受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

母校再訪

(「20年8月号」より転載/20年7月公開)

母校再訪

江戸川学園取手中・高等学校

山藤 栄一郎さん(1999年卒業)
新妻 耕太さん(2009年卒業)

国内外で医師として、研究者として
新型コロナウイルスと闘う卒業生

 いまだ世界で感染拡大が収まらない新型コロナウイルス。医療従事者、研究者をはじめとする多くの人々が、人命を救うために日々闘っています。江戸川学園取手中・高等学校の卒業生である山藤栄一郎さんと新妻耕太さんもその一員です。今回は、お二人が新型コロナウイルス感染拡大防止のために取り組んでいる内容とともに、母校である江戸川学園取手中・高等学校の魅力や思い出について伺いました。

規律ある学園生活のなかで
自然に身についた社会常識

山藤 栄一郎さん長崎大学熱帯医学研究所
臨床感染症学分野 助教
1999年卒業。山梨大学医学部医学科を卒業後、千葉県の亀田総合病院に内科医として勤務。その後、長崎大学熱帯医学研究所で博士課程を卒業し、現在も同研究所で感染症に関わる研究を行う。厚生労働省のクラスター対策班の一員。

 江戸川学園取手中・高等学校は1978年に高校が設立されて以来、「心豊かなリーダーの育成」を教育理念に掲げ、国際社会に貢献できる人材の育成に取り組んできました。1987年に中高一貫教育がスタートしてから着実に進学実績を伸ばす一方、「規律ある進学校」として、心の教育にも力を入れているのが特徴です。山藤栄一郎さんは、「5分前集合や道徳の授業のおかげで、あいさつをする、時間を守るといった社会常識がしっかり身につきました。仕事を進めるうえで、良い影響があると実感しています」と言います。

 幼いころから医師をめざしていた山藤さん。「母の通院や往診でかかりつけ医を見ていてあこがれた」のがきっかけで、その目標は中学・高校と変わることはありませんでした。

 1993年に高校に医科コースが設置されてから、多くの卒業生を医学部に送り出している同校。山藤さん自身も山梨大学医学部医学科を卒業しました。「後輩が優秀なおかげで、『江戸取卒』のイメージが良くてありがたい」と、後輩たちのがんばりを頼もしく感じています。

 現在、山藤さんは、長崎大学熱帯医学研究所の助教として、肺炎やリケッチア症などの感染症にかかわる研究を行っていますが、新型コロナウイルス感染症が発生してからは、厚生労働省クラスター対策班の一員としての活動が中心となっています。

 この4月に、長崎の造船所に停泊中のクルーズ船「コスタ・アトランチカ号」で船員の新型コロナウイルスの集団感染が発生した際、山藤さんは対応に当たりました。「2月に集団感染が発生したダイヤモンド・プリンセス号の事例のように、閉鎖空間での防疫は簡単ではありません。600名以上の船員を下船させて健康管理を行うことができなかったため、船内で個室隔離とし、感染管理上、船外からの支援を主としました。また、船内の医師は1名のみで、船員の重症化リスクや症状がほとんどわかりませんでした」

 そこで、山藤さんは、船外から船員の健康状態を把握するシステムづくりを富士通に依頼。スマートフォンのブラウザ上に船員自身が健康状態や検温状況を入力するシステムを緊急で共同開発しました。そこで得られたデータを山藤さんが毎日チェック。処理した情報を船内に伝えたり、感染管理について助言を行ったりと、船外からでも健康状態を綿密に把握できていたことが、結果的に死亡者をゼロに抑えたことにもつながったのです。「今回のように、健康状態を一括して毎日管理するという方法は、たとえば医療従事者や、福祉施設などにおける集団感染を早期発見するのにも生かせるのではないか」と考えているそうです。

集団感染が発生したイタリア船籍のクルーズ船「コスタ・アトランチカ号」

 新型コロナウイルス感染症への対応に当たった経験から山藤さんが実感したのは、「得た情報を、どのように自分自身で考えるかが重要だ」ということです。それは母校をめざす受験生たちに伝えたいことでもあります。「世の中にはさまざまな情報が飛び交っています。受験勉強とは矛盾するようですが、正解が何かという視点では解決できない問題があると知ることも大事かもしれません。ぜひ、さまざまな情報に目を向けて、考えてほしいと思います」とメッセージを送ってくれました。

