完全中高一貫校化と新教育課程への
移行により学校改革が加速
入試広報部長 野村 竜太先生
1922年創立の本郷中学校・高等学校では、個性を尊重した教育を通して、国家有為な人材を育成することを建学の精神としています。学校改革の一環として、来春から高校での生徒募集を停止し、完全中高一貫校へと移行します。
「これまでは中学から入学した生徒と高校から入学してくる生徒が合流していたため、足並みをそろえる負担が双方にありました。それを解消することで、より学習に取り組みやすくします」と入試広報部長の野村竜太先生。
また中学校では2021年度、高校では2022年度に始まる新教育課程に向け、学内ではカリキュラムの見直しが行われており、完全中高一貫校化とあわせて、これまで以上に個々の希望に応じたクラス編成が可能になるように検討がなされています。「学校は生徒に最後まで第一志望を貫いてほしいと思っています。そのためには同じ志望を持った生徒同士で切磋琢磨することが非常に大切だと思います。そんな環境を生徒に提供することが学校の大きな役割です。その点を踏まえて、今後のカリキュラム編成やクラス編成を考えていきたいと思っています」と野村先生は話します。
あわせて、これまで行われてきた改革の背景には「本郷を熱望する生徒にこそ来てほしい」という学校側の強い思いがあります。以前は2月2日・3日・5日に実施していた中学入試を、1日・2日・5日に変更したのは2014年のことです。それ以来、同校を第一志望とする受験生を重視してきましたが、今年度からは、さらに1日と2日の募集定員を20名ずつ増員し、合格者もそれぞれ20名と55名増やしています。“本郷熱望組”に向けた門戸を広げたうえで、5日は同校受験のラストチャンスと位置づけています。
「文武両道」で相乗効果
先輩とのつながりを育てる
部活動加入率は中学生が98%、高校生がおよそ85%。文武両道をめざして取り組んでいます
こうした改革の一方、教育方針として掲げる「文武両道」「自学自習」「生活習慣の確立」を重視する姿勢は今後も変わりません。同校の教育のすべてが、この三つの方針の下にあるためです。
文武両道では、勉強と部活の両立はもちろん、双方をつなげる意識を育てています。毎日こつこつ勉強することと、部活で日ごろからトレーニングすることには通じるものがありますし、授業で聞く話と部活で聞く話にも共通するものがあります。これについて野村先生は、「“文”と“武”はつながっていると感じられる6年間にするのが本郷の文武両道です」と説明します。中1は全員部活に参加するルールがあるのもそのため。中2以降は自由参加ですが、中学生の加入率は98%、高校生もおよそ85%と高く、6年を通じて部活動に打ち込むことは、同校の校風の一つとなっています。
部活動を通して、先輩・後輩の関係を深める意味も大きいとのことです。後輩にとって先輩はあこがれの存在。身近な先輩から刺激を受けることで、部活だけでなく勉強へのモチベーションも高まります。たとえば、2年連続で全国大会に出場した高校ラグビー部では昨年、キャプテンが一橋大に現役合格。その前年のキャプテンは東大に合格しています。工夫して勉強時間を確保しながら、最後まで部活に全力投球する先輩の姿から、後輩は多くのことを学んでいるようです。
縦のつながりは部活だけに限りません。学習面においても先輩と後輩がつながる仕組みをさまざまに用意。その一つが「合同授業」です。これは中2がマンツーマンで中1に数学を教える取り組みで、毎年5月の中間テスト前に第1回目が行われます。学習のこつや学習計画づくりをアドバイスしてもらえるほか、学校生活に関する質問や相談も気軽にできる良い機会となっています。
学年を超えて挑戦できる
学習環境を提供してサポート
文武両道に加えて重視する自学自習では、みずから学ぶ姿勢の確立をめざします。その象徴的な取り組みが数学と英語の基本知識の習得度を測るオリジナルの検定制度「本郷数学基礎学力検定試験(本数検)」と「本郷英単語力検定試験(本単検)」です。本数検は中高6学年が、本単検は中学3学年が一斉に受検。得点に応じて級や段が取得でき、学年の枠を超えて挑戦できるのが特徴です。
「生徒は長期休暇中に受検対策をしたうえでテストに臨みます。その準備が自学自習の姿勢を育てるのです」と野村先生。先輩より上をめざすことも可能なので、生徒のやる気を高める効果は抜群です。「男子は一段一段上がるより、二段飛ばし、三段飛ばしをしたがるもの。その結果、つまずいたり、転んだりすることもありますが、それを止めるのではなく、チャレンジすることを応援したいと考えています」
中学3年間の総まとめとして取り組む「卒業論文」も自学自習を実践する取り組みの一つです。テーマは自分で自由に設定し、中3の1年間を使って完成させます。ここでもまた、着手する前に先輩が論文作成をアドバイスする講演会を開催し、スムーズなスタートにつなげています。
中学では人間的な幅を広げることを主眼に、中高一貫ならではの密度の濃い教育を実践しています
三つめの「生活習慣の確立」では、スケジュール帳を使った自己管理から始めます。生徒には毎年手帳を配付。予定や提出物の期限を記入させるなど、社会に出たときに必要になるスキルを中1からしっかり鍛えています。
最後に、野村先生に来年の中学入試について伺いました。担当する算数では、オーソドックスな問題を集めた大問1と2は完答してほしいとのこと。これは、ほかの教科も同じで、「各教科とも正答率が60%を超える問題を確実に正解するのが合格への近道です」と強調します。さらに、「どの学校を受けるにしても、受験生の皆さんはそこで何をしたいのかを自問自答してください。どこに行きたいかではなく、そこで何をしたいのかというイメージが大切です」とのアドバイスを送ってくれました。