受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

子育てインタビュー

17年6月号 子育てインタビュー目次:
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NPO法人CANVAS理事長が提唱する“新しい学びの場”

石戸 奈々子さん

(いしど ななこ)東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員を経て、子ども向け創造・表現活動を推進する NPO「CANVAS」を設立。これまでに開催したワークショップは 3000回、約35万人の子どもたちが参加。実行委員長を務める子ども創作活動の博覧会「ワークショップコレクション」は、2日間で10万人を動員する。その後、株式会社デジタルえほんを立ち上げ、えほんアプリを制作中。総務省情報通信審議会委員、デジタル教科書教材協議会理事などを兼務。著書に『子どもの創造力スイッチ!遊びと学びのひみつ基地 CANVASの実践』(フィルムアート社)、『デジタル教育宣言 スマホで遊ぶ子ども、学ぶ子どもの未来』(KADOKAWA/中経出版)など。

ITを通して身につけたい
「生涯学び続けていく力」

グローバル化、情報化する社会に
対応した「学びの場」を提供

―石戸さんはCANVASというNPO法人の理事長でいらっしゃいます。どのような団体なのか、教えてください。

石戸 CANVASは、「子どもたちの主体的で協調的で創造的な学びの場を推進する」という活動を、産・学・官(産業界、研究機関、行政)と協力しながら推進する団体です。

 近年、生活環境が大きく変わり、学びの在り方についても見直しを迫られています。教室で生徒が前を向いて座り、教師の説明をただひたすら聞く。そうした昔ながらの学びは、均一化された知識や技術を身につけた人材が求められる、これまでの社会では有効だったかもしれません。しかし、今やIT(情報技術)の発達により、知識はインターネットを通じて誰もが簡単に手に入れられるようになりました。知識を暗記して頭に蓄えることの重要度が相対的に低くなってきたのです。また、国際化が進み、人や物、情報が国境を越えて自由に行き交うようにもなりました。

 これからの時代に求められるのは、さまざまな文化的背景を持つ人と協力し合いながら、新しい価値を創り上げていく、創造力やコミュニケーション能力を身につけた人材です。CANVASは、そうした力を獲得するための学びの場を提案、提供したいと考えています。

―具体的には、どのような活動を展開されているのですか。

石戸 子どもたちが協力し合いながら何かを創り上げるワークショップ(参加・体験型の講座)などを実施しています。「コンピューターを使わずに学ぶプログラミング」「パリと東京の子どもたちが携帯で撮影した写真を交換して、4コママンガを作る」「クレイアニメーションを作る」といった企画を、これまで延べ3000回実施し、そこには35万人の子どもが参加しました。子どもによって興味の対象は違いますから、なるべく多くの選択肢を提供したいと考えています。

―それには、多くのスタッフが必要になりますね。

石戸 常勤職員のほか、協力してくださる方が全国に300〜400人いらっしゃいます。その方たちと直接に顔を突き合わせて、あるいはITを使って、世代や領域、場所を超えてコミュニケーションを取り合いながら、活動を進めています。

―CANVASの理事長のほか、2011年に設立された株式会社デジタルえほんの代表取締役社長も務めていらっしゃいますね。

石戸 教育の世界では批判的な意見もあるITですが、デジタルならではの良質なコンテンツもたくさんあります。教材になるようなソフトウエアを開発したり、すばらしい作品を発掘・紹介したりするための「デジタルえほんアワード」を開催するなどして、教育の場の情報化を働きかけています。

子どもの持っている力が
人と人をつなぎ、ネットワークを築く

―石戸さんは東京大学を卒業後、MIT(マサチューセッツ工科大)メディアラボの客員研究員を経て、すぐにCANVASを設立されました。そのいきさつを教えてください。

石戸 わたしはもともと宇宙にかかわる仕事がしたくて、航空宇宙工学科のある東京大学工学部に進学しました。ところが、大学の授業でMITのメディアラボの存在を知って、その考えが変わったのです。

 メディアラボは、主に表現とコミュニケーションに利用されるデジタル技術を専門としている研究室です。これまで、タッチスクリーンやウエアラブル機器など、わたしたちの生活を変えるような研究開発を行ってきました。未知の分野を対象にするという意味では、宇宙の研究もメディアラボの研究も共通しています。ただ、宇宙の研究は「今ある世界」が対象であるのに対し、メディアラボでは「新しい世界を創り出す」ことを目標にしています。社会に直接働きかける研究ができるという点に大きな魅力を感じ、メディアラボをめざすことにしたのです。

―大学卒業後、メディアラボに客員研究員として参加され、どのような印象を受けましたか。

石戸 日本とはまったく異なる学びの環境に衝撃を受けました。オープンでデザイン性に優れた空間が用意され、世界中から第一線で活躍している人材が集まっています。非常識なことに挑戦するスピリットが賞賛され、「Demo or Die(見せられなければ意味がない)」という精神の下、ひらめいたものをすぐに具現化できる環境が整っていました。机上の空論だけではだめで、社会に働きかけることが大切だというわけです。

―そうしたなかで、CANVASの構想が練られていったのですね。

石戸 メディアラボで教えてもらって、座右の銘ともなっているのが「Imagine & Realize(想像と創造)」ということばです。わたしは、子どもたちが想像したり、創造できたりする環境を整えたいと考えました。

 そして、世界中の教育環境を見て回り、なかでもワークショップなどのように五感を使って参加する学びの在り方に感銘を受け、日本で実践していきたいと考えたのです。このミッションを実現するためには継続的な活動が必要になるので、それに最も適したNPO法人という形の組織を立ち上げることにしたのです。

子どものためのワークショップの博覧会「ワークショップコレクション」の様子。 写真提供:©CANVAS

―新しい試みを実践していくに当たって、苦労はありましたか。

石戸 2002年の設立当初は、ワークショップということば自体があまり知られておらず、「ワークショップって、何の店?」「創造性を伸ばすって、アーティストでも育てるつもり?」といった質問をよく頂きました。それに対して、「参加型のプログラムですよ」「創造性というのは、どんな仕事に就くうえでも必要とされるものです」といった説明をしながら、地域の学童クラブのスペースを借りるなどして徐々に活動の場を広げていきました。そうした地道な努力の積み重ねが土台となり、子どもの持っている力が人と人とをつなげ、ネットワークができていったのです。

17年6月号 子育てインタビュー目次:
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