受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

この人に聞く

17年4月号 この人に聞く
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『中学への算数』の編集長に聞く算数の入試問題から見る、
今、求められている力とは

條 秀彰さん

【出席者】向かって左より

立見 貴光
サピックス小学部
算数科教科責任者
中井 淳三さん
『中学への算数』(東京出版)
前・編集長
條 秀彰さん
『中学への算数』(東京出版)
新・編集長
広野 雅明
サピックス
教育情報センター部長

 1994年の準備号からスタートした『中学への算数』(東京出版)は、中学受験に欠かせない算数の各分野の良問を掲載した、受験生向けの月刊誌です。レベルに合わせた演習問題などのほか、有名中学の算数の入試問題も、ていねいな解説とともに数多く掲載されています。そこで、今回は新しく編集長となった條秀彰さんと、前編集長の中井淳三さんのお二人に、算数の入試問題の昨今の出題傾向などについてお聞きしました。

純粋に難問に挑戦しようという 〝算数大好き少年少女〟が減っている

條 秀彰さん
『中学への算数』(東京出版) 新・編集長
條 秀彰さん

広野 本日はいろいろお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。『中学への算数』は、全国各地の中学校の、最新でレベルの高い入試問題が解説とともに掲載されており、わたしたちも授業の参考にさせていただいています。誌面作りではどういうところに気をつけているのですか。

 算数は具体的な数や図形を題材とする教科なので、条件を整理するために新たな図表を用いるなどして、わかりやすく解説することを心がけています。

広野 掲載されている問題もそうですが、解き方も新しいものが多いですね。解説もていねいなので、難関校をめざす受験生だけでなく、算数があまり得意ではない子どもでも取り組みやすいように思います。

中井 東京出版は1957(昭和32)年の『大学への数学』から始まりました。「上位5%層」の学生を対象に、数学のおもしろさを伝えたいという趣旨だったと聞いています。良問を通じて数学や算数の魅力を伝えるという基本的な考え方は、『高校への数学』や『中学への算数』でも同じです。

立見 わたしも授業の参考にさせていただいています。最近、少し心配していることは、以前であれば、『中学への算数』で掲載されているような難しい問題を出すと、目を輝かせて取り組む生徒がたくさんいたのですが、最近は、一見して難しそうな問題に立ち向かって、解いてやろうという気構えの生徒が少なくなってきていることです。

 同感です。本誌では巻末にチャレンジ問題を掲載して、学力コンテストを実施しているのですが、やはり応募者が減少する傾向にあります。時間無制限でじっくり取り組もうという子どもが減ってきているのでしょう。算数のおもしろさがより伝わるような誌面を作っていかなければならないと強く思います。

立体感覚が問われるような 複雑な切り方の問題が増えてきた

サピックス小学部教育情報センター部長広野 雅明
サピックス小学部
教育情報センター部長
広野 雅明

広野 入試問題は、「こういう生徒に来てほしい」という学校側の思いの表れでもあるので、そこには個性が出ます。これまでで、印象に残っている問題はありますか。

中井 本誌の創刊間もないころの先進的な問題として、灘中とラ・サール中の問題が印象に残っています。灘は速さの問題で、3台の車が走っていて1台がほかの2台の真ん中に来る時を問う問題です。連立方程式を使えば難しくはありませんが、算数で解くのは非常に難しい。われわれが「シャドー」と呼ぶ、条件に合わせた架空の動きをイメージする解き方が生まれるきっかけになった問題です。

 ラ・サールは、四角形、五角形、六角形を三角形に分割する方法がそれぞれ何通りあるかを問う場合の数の問題で、こちらは今でも類題が出ますが、図形の形で出た最初だと思います。

 ほかにも難問としては、同じく灘の問題で、斜めの円柱の一部分を通過する立体の体積を求めるものは非常に難しかったです。ここ数年は洛南高等学校附属中が、立体の超難問を出題しています。

 洛南の問題は、中学入試の立体図形は、ここまで進化したのかと思わずにはいられませんでした。

広野 かなり前にも麻布中が、直方体を二つ並べて共通部分で正八面体を作る問題を出したことがありましたね。

中井 共通部分はどこの面上でもなく内部になる立体なので、想像するのは難しかったはずです。「対称面で切ってその様子をベースに考える」と当時の解説に書いたような記憶がありますが、そこに着目できないと正答はまず無理でしょう。

立見 今は立体の切断や重なりは塾の教材にもたくさんありますが、初めて目にした受験生には難しかったでしょうね。立体のまま考えず、真上から見るとかスライスして考えるとか、解法の切り口をいかに見つけるかがポイントです。

 立体で個人的に好きな問題としては、同じく麻布の四面体の体積比で、そのまま折ったときと、組み替えて折ったときの体積比を求めなさいという問題。結局、3辺の積の比になるのですが、それをイメージできるかが問われました。本誌でも発展演習の最後の1題は超難問を置くことが多く、そういう問題を入試でも出題してほしいという気持ちがあります。もっとも学校側には、試験時間に見合った問題をという思いもあるのですが。

中井 以前は単純に立方体を斜めに切るところまでだったのが、複数回切ったり、さらに四面体も切ったりと、どんどん複雑になっています。

立見 2011年に学習指導要領が改訂され、立体の問題を出す学校が増えてきた感じがします。昔は男子校の一部の難関校だけだったのが、ここ数年は女子校、共学校を含めて意欲的に出題されるようになっています。

広野 中学では、展開図から正多面体を実際に作らせたり、竹ひごなどで立体を組み立てさせたりする宿題や授業があるようです。頭だけで理解するのではなく、実際に作ってみることが立体感覚を養ううえで大事だということなのでしょうね。

 そう思います。本誌の後ろに、厚紙の展開図を付けているのも、実際に作ってみることが立体を理解するには有効だと考えているからです。

17年4月号 この人に聞く
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