受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

最新中学入試情報

2022年度中学受験  サピックス小学部第29期生/親子で歩んだ 受験の軌跡

進学校 麻布中学校

中学受験で果たした自立

M.Hさん お子さんの名前 Yくん

 「ぼくは麻布を受けたい」
 息子が私たち夫婦に、そう宣言したときから「自立」は始まっていたのではないかと、今は思います。
 息子が入室したのは4年生の4月。新年度が2か月過ぎたころでした。帰宅直後は「初日は楽しかった」と聞き、安心していました。でもその夜に、「ぼくが知らないことをみんなが知っている。なぜもっと早く入室させてくれなかったのだ」と悔し涙を浮かべて訴えてきたのです。自分はちんぷんかんぷんなのに、ほかの子は当然のように授業をこなす姿を見たときの悔しさ。負けず嫌いの性格はきっと勉強向きだ、中学受験をめざしたのは間違いないと、早くも確信したのです。
 それからの塾での勉強は、テストの結果がジェットコースターのように上昇と下降を繰り返し、家庭学習がはかどらず親子げんかもしょっちゅう。寛容に見守ることができず、感情をぶつけ合うことも。テスト前日はクイズ形式で問題を出し、二人三脚で受験に向けてがんばってきたつもりでした。コロナ禍の5年生は学校にも塾にも行けず、家庭学習が続くなかでやる気のない日が続き、いちばんつらい時期でした。私のことばを拒み、反抗期が始まったのもこのころでした。
 持ち直したはずの成績が6年生で急降下。原因がわからず、先生に相談すると「マンスリーテストの見直し」の指示。先生の言うことは素直に聞きます。成績は落ち着きを取り戻しました。
 6年生の夏は「天王山!」と綿密な計画を立てました。春は「とまどって」夏に「踏ん張って」秋に「盛り返す」。その流れを続けてきたので、夏のプランはとにかく算数、算数、また算数。徹底的に取り組み、息子は算数好きに。夏の終わりに息子が言ったのです。「夏期講習が終わってほしくない。塾が楽しい」と。私はそれを聞いて思いました。もう大丈夫、この子は1人で前に進んでいると。
 夏が過ぎてからは志望校選びに悩む毎日でした。最終的に息子が選んだのは「麻布中学校」でした。志望理由は「自分の夢がかないそう。過去問も解いていて楽しい」から。私は「あんな難解な問題を解けるのだろうか」と不安でしたが、杞憂に終わりました。
 入試当日、手を振りながら会場に入っていく彼の姿はなんと頼もしかったことか。終了後はテンション高く、「今までの過去問のなかでいちばんできた」と言う彼の強さに、ただ驚くばかりでした。
 彼が自分で志望校を決めた瞬間、中学受験は親子のものではなく、彼自身の手中に収まりました。決心したことも目標をつかみ取ったこともすばらしく、喜ばしいことです。ただ、わが子が手元から羽ばたいていく寂しい気持ちがあることも否めません。子育てとは喜びと少しの寂しさを繰り返して、手放していくものだと気づきました。少し離れて見守りながら、子どもの独立独歩を手助けしていきたいと思います。3年間で自立したのは子どもだけではありませんでした。

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