出張講座やネット課外など
将来につながる学びが充実

新妻 耕太さんスタンフォード大学
博士研究員
2009年卒業。筑波大学生命環境学群生物学類卒業後、同大学グローバル教育院ヒューマンバイオロジー学位プログラムに入学。筑波大学で博士号を取得し、現在はアメリカのスタンフォード大学医学部にて博士研究員として勤務。

 一方、アメリカのスタンフォード大学で博士研究員として免疫学の研究を行う新妻耕太さんは、新型コロナウイルス感染症が本格的に広がる直前の3月上旬に、YouTubeチャンネル「新妻免疫塾 K&L Immunology Club」を開設し、難しい専門用語を使わず、ウイルスに関する基礎知識をわかりやすく解説する動画の配信を始めました。このチャンネルは、ノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥教授の新型コロナウイルスに関する情報サイトでも取り上げられ、今では日本の学校の教材として使われるほど注目を集めています。

 新妻さんがこの動画を作ったのは、「免疫学を研究している人間として、何かできることはないか」という思いからです。また、「日本にいる家族に新型コロナウイルス感染症の危険性を伝えるときに、『ウイルスとは何か?』という基礎の基礎から伝えたことが役に立った」という経験から、子どもたちでも理解できるような内容にすることにもこだわりました。

 「もともと大学3年生までは教員志望で、理科教員になりたいと思っていました。母校の江戸取でも教育実習を行いました」という新妻さん。在学中は中学・高校ともに生徒会長を務めたというだけあって、誰かに何かを伝えることは得意だったのでしょう。「子どもでも情報を得やすい時代になりましたが、その情報の質に着目することが大切です。自分で調べて、考えて、納得できる行動を決断できるように情報を正しく吸収してほしい」と新妻さんは言います。

 そんな新妻さんは、高校卒業後、筑波大学生命環境学群生物学類に進みますが、そのきっかけの一つとなったのが生物の授業です。「特に、東邦大学医学部の出張講座でPCR検査を体験したことや、インターネットを活用した課外授業・課外実験などが印象に残っている」そうです。

 同校では、「生徒の夢が学校の目標」をスローガンに、放課後に多彩な講座を用意しているほか、著名な方を招いての講演会や演奏会を実施するなど、主体的に自分の将来について考える機会を数多く設けています。新妻さんも、「江戸取ではさまざまなことを学びましたが、それが自分の基盤になっている」と言います。

新妻さんのYouTubeチャンネル「新妻免疫塾 K&L Immunology Club」

 筑波大学で博士号を取得した後、「もっとおもしろいサイエンスを続けたい、アメリカで働きたい」という希望をかなえ、2018年に現職に就いた新妻さんは、新規抗体の作製や造血幹細胞の研究に取り組んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大から2か月以上を経て、ようやく6月から期限付きの出勤が開始されたそうです。最後に、母校をめざす受験生に向けて、次のようなメッセージを送ってくれました。

 「受験には運と縁もありますが、志望校合格のために今、努力して学力を身につけていることにいちばんの価値があります。入学することになった学校で輝くために、今がんばるのです。江戸取にはすばらしい先生方がそろっていて、輝ける場がたくさん用意されています。やりたいことを見つけたら、全力で取り組んでください」

 これまで、国際社会に貢献できる人材の育成をめざし、多くの優秀な卒業生を輩出してきた同校。今回、お話を伺った山藤さん、新妻さんは、まさにその理想を体現しているといえるでしょう。

《学校のプロフィール》

江戸川学園取手中・高等学校

所在地 〒302-0025 茨城県取手市西1-37-1

     JR常磐線「取手」駅より徒歩25分・バス5分、関東鉄道常総線「寺原」駅より徒歩20分、
つくばエクスプレス「守谷」駅よりスクールバス20分

TEL 0297-74-8771
H P www.e-t.ed.jp/ 別ウィンドウが開きます。

《Information》

中等部オンライン入試説明会(要予約)
  7月25日(土)9:00~
中等部入試説明会
  9月  5日(土)9:30~
10月17日(土)9:30~
11月14日(土)9:30~
紫峰祭(文化祭)
10月10日(土)9:00~16:00
10月11日(日)9:00~15:30

※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更の可能性があります。
 事前に学校ホームページをご確認ください。

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