受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

自慢の授業

灘中学校・高等学校

「土曜講座」

メインビジュアル

学びの楽しさに出合い
自分の「世界」を広げる特別授業

 灘中学校・高等学校には、土曜日に開講される「土曜講座」という特別授業があります。前期と後期に3日間ずつ行われ、中高で50以上の講座を開講。扱うテーマはさまざまで、同校の先生や卒業生のほか、大学の研究者、企業の経営者などが講師を務めます。ふだんの授業とはひと味違う講座で、灘校生はどのような学びを深めているのでしょうか。前期最後の土曜講座を訪ねました。

中学生は22のテーマから
自分が選んだ講座を受講

 2002年に総合的な学習の時間の一環として始まった灘中学校・高等学校の「土曜講座」。当初は卒業生を招いて、その職業観を聞くキャリア教育が中心でしたが、回を重ねるごとに内容が多様に。今年度前期の講座は中高合わせて29に上ります。

 対象は中2から高2の生徒たち。1講座は90分間で、いくつ受講しても構いません。前期に用意された、中学生が受講できる講座は22あり、生徒は事前に申し込みをしたうえで当日に臨みます。土曜講座事務局の河内一樹先生は、「高校生向けの講座を毎回30前後設定。中学生には高校生と共通の講座のほか、本校の教員が講師を務めるものなど、より受講しやすい講座を用意しています」と説明します。

 講座の一覧を見ると、「奇跡の新薬を開発する」「弁護士は語る」「合唱の魅力と効用」「仮想通貨・ブロックチェーンの可能性と未来」など、テーマは多彩です。「全部受けたいぐらい興味深い講座ばかり。ペーパーテストや受験にすぐに役立つわけではありませんが、興味・関心の幅を広げるきっかけにしてほしい」と話す河内先生。生徒に講座の内容を紹介する「受講の手引き」には、「関心のある対象についての学習を通じて自分自身を見つめ直し、将来の進路を探ったり、自分の〈世界〉を広げたりするのに役立ててください。『受動的』に話を聞くという姿勢ではなく、自分なりの問題意識を持って『能動的』に講義に臨むことを期待します」とのメッセージがありました。

数学科の先生を講師に
「数学ゲームの必勝法」

ゲームの例

共通のルール

■ゲームには先手・後手の2人のプレイヤーがいて、交互に動き、パスはできない。

■先手と後手、どちらのプレイヤーが必勝の手順を持っているか、またその手順は何か、なぜその手順が必勝法なのかを考察する。


問題例

1が10個、2が10個、黒板に書いてある。2人は順に数字を二つずつ消していく。消した数字が同じ数字なら、2を書き加える。消した数字が異なるときは、1を書き加える。最後に1が残れば先手の勝ち、2が残れば後手の勝ちである。


2018年度前期灘校土曜講座
「数学ゲームの必勝法を探ろう」プリントより抜粋

 数ある講座のなかから、今回は、数学科担当の河内先生が講師を務める中2・3対象の「数学ゲームの必勝法を探ろう」を見学しました。この日、配布された教材は、表と裏に対戦型の数学ゲームを載せたプリントが1枚だけ。大問1から8まで、八つのゲームの必勝法を探っていこうという授業です。

 まずは、あらかじめ受講生に与えられていた予習課題の答え合わせです。「好きな正の整数Nを決めて、お互いに1から順に数える。1度に言っていい数は3個以下で、最後にNを言ったほうの負け。このゲームの必勝法は?」というもの。河内先生が「このゲームで勝つのは先手・後手どっち」と質問すると、「先手!」という声があちこちから挙がります。「説明してください」との問いに、いちばん前にいた生徒がすらすらと持論を展開。自然数Nがどんな数になっても、必ず先手プレイヤーが勝つ理由をわかりやすく述べ、見事正解しました。

 さあ、いよいよここからが本番です。しかし、河内先生はゲームの共通ルールをさっと確認しただけで、「2~3人ぐらいのグループで考えてみよう。そのほうが楽しいから。あとは自由にやってみて。1時間後に答え合わせをします」と言って教壇を下りてしまいました。先生が“教える”授業ではないようです。生徒たちはというと、すぐにグループを作り、にぎやかに話し始めました。「実際に対戦してみよう」「図にしたらわかるかも」と、計算を始めたり、図を描いて仲間に説明したりと、大いに盛り上がっています。

 河内先生はその様子を見ながら、質問に答え、ヒントを出しながら室内を巡回。「いつもの授業とは違う、数学のおもしろさを感じてもらうための授業です。希望制の講座だからこそできること」と生徒とのやりとりを楽しんでいました。

生き生きと輝く生徒の表情
田植えや砂金採集も人気

 約束の1時間が過ぎ、答え合わせの時間になりました。第1問、第2問、第3問、それぞれのゲームで先手・後手のどちらが勝つか、その理由は何か、先生に当てられた生徒が次々と答えていきます。驚いたのは、どの生徒も理路整然と説明すること。自分の考えを正しく伝えようという意識を感じます。先生は着目のポイントを補足する程度で、わずか10分ほどの答え合わせが締めくくりとなり、講座は終了。受講生全員が1枚のプリントに夢中になった90分間が終わりました。

 生徒に感想を聞いてみると、「全部は解けなかったけど、すごくおもしろかった」「考え過ぎて、ちょっと疲れました」「もっといろいろなゲームをやってみたい」という声が返ってきました。数学好きの生徒にとっては知的好奇心を強く刺激される授業だったようです。

 同じ時間、ほかの教室でもさまざまな講座が開かれていました。このほか「田植え・稲刈り体験講座」「誰でも趣味で砂金が採れる」など校外に出て学ぶ講座も人気です。

 灘校の新しい伝統ともいえる土曜講座に河内先生は「生徒が生き生きと取り組んでくれるので、こちらも楽しいですね。今後もできるだけ多様な講座を用意したいと思っています。『いろいろなものを用意するから、あとは自分でつかめ』と伝えたいです」と語ってくれました。

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活気に満ちた「数学ゲームの必勝法を探ろう」の様子。ゲームの説明後、グループを組んで思い思いに課題を解決していきます。困ったことがあれば先生がアドバイスをくれます

4 「田植え・稲刈り体験講座」では、里山の田んぼで、昔ながらの手植えを体験します

5 兵庫県小野市の加古川河川敷で実施される「砂金採り講座」

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