受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

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 読書は、着実に国語力がアップする方法です。また、「さぴあ作文コンクール」のような機会を通じて読書感想文を書くことも良いトレーニングになります。そこで今回は、渋谷校校舎責任者の安酸誠司先生に、読書や感想文を書くことの効用と注意点などについてお聞きしました。

第79回 「『読書』『読書感想文を書くこと』の効用と注意点」回答者/渋谷校校舎責任者・安酸 誠司先生

さまざまな視点から物事をとらえる読書は、 豊かな社会性を育むことにつながる

 読書には他のものには代えがたい効用が、二つあります。一つ目は「語彙を増やす」ということです。ある未知のことばが一つの文脈の中でどのように使われ、どのような印象を引き起こすのか、読書は新しい語彙について、その用い方も含めた実感を与えてくれます。そして、ことばを知ることで、身近な現象をより詳細に理解し、人の複雑な内面を適切に表現することが、少しずつ可能となっていきます。学年を重ねるにつれ、物事に対する深い理解と洞察力が求められますが、読書はその深みへと対応できる十分なことばを用意し、その身についた語彙によって“その人らしさ”を形作っていきます。
 読書にはさらに「視野を広げる」という効用もあります。この二つ目の効用には、多くの意味が含まれています。たとえば読書は、日常とは異なる非現実を、ある程度の実感を伴って間接的に体験させてくれます。また、登場人物や作者が感じ取ったさまざまな思いも、身近なものとして共有できます。読書を進めるなかで、「登場人物は○○って考えているけど、自分は△△だと思う」というような、他者との価値観の違いを知る機会にもなります。描かれている出来事に対して、主観的に当事者の立場から反応したり、客観的に第三者の立場からとらえたりすることで、物事を異なる視点から判断できる柔軟性が育まれ、豊かな社会性を身につけるうえで貴重な体験にもなります。
 それでは、どのような本を読めばよいのでしょうか。結論から言えば、お子さんが興味・関心を持っているものであれば、自分らしさを広げるうえで良い材料にできるものであれば、それで構いません。注意すべきことは、興味・関心の幅を広げるために、そこからつながっていく他の部分へ目を向けさせるという点です。同じ作者が書いた別の作品、同一のテーマを扱っている参考図書、その作品を扱っている出版社などを切り口にして、読みたい本を探すことも広く読書の楽しみの一つだといえます。一冊を読み終えたら、一緒に書店や図書館へ出向いて、次に出合うべき本を見つけること。このような、楽しく読書を続けられるためのかかわりを、保護者の方にお願いできればと思います。

「相手に伝わるように書く」という作業を通じて、 「語彙の必要性」を実感できる

 次に、読書感想文を書く際の注意点や、その効果について説明します。これからの時期、夏休みの課題で読書感想文を書く機会があります。また、「さぴあ作文コンクール」に挑戦しようと考えているお子さんも少なくないと思います。まず気をつけたいことは、単にあらすじを書いて満足してしまわないという点です。感想文で大切なのは、本の内容を自分がどのように受け止めたのか、それをきちんと表現することです。あらすじは、自分が感じたことを説明するうえで、いかに心へ響いたかを書き表すための、あくまで“添え物”です。本の内容を踏まえながら、なぜそのように感じたのか、その理由を掘り下げて考えていくことが、あるべき“感想”文としての書き方です。
 このような感想文を書くことは、記述力や学習意欲の向上にもつながります。自分の思いを正確に伝えるにはどうすればいいのか、他人の目を意識して汗をかくことで、書くことへの工夫も生まれます。この書くという作業のなかで、自分の心の中で生じた“雑然とした思い”を整理することもできます。書き終えてうまく整理できた達成感だけでなく、何か言い足りない不十分さを自覚することもあるでしょう。しかし、そのような思いはお子さんに、表現手段として「語彙の必要性」を痛感させる機会となるはずです。その積み重ねが、確かな記述力・自己表現力を培っていくのです。保護者の方が目を通す場合、書き終わった感想文に、わかりづらいところや誤解を招きやすいところがあれば、きちんと伝えてください。「他人の目を通すと、そのように読めてしまうんだ」という感覚は、書くうえで忘れてはならない視点です。そして、その後では、「こういうところが良かったね」ということばも忘れないでください。書き手が臆病になり過ぎては、実りある記述は生まれません。

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