受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

自慢の授業

東京都市大学付属
中学校・高等学校

「数学」

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「数学はおもしろい」と思ってもらいたい
正答ではなく“なぜそう考えたか”を重視

 東京都市大学付属中学校・高等学校は、「公正・自由・自治」という建学の精神の下、主体的な学びを通してみずから未来を切り開く力の育成をめざしています。入学時からⅡ類(最難関国公立大コース)とⅠ類(難関国公立・私立大コース)に分かれ、それぞれ探究型の学びを重視しながら、生徒一人ひとりの目標の実現につながる進学指導を実施。今回はⅠ類の中1「数学」の授業を訪ねました。

身の周りの生活と関連づけながら
数学の奥深さや本質的な魅力を伝える

 見学したのは中1の「幾何」の授業で、テーマは平面図形における「距離の定義」です。生徒にとって幾何の授業は3回目。担当の小村達彦先生はスクリーンを使って、生徒たちにこう語り掛けました。「数学で使う『距離』は最短経路のこと。算数の『道のり』とは違うんだよ」

 算数から数学へと切り替わる中1。「用語の定義や考え方など、基本の理解は極めて重要」と、小村先生は言います。学びを積み上げていくためには、当然ながらしっかりとした土台作りは欠かせません。

 使用する教材は、教科書と小村先生オリジナルのプリントです。プリントには、先生による解説がわかりやすい表現でまとめられています。授業は基本的に教科書に沿って進みますが、解説はプラスアルファが詰め込まれた、このオリジナルプリントが中心です。「次は平面上の点と直線との間の距離を考えてみよう」。板書した要点を生徒がノートに書き写す間も、小村先生はコミュニケーションを図ります。「定義の話は文章ばかりで、全然算数っぽくないよね」。生徒たちは笑顔でうなずきながらペンを走らせます。

 「以上が、平面図形における距離の定義。じゃあこの考え方を基に、教科書の練習問題をやってみようか」。プリントの解説を聞き、教科書に戻って確認をするという流れで授業は進んでいきます。後半、「余談だけれど」と、新たなプリントが配られました。題材は「単位」です。「ヤード」(0.9144m)は12世紀のイングランド王・ヘンリー1世の鼻の先から突き出した手の指先までの長さ、「インチ」(2.54㎝)は親指の幅など、単位の由来に興味津々の生徒たち。「日本にも身体の一部分を使った長さの基準があるのは知ってる?」「尺!」「そう、これは尺骨(腕の肘の外側の部分の骨)の長さで約30cm。フィートと同じぐらいだね」。

 話は「補助単位」に移ります。「SDカードの32GB(ギガバイト)の『ギガ』は10の9乗。だから32GBは半角の英字を320億個記憶できるということだね」。一方、現在、小さい量を表す単位は10の24乗分の1を表す「ヨクト」まで。「もっと小さいものを扱う技術ができたら、新しい単位が生まれるはず」との先生の話に、数学の世界の奥深さを感じた生徒もいたことでしょう。「変な名前ばかり」との声が挙がると、「それぞれ意味があるので、興味があれば調べてみて」と、さりげなく自主的な学習を促しました。定義がテーマの前半は講義が中心でしたが、後半は生徒たちによる活発な発言が数多く見られました。

 最後に、もう一度教科書に戻って演習問題に取り組み、本日の授業内容を再確認したところで、50分の授業終了を告げるチャイム(校歌)が流れました。

学力底上げをサポートする「基礎補習」
チャレンジを後押しする「応用講座」

 授業終了後、中学生の数学を中心に、同校の学習への取り組みについて小村先生に伺いました。

 中学では数学の授業が週6コマありますが、小村先生が意識している点として挙げたのは、「答えの理由を説明させること」「数学の本質的なおもしろさを伝えること」です。この日の授業では「単位」を取り上げましたが、「伝統文様の対称移動例」や「三平方の定理(ピタゴラスの定理)の証明法」など、各学年の授業で使うオリジナルプリントを示しながら、「生徒たちの好奇心を刺激していきたい」と語る小村先生。なかには数学の奥深さに魅了され、はまっていく生徒もいるそうです。

 主体的な学びを重視している同校ですが、学びを定着させる取り組みにも力を入れています。その一つは、授業内での小テストの実施です。一定の基準に満たない生徒には追試があり、それもクリアできなければ放課後の基礎補習を受けなければなりません。基礎補習があるのは数学と英語で、「確実に理解のステップを踏んでほしい」との思いから。特に中1時は手厚いサポートを心がけています。

 一方、長期休暇中には発展的な学習を促すための応用講座もあり、中1~3の数学は「ジュニア数学オリンピック対策」です。「ジュニア数学オリンピックの対策は、考えることを重視した問題が多く、大学入試に直結した論理的な思考力を養う学習ができます」と小村先生。Ⅱ類は必修、Ⅰ類は希望制で、参加者は100人を超えるといいます。

 学習環境も整っており、放課後にはカフェテリアと進路指導室が自習室として開放されます。また、卒業生チューターのサポートも受けられます。さらに、教員室のすぐ近くには、「スタディラウンジ」という学習スペースがあるため、休み時間になると先生への質問を抱えた生徒でいっぱいになるとのこと。「本校には『師近距離』ということばがあり、教員との距離が近いのが特徴の一つ」と話す小村先生。この日も、広い廊下を歩きながら先生に質問している生徒の姿が見られました。

「数学的に言うと、『寄り道しないでまっすぐ帰る』、それが距離」。生徒がどっと湧きます 授業では基本的に毎回、先生手作りのプリントが配られます “トシコー”は、「明るく元気な進学校」とよく言われます

4 「言ったことを正しく理解する、ポテンシャルの高い子が増えている気がします」(小村先生)

5 部活動が盛んな同校は、それぞれの興味があることを大事にしています。ちなみに小村先生は鉄道ファンだそう

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中学校・高等学校

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