創立時から守られてきた理念は
平和な社会の繁栄に役立つ若者の育成
教頭 青木謙介 先生
広野 宗教法人につながる校名から、「わが家は無宗教だから」と、志望をためらわれる場合もあるようです。貴校における宗教教育の比重についてお聞かせください。
青木 母体が宗教法人なので、会員のご子息が多く通っている学校と思われる方がいらっしゃいますが、実はそうではありません。キリスト教や仏教を教育の基盤とする学校で行われているような、その宗教ならではの行事や授業も設けていません。代わりに、「平和な社会の繁栄に役立つ若者を育成する」という建学の精神が、設立当初から指導方針に反映されています。この指導方針の下、世界に羽ばたくことのできる人材を育成することをめざしています。宗教そのものに触れる機会はないというのが実情です。とはいえ、施設面では恩恵にあずかることが多く、たとえばけがや急病のときには、近くにある佼成病院が受け入れてくれますし、会員用の宿泊施設を合宿などで利用させてもらうこともあります。東日本大震災のときは、帰宅困難となった生徒も利用させてもらいました。さらに、海外研修でも、世界に広がるネットワークを生かし、現地での貴重な体験を盛り込むことができます。
広野 目に見えないところでのサポートが充実していることがよくわかりました。
異文化に触れる体験型プログラムと
発信力の養成を重視した英語の授業
広野 近年、応募者数が増えていますが、どのような取り組みが評価されてのこととお考えですか。
青木 2021年度に新設された「グローバルコース」が注目されていることが大きいと思います。こちらは、世界基準で物事をとらえ、世界平和の実現のために貢献できる“真のグローバルリーダー”を育てることを目的としたコースで、国際社会で活躍するために欠かせない「グローバル・コンピテンシー」を養うさまざまな体験や活動を盛り込んでいるのが特徴です。

2週間のセブ島英語留学は、来年度の中2生から全員参加に。個別指導を中心とした1日8時間のレッスンで、英語力の向上を図ります
広野 海外研修プログラムが独創的だと伺っています。
青木 グローバルコースでは、中学3年間でアジア3か国を訪問します。たとえば、中1を対象とした「モンゴル 異文化体験プログラム」では、乗馬やゲルの設営・宿泊といった遊牧生活を体験するほか、現地校での交流や一般家庭でのホームステイを計画しています。
広野 一般的な語学研修とは異なりますね。コミュニケーションはどのようにとるのですか。
青木 英語もあまり通じないので、身振り手振りで何とかするようです。遊牧民は客人を招くとき、飼っている羊をしめて肉を振る舞うのですが、そういった“歓迎”も用意されています。生徒たちにはかなりの衝撃ですが、「命のありがたさ」を実感するとともに、そのような文化が培われてきた背景を知ることで、多様な価値観を理解するきっかけとなるようです。さらに中2の「マニラ 平和学習プログラム」では、太平洋戦争における日本軍のかかわりに触れ、中3の「タイ フィールド実践プログラム」ではスラム街にも足を運び、急激な発展を遂げる都市の裏側にある格差について考えを深めます。いずれも、課題発見能力や協働的に課題解決へと向かう姿勢を身につけていくのが狙いです。
広野 どれも特徴がありますね。一方で、英語力の養成としては、どのような取り組みを行っていますか。
青木 英語の授業は週8時間設けていますが、そのうちの4時間を「Practical English(実用的英語)」に充てています。ネイティブ教員もしくはそれに準じる教員が担当し、ディスカッションやプレゼンテーションを含む「英語での発信」を重視した授業を展開しています。グローバルクラスでは5時間、さらに取り出し授業の対象者は6時間がこの授業になります。英会話力の向上をめざす「セブ島英語留学」も実施しています。現地の語学学校の寮で生活しながら、1日8時間のレッスンを受けるもので、以前は中2から高2までの希望者が対象でしたが、来年度の中2から全員参加となりました。新型コロナの影響で中止していましたが、再開するにあたって、中3から高2までの希望者を募ったところ、131名もの応募があり、「いかに英語を使う機会に飢えていたのか」を実感しました。そのほか、英国語学研修やニュージーランドでのターム留学・1年留学もあり、これらも再開に向けて動き出しています。
いち早く進めてきたICT教育
部活動や探究活動が成長を促す
サピックス小学部
教育情報センター本部長
広野 雅明
広野 ICT教育にも早くから取り組んできましたね。
青木 2015年度から環境整備に着手し、すべての教室に電子黒板とWi-Fiを完備しました。その翌年からは生徒全員にiPadを所持させ、学校生活のあらゆる場面での活用が始まりました。「タブレットを経由して意見や解答を瞬時に共有する」といった授業はすでに “日常”だったので、コロナ禍での休校期間も困ることはほとんどありませんでした。
広野 ここ数年、大学進学実績も伸びていますが、男子に特化した教育の強みが発揮された結果でしょうか。
青木 こつこつと努力を続けられる女子に比べると、男子は部活や学校行事など“目の前のやりたいこと”に夢中になってしまう傾向があります。そこを理解しつつ、勉強にシフトするタイミングを見逃さずに、自学自習の姿勢へとつなげていく指導を心がけています。中3時の成績が大学受験の方向性を決めるというデータもあるので、そこまでに基礎・基本を固めることも大切にしています。
広野 強豪クラブもありますが、学校生活における部活動の役割とはどのようなものだと考えていますか。
青木 本校の校訓「行学二道」には、「体験と学問の両立に励む」という意味があり、大切な体験の場として部活動を大いに推奨しています。アメリカンフットボール部をはじめ、活躍している運動部は多くありますが、結果はどうであれ、目標に向かって仲間と共に努力した経験は、男子の成長に欠かせない自己肯定感を養うものだと強く感じます。
広野 それでは最後に、受験生と保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
青木 近年では科学系の大会での入賞者も増えています。好きなことに夢中になっている人が認められるのが男子校の良さ。一人ひとりに居場所があり、活躍できる機会がある学校だと自負しています。ぜひ一度、本校にお越しいただき、学校の雰囲気を感じていただければと思います。