受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

この人に聞く

17年5月号 この人に聞く
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これからの医学教育はどう変わるのか?新時代の医学部が誕生
次世代に求められる医師の資質とは

 「首都圏では最後」ともいわれる医学部新設が、今年4月、国際医療福祉大学(成田キャンパス)で実現しました。国際化や高齢化が進み、日本を取り巻く環境が大きく変化していくなか、次世代の医師を育成する新しい医学教育に注目が集まっています。これから、医師として求められる資質はどのように変わっていくのでしょうか。また、医学部をめざす小学生やその保護者が今から準備できることはあるのでしょうか。設立準備に携わってこられた吉田素文教授に伺いました。

国際医療福祉大学医学部 副医学部長・医学科長
吉田 素文 教授

「7人に1人が留学生」という
国際色豊かな学習環境を実現

サピックス小学部教育情報センター部長広野 雅明
サピックス小学部
教育情報センター部長
広野 雅明

広野 中学受験の目的が「医学部に進学するため」というケースも少なくないなか、今回の貴学の医学部新設のニュースは、中高一貫校をめざす小学生やその保護者の方々からも高い関心を集めています。これからは国際化や高齢化が進み、日本を取り巻く環境が大きく変化していくわけですが、そうした時代における新しい医学部のコンセプトと、貴学がめざす医師像について教えてください。

吉田 本学の医学部の大きな特徴は、「グローバルスタンダードに対応した、国際性豊かな医学教育モデルを展開する」という点です。その6年間の教育を経て、「高度で総合的な診療能力を身につけた、国の内外で活躍できる医師」を育成したいと考えています。

 卒業生のイメージをさらに詳しく表したものが、本学部の「卒業認定・学位授与の方針」、すなわちディプロマポリシーです。

広野 貴学ならではの特徴は、どの部分になりますか。

吉田 2番目の「医療の国際化に対応した幅広い知識と高いコミュニケーション能力を持ち、海外の医療現場で活躍できる」という点ですね。それを実現するため、本学部では、「学生の7人に1人が留学生」という国際的な学習環境を用意しています。留学生を受け入れている医学部はたくさんありますが、1学年140人中20人が外国籍の留学生という国際色豊かな環境は、国内の他大学の医学部にはないと思います。

広野 どういった国からの留学生が多いのでしょうか。

吉田 東南アジアが主体です。今回の医学部新設計画は、成田市と共同で「国際医療学園都市構想」を提案し、国家戦略特区の事業として政府に認められたものですが、その際の設立目標が、「ASEANの国々の医療水準を上げること」でした。ASEAN諸国から患者さんを受け入れたり、こちらから医療資源を流通させたりすることによって、現地の医療システムをレベルアップさせるのが目的なので、受け入れる学生もASEAN諸国が中心となります。

広野 留学生は語学力はもちろん、学力レベルも相当高いのではないでしょうか。

吉田 新学期に先駆けて14人の留学生に来日してもらい、日本語の勉強を始めてもらったのですが、彼らの様子を見ていると、何よりモチベーションが極めて高いように思います。

広野 日本の学生にも刺激になるのではないでしょうか。

吉田 留学生の学習姿勢をそばで見たり、母国の医療の状況について話を聞いたりして、日本の学生もたくさん刺激を受けてほしいと思っています。一方、当然ですが、留学生は日本語が苦手です。日本の学生と留学生との間で、お互いの足りないところを補い合えるような環境になればよいと思います。

広野 日本人と留学生が一緒に授業を受けるわけですが、具体的にどのように進めていくのですか。

吉田 語学としての英語の授業はもちろんありますが、1年次の2学期以降は医学のすべての科目を英語で学びます。いわゆる「オールイングリッシュ」です。他大学の医学部も「医学英語」という授業をやっていますが、それは医療論文読解や医療英会話を学ぶためのもの。英語を使って医学専門教育を学ぶというやり方は、これまでになかった新しい試みだと思います。

国際医療福祉大学医学部の
 ディプロマポリシー
  • 医師としての使命感・倫理観など医療プロフェッショナリズムを備え、患者中心の医療を実践できる。
  • 医療の国際化に対応した幅広い知識と高いコミュニケーション能力を持ち、海外の医療現場で活躍できる。
  • 広い教養と寛容な精神を兼ね備えたうえで、医学・医療に必要なサイエンスとアートを修得し、科学的思考力を基に質の高い医療を実践できる。
  • 医療現場の多職種と協調・連携できる能力および、各職種の役割や責任体制に関する知識を身につけ、将来、医療チームの中核的な役割を担うことができる。

