが「全国通訳案内士」です。今回は、全国通訳案内士の団体である日本観光通訳協会を訪ね、スペイン語・ポルトガル語・英語の全国通訳案内士として活躍する萩村昌代さんに、仕事内容や資格試験について伺いました。 イメージ画像

全国通訳案内士は
どんな仕事をしているの?

一般社団法人
日本観光通訳協会 前会長

全国通訳案内士
萩村 昌代 さん

スペイン語・ポルトガル語・英語の3言語での全国通訳案内士の資格を持っている萩村昌代さん。漢字クイズで外国人のお客さまを楽しませることもあります

 日本に来る外国人は、たとえば東京スカイツリー®や鎌倉の大仏、京都の清水寺といった観光地を訪れる方が多いでしょう。その際、わたしたちは日本語や日本の習慣がわからない方々のために通訳ガイドとして同行して、相手が理解できる外国語で観光地などを案内します。これが全国通訳案内士の仕事。小学生の皆さんにわかりやすく言うならば、外国語版のバスガイドと、修学旅行の引率の先生を合わせたような仕事です。

 お客さまは個人や家族連れ、40人前後のグループまでさまざまです。観光地を案内するだけでなく、にぎりずし体験や茶道体験、大相撲観戦に連れて行くこともあります。「しゃぶしゃぶを食べるときは、薄く切ったお肉をお箸でつまんで“しゃぶしゃぶ”と15秒くらいお湯にくぐらせるんですよ」「温泉旅館に泊まったときは、大浴場には必ず素っ裸で大浴場に入ってください」などと、日本ならではの食事の方法やマナー、そのほかさまざまなことを、外国の方にわかりやすく説明するのもわたしたちの仕事です。時にはお客さまが忘れ物をしてしまったり、病気やけがをしてしまったりとハプニングに遭遇することも。そんなときに臨機応変に対応できる能力も、全国通訳案内士には求められます。

 お客さまのなかには観光以外の目的の方もいます。たとえば、スポーツ大会が日本で開催されるときは、選手だけではなく新聞記者といった関係者も来日するため、その人たちの移動に同行したり、試合のない日は観光案内をしたりします。そのほか、展示会や工場の見学に来るビジネスパーソン、学会に出席する医師や大学の先生、被災地の視察に来る行政関係者などの送迎・同行・通訳をすることもあります。さらに、病気やけがの治療のために訪日する外国人もいるので、医療通訳を学んでいる全国通訳案内士もいます。

全国通訳案内士の働き方は?

さっぴー 日本は外国人に人気の国。萩村さんによると、昨年、海外在住の7000人を対象に実施されたアンケート「次に海外旅行したい国」で、第1位に輝いたのが、日本だったそうです

さっぴー

 全国通訳案内士のほとんどは、フリーランス(個人事業主)です。旅行会社や高級ホテルからの依頼を受けて働くのです。通訳ガイドを派遣する人材派遣会社に登録している人もいれば、日本観光通訳協会のような団体に加入し、その団体に来る依頼を引き受けている人もいます。

 なかには、自分でホームページを作成して、外国人のお客さまから直接依頼を受ける人もいます。また、英会話の講師や翻訳家、日本語教師といった仕事と掛け持ちをしている人たちもいます。

全国通訳案内士になるには?

 全国通訳案内士という資格は、語学では唯一の国家資格です。資格を得るには、年に1回実施される試験に合格してから、都道府県に登録することが必要です。年齢・学歴・国籍に関係なく誰でも受験できますが、外国語が得意なだけでは合格できません。

 試験は筆記と面接が行われます。筆記試験は外国語・日本史・日本地理・一般常識・通訳案内の実務に関するもので、これに合格した人だけが外国語での面接試験に進めます。外国語の種類は英語・中国語・フランス語・スペイン語・ドイツ語・イタリア語・ロシア語・ポルトガル語・韓国語・タイ語で、この中から選択します。ちなみに、英語のレベルは英検®1級程度です。

 最近の合格率は9%前後という狭き門です。受験のための予備校は東京などにありますが、受験者の多い英語での合格をめざす講座が主流です。一方、独学の人も多く、日本史や日本地理は、中学や高校で使っていた教科書を用いて学ぶ人もいます。また、いったん別の仕事を経験してから挑戦する人も多く、専業主婦や定年退職された人がめざすケースもあります。

全国通訳案内士に求められる資質は?

 さまざまなことに興味があって、新しいことを学びたい人。人と会って話すのが好きで、外国語や旅行が好きな人。周りの人に気配りができて、ユーモアと体力がある人。そんな人がこの仕事に向いていると思います。

 全国通訳案内士になりたいと思った皆さんは、いろいろなことに興味を持ってください。わたしは小さいころから書道を習っていたので、案内したお客さまへのプレゼントとして、筆でその方の名前を書いた和紙を差し上げることがあり、とても喜ばれます。剣道も長く習っていましたが、これは武道の説明をするときに役立ちます。このように、全国通訳案内士はいろいろな経験が役に立つ仕事です。

 また、外国とつながりがある友だちがいたら、その人の国の文化や考え方にも興味を持つようにしましょう。文化や考え方の違いを見つけると、その国の良さや、日本の魅力についてもわかると思います。そして、ぜひ外国語の学習にチャレンジしてみてください。それは英語に限りません。イタリア料理が好きな人はイタリア語、サッカーが好きな人はスペイン語、K-POPが好きな人は韓国語というように、自分の興味があることに関係の深い外国語なら、楽しく学べると思いますよ。

※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。

外国人が日本に来て驚くことタイトル

外国人が日本に来て驚くことイラスト 外国の方を案内していると、日本では当たり前の習慣に驚かれることが多いです。たとえば、多くの外国では水道水をそのまま飲むことはできないため、日本で水道水が飲めることにびっくりされます。
 また日本の小学生は、自分たちで学校の教室や廊下の掃除をしていること、夏休みはラジオ体操や宿題で忙しいことなども、外国から見たら珍しいようです。

「第64回 全国通訳案内士」:
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