受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

未来を期待される学校

(「22年11月」より転載/22年10月公開)

横浜創英中学・高等学校

「考えて行動のできる人」の育成へ
学校教育の「当たり前」を見直し 自律型をめざす教育改革が進む

所在地〒221-0004 神奈川県横浜市神奈川区西大口28

交通JR横浜線「大口」駅より徒歩8分、京浜急行線「子安」駅より徒歩12分、東急東横線「妙蓮寺」駅より徒歩17分

TEL045-421-3121

HPwww.soei.ed.jp

 横浜市神奈川区に立地する横浜創英中学・高等学校で大規模な学校改革が進んでいます。先頭に立つのは、校長に就任して3年目の工藤勇一先生。「自律」をキーワードに“教えない”授業を導入するなど、学校の「当たり前」を見直す取り組みが注目を集め、中学入試の志望者数も大きく伸びています。今年度から新コースも始動した同校の改革と教育の在り方について伺いました。

九つのスキルを身につけて
自律・対話・創造の力を育てる

校長写真
校長 工藤 勇一 先生

広野 2020年4月の校長着任以来、大胆な学校改革を進められています。

工藤 「考えて行動のできる人の育成」という建学の精神を、時代に合ったかたちで具現化するため、前任校での経験を生かしながら思い切った改革に取り組んでいるところです。

広野 前任の千代田区立麴町中学校は、宿題や定期テスト、固定担任制など、学校の「当たり前」を廃止する改革で評価を高めました。

工藤 話題になった取り組みはいろいろありますが、どれも全生徒、全教員、全保護者を当事者として巻き込んで学校を改善した結果です。生徒たちは急に当事者や主体性などといわれても、最初は右往左往してしまいます。麴町中で「運動会をやめて体育祭にしよう、すべて君たちに任せるよ」と提案したときもそうでした。お祭りだから何をしてもいいと考えさせましたが、すぐにはうまくいきません。それでも試行錯誤を重ねて、自分たちなりに成功したと思えたとき、生徒たちは初めて主体性の意味を理解します。

 もう一つ大事にしているのは、学校と社会のシームレス化です。実学的な学びをするには、学校が社会と一体化して動いていく仕組みが必要です。この二つの方針の下で横浜創英の学校改革を進めています。

広野 どのように取り組んでいるのですか。

工藤 OECD(経済協力開発機構)の教育目標に合わせて、「自律・対話・創造」を三つのコンピテンシー(行動特性)として定めました。中学入学からの10年間に教員や保護者がやるべきことは、どう手を掛けるかではなく、どう手を離すか。大事なのは子どもたちが自分の足で歩くことです。そのために教育は自律型に変えなくてはならないと考えています。

 また、多様性を受け入れる力も必要です。生徒たちには対立を避けるのではなく、当たり前のこととして受け入れ、対話を通じて他者との共通目的を見つけ出す技術「パブリックリレーションズ」を身につけてほしい。三つのコンピテンシーを獲得するために、こうした技術を九つのスキルとして具体的に提示しています。

自律型教育への転換をめざして
“教えない授業”で効率的に学ぶ

イメージ01中1生を対象にした元サッカー日本代表監督の岡田武史さんによる講演の様子。この日は「心の豊かさを求めて」をテーマに話を聞きました

広野 自律型の学びについてお聞かせください。

工藤 「教員が教え込む授業から生徒みずから学ぶ授業へ」学びのスタイルを大転換しました。すでに中学の数学は一斉に教えず、各自が自由に学ぶスタイルに変わりました。教室に教員はいますが、独りで黙々と勉強してもいいし、友だちと学び合っても、教員に聞いても、AI型の教材を使ってもいい。数学は問題解決型の教科なので、体系化された内容を順番に学べばいいわけです。数学の次は英語に発展させ、将来的にはすべての教科に“教えない”授業を広げる予定です。

広野 先生の役割がずいぶん変わってきますね。個々に合わせて学ぶ新しいスタイルだと思います。

工藤 子どもが自己決定をして自己選択すれば、もっと効率良く学べるはずです。必要でない授業を受ける時間をなくし、逆に理解が遅れている生徒はそれぞれに合ったやり方で学んでいけば、学校は劇的に変わる。わたしたちはそこをめざしています。

広野 もう一つの教育の柱である社会と連携した実学も特徴的ですね。

工藤 伝えたいのは、「世の中の大人は結構すてきだよ、社会はまんざらでもないよ」ということです。そのために毎週のようにさまざまな分野のプロフェッショナルに授業をお願いしています。今年度は、宇宙開発で知られる植松電機の植松努さんや、日本のがん研究の第一人者で筑波大学副学長の加藤光保さん、元サッカー日本代表監督の岡田武史さんをはじめ30名ほどの方の協力を得ています。成功談だけではなく挫折経験も話してもらうことで、生徒たちは勇気をもらい、社会に目を向けるきっかけになるでしょう。

身近な社会課題の解決をテーマに
探究に取り組むサイエンスコース

広野 今年度から新たに中高一貫のサイエンスコースを開設されました。

工藤 学びは社会に貢献するためにあると理解するとともに、科学的思考を育てるコースです。理数系に特化したコースではなく、最大の特徴は週に2時間かけて行う研究活動です。社会の課題に注目し、解決のための仮説を立て、アクションを起こすまでを生徒主導で進めます。テーマは自由ですが、すぐに課題が見つかるわけではないので、まずは多くのプロフェッショナルから情報のシャワーを浴びます。中1の1年間でテーマを決め、毎年活動報告を発表させ、中3で口頭試問を行ってから高校に進み、高2で最終発表を行う予定です。

広野 あらゆる場面でサイエンスリテラシーが大事な時代ですし、自分の好きなことを見つけて研究できるのは楽しいでしょうね。

工藤 たとえば、演劇を通して人間を科学したり、プログラミングでおもしろいアプリを開発したり、何でも自由にやってほしいです。どれだけ尖るかですね。

広野 海外大学を志望する生徒が育つ可能性も大いにありますね。

工藤 2年後ぐらいまでに海外進学のための相談窓口を整え、海外の学校とも連携する予定です。

広野 興味深い取り組みが着々と進んでいることがよくわかります。では、最後に受験生へのメッセージをお願いします。

工藤 自分でいろいろなことやってみたい、自分を大きく変えてみたいと思う人はぜひ横浜創英に来てください。自分の強みや尖りを大切に、一緒に学校をおもしろくしましょう。

ONE POINT CHECK サピックスのワンポイントチェック

 「創造」「コミュニケーション」「コラボレーション」「深い思考力」を身につけるために、中2生全員で行く「4Cスキル合宿」も横浜創英ならではの行事です。2泊3日の合宿中はひたすら対話を繰り返し、チームでミッションに挑戦。意見が対立したり、それを乗り越えて目的を達成したりする経験を通じて、生徒の意識は大きく変わります。ほかにもさまざまな形で社会生活に必要なスキルを習得する機会が用意されているのが同校の特徴です。

INFORMATION

学校説明会などの情報はこちらよりご確認ください。
https://www.soei.ed.jp/admission/j_briefing/

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