広野 入学前から英語の準備を相当していないと、講義についていけないということになりそうですね。

吉田 その点はあまり心配する必要はありません。英語の授業が始まる1年次の2学期までは、聞く力と話す力を強化する科目を用意しています。自由科目という設定にはしていますが、「あなたは少し力が足りないから、こっちでも勉強してくださいね」と指導して履修してもらうイメージです。

 日本の大学生の英語の能力は、入学時がいちばん高く、4年ないし6年でどんどん落ちていくといわれています。いろいろな大学がそこを改善しようとしているわけですが、本学部でも1年次の1学期は「聞く」「話す」力を徹底的に鍛え、そのうえで、2学期から本格的な英語の授業に入っていくということになります。

広野 それなら安心ですね。

吉田 とはいえ、日本の医師国家試験は日本語で行われます。日本語の専門用語も知っておかなければ試験に対応できません。このため、英語で学ぶのは2年次まで。3年次以降は日本語での授業が始まり、臨床実習、国家試験の準備をするという流れになります。

広野 新設の医学部ということもあり、どんな先生が教鞭を執られるのかも受験生の関心が高いところだと思います。

吉田 わたしもテキサス州にあるがんセンターに2年半くらい勤めていましたが、授業担当教員が英語で講義ができるかという点は採用面接の際にきちんと審査しています。スタンフォード大学の医学部で研究していた人、アメリカの医学部を出て15年ほどアメリカで医療に従事していた人、ハーバード大学の公衆衛生大学院で修士号を取得した人など、国際経験の豊富な教授陣がそろっています。授業以外のところでも有意義な話が聞けるのではないかと思います。

「見学型」から「参加型」へ
臨床実習も世界水準を視野に

外観写真2

Profile国際医療福祉大学

設置年:1995年

本部所在地:〒324-8501 栃木県大田原市北金丸2600−1

設置学部:‌保健医療学部、医療福祉学部、薬学部(以上、栃木県大田原市)、医学部、成田看護学部、成田保健医療学部(以上、千葉県成田市)、小田原保健医療学部(神奈川県小田原市)、福岡看護学部(福岡県福岡市)、福岡保健医療学部(福岡県大川市)

※写真は今年3月に竣工した医学部棟(成田キャンパス)

広野 ホームページを拝見すると、「世界水準」ということばがたびたび出てきます。英語による授業以外に、世界水準のスキルを身につけるためにどのようなカリキュラムを用意なさっているのですか。

吉田 特徴的なのは「海外臨床実習」です。学生は全員、学術交流協定を結んでいる欧米や東南アジアの大学、あるいは病院で4週間以上の臨床実習を行います。文部科学省に設置認可を申請する段階で、実習生を受け入れる意思を表明してくださった大学が10校ほどありますが、これからさらに協定機関を増やし、選択の幅を広げていきたいと思っています。

広野 学生にとっては “世界水準” を体感する絶好の機会になりますね。

吉田 世界水準という意味では、クリニカルクラークシップ(診療参加型臨床実習)も特徴の一つです。わたしが学生だった30年ほど前までは、いわゆる「見学型」の臨床実習が主流でした。指導員の先生と一緒に患者さんの話を聞いて、先生に促されるままに患者さんのおなかを触ったり、胸の音を聞かせてもらったり。それが終わったら別室で小講義を受ける、といったようなものです。しかし、それだけでは、実際に現場に出たときに必要なスキルがなかなか身につきません。

 これに対して、アメリカの臨床実習は、患者の安全を確保したうえで、医師の指導の下に、学生が一定の業務を分担し修得します。本学でもそのような「参加型」の実習をめざしています。

広野 本来の意味での “実習” なのですね。

吉田 医師に必要な態度と技能を身につけた状態で国家試験を受験してもらうには、この臨床実習にある程度の時間を割く必要があります。そのため、実習期間は世界水準を上回る90週としています。日本で最も長く臨床実習を行っている大学は、卒業後の進路が地域医療の現場と決まっている自治医科大学ですが、そこに次ぐ長さです。本学部で学ぶからには、理論と実践をバランス良く備えた状態で現場に出てほしいと考えています。

17年5月号 この人に聞く
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