受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ職場見聞録

第15回/地図制作会社:
1|

さぴあ職場見聞録 第15回/地図制作会社

 地図はわたしたちの生活に欠かせないものです。学校の授業で使う地図帳のほかにも、観光マップやスマートフォン(スマホ)の地図アプリ、個人宅の表札名や店舗名などが1軒ずつ書き込まれた住宅地図、ドライブの目的地まで案内してくれるカーナビゲーション(カーナビ)の地図などいろいろなものがあります。これらの地図はどのように作られているのでしょうか。日本最大手の地図制作会社である株式会社ゼンリンを訪ね、広報室の山口朋希さんにお聞きしました。

調査員が全国各地をくまなく歩き
集めた情報を基に、さまざまな地図を作る

住宅地図の基本となる地図データはすべて、全国の調査員が「足で歩いて、目で見て、手で書く」現地調査で収集。カーナビに使う地図情報の収集でも、交差点をあらゆる角度からデジタルカメラで撮影するなど、正確な地図を作るためには徒歩調査が欠かせません 

人々の生活で利用される 全国の「住宅地図」を制作

株式会社ゼンリン
広報室
山口 朋希さん株式会社ゼンリン
広報室
山口 朋希さん

 地図制作会社は日本に数社ありますが、そのなかでもゼンリンは、全国の「住宅地図」を制作している唯一の会社です。住宅地図には、建物名や信号・交差点の名称から、一方通行などの道路交通情報までが詳しく載っており、都市によっては地下鉄の駅構内や地下街の情報も盛り込まれています。そのため、配達・運送業務のほか、不動産の物件管理や、自治体・官公庁の住民サービス、Web地図サービス、カーナビのデータなどに利用され、わたしたちにとって身近なものとなっています。

 住宅地図の基本となるデータはすべて、全国約70か所の拠点にいる約1000名の調査員が現地を調査して集めたものです。調査エリアは都市部だけでなく、郊外や山間部にまでおよび、時には厳しい天候のなかで調査を行うこともあります。調査員が新たな情報を記入し終えた調査用地図は、すべて福岡県にある北九州本社のオペレーターの手に渡ります。オペレーターはデータ編集ソフトと「デジタイザー」という機械を使い、調査員が紙の地図に書き込んだ情報を一つずつパソコンの画面に反映させ、住宅地図のデータベースを作ります。

さまざまな地図情報をレイヤー構造で表現


地図データベースは、市区町村の境界や都道府県境を分ける「行政界」、建物の形を描いた「家形(かけい)」、さらに「道路」「等高線」「水域」など、データの属性で分類されたレイヤー(階層)構造になっています。たとえば、道路データのレイヤーには「一般道」「国道」「高速道路」などがあります。このように、データの種類によって細かく分かれているため、レイヤーの数は約1000にも上ります。そのなかから用途や目的に合わせて必要なレイヤーを選び、それらを組み合わせることで、さまざまな地図ができるのです。ちなみに、住宅地図帳は約400のレイヤーを組み合わせて作られています

地形図や都市計画図をもとに 独自調査の情報を加えて制作

宅配便や不動産の業者をはじめ、警察署や消防署なども利用している住宅地図は、黒と赤の2色で表現されています。コンビニエンスストアのコピー機でエリアごとに印刷できるサービスもあります

 ゼンリンでは地図を制作するスタッフのほか、地図製品を売る営業職、地図を使った新しいビジネスを企画する人、経理・総務・人事などの事務職も活躍しています。また、スマホやタブレットなど、使用する端末に適した地図の表現方法を研究・開発する人もいます。

 ところで、皆さんは住宅地図をはじめ、ふだんわたしたちが使っている地図の“土台”となる地図を知っていますか? それは「2万5000分の1地形図」や「都市計画図」、「白図(はくず)」などです。「2万5000分の1地形図」は、国土交通省の「特別の機関」である国土地理院が、日本の位置(緯度・経度)や地点の高さ(標高)を測量して作ります。一方、各市区町村が作る「都市計画図」や「白図」は、道路や建物の形などが描かれています。

 ゼンリンのような民間の地図制作会社は、これらの地図を使う承認を受けたうえで、それらに独自調査によって収集した新たな情報を重ねます。こうして住宅地図やカーナビ用地図など、さまざまな用途の製品ができるのです。

車両調査


カーナビ用の地図情報の調査には、最先端の技術を駆使した計測車両を使います。写真(上)の「高精度計測車両」には、360度のフルカラー画像が撮影できる「全方位カメラ」、距離などのデータを取得する「レーザースキャナー」、緯度・経度のデータを取得する「モービルマッピングシステム」を搭載。距離のデータはタイヤの回転数で取得し、「今、上っている坂道の角度はどのくらいか」「次に曲がるカーブはどれくらい急か」といった情報を取得できる高性能の機器も搭載しています。一方、写真(下)の「細道路計測車両」は、「自動車が通れる道幅が十分にあるか」「一方通行か、相互通行が可能な道路か」など、カーナビに必要な情報を集めるための車です

カーナビや地図アプリなど さまざまな形態で地図情報を提供

 かつて地図はすべて紙に印刷されていましたが、ゼンリンは1984年に地図のデータベース化に成功しました。以来、コンピューターでの地図制作が可能となり、電子地図やカーナビ、スマホの地図アプリなどに地図情報を提供できるようになったのです。

 では、近未来の地図はどうなるのでしょうか。すでに始まっているのが、車の自動運転を支援する「ADAS(Advanced Driving Assistant System)」に使う地図情報の研究・開発です。「今後はドローン用の地図の需要が高まるでしょう。従来の地図は平面の情報ですが、空を飛ぶドローンには建物の高さなど3D(3次元)情報を含む空間地図が必要です」と山口さんは話します。この9月にはドローン事業推進課という部署ができたそうです。

 最後に、子どものころから地理や地図が大好きだったという山口さんに、地図を楽しむ方法を教えてもらいました。

 「地形と地名の関連を調べるとおもしろいですよ。渋谷や四谷など『谷』がつく地名は、実際に谷であることが地形図を見るとわかります。また、大きめの地図で広いエリアを見ると、『電車で移動すると遠回りだけれど、直線距離では意外と近い場所』も発見できます」

住宅地図データベースの更新サイクル


住宅地図に載っている情報は、どのくらいの頻度で更新されるのでしょうか。都市部は店などの入れ替わりが頻繁にあるので、少なくとも1年に1度は新しい情報に更新されます。一方、地方の過疎地や島しょ部は5年に1度、それ以外の地域のほとんどは2〜3年に1度の更新です

ゼンリンの地図


ゼンリンでは住宅地図のほかにも、さまざまな地図製品を販売しています。住宅地図の上に、法務局(登記所)に備え付けの地図や都市計画情報を重ね合わせた「ブルーマップ(住居表示地番対照住宅地図)」は、不動産会社の必需品です。自治体などからの依頼により、防災マップなどのオーダーメイド地図も作っています。また、日本を訪れる外国人向けの「多言語地図」は英語・韓国語・中国語・タイ語で表示し、観光マップなどに利用されています。このほか、地図をデザインしたおしゃれな文房具もあります

第15回/地図制作会社:
1|

ページトップ このページTopへ