規律正しい学校生活を重視
リーダーとしての成長を促す
校長 山本宏之先生
1978年の設立以来、「規律ある進学校」を教育方針に掲げ、「江戸取(えどとり)」の愛称で親しまれる江戸川学園取手中・高等学校。卒業生は間もなく2万人に達します。山本宏之先生は「43年の伝統と文化を継承・発展させていきたい」と言い、「江戸取らしさ」を何よりも大切にしています。
その筆頭が規律正しさです。「生徒には、『規律は他者への思いやり』と教えています。学校という集団生活の場で心穏やかに過ごすには、一人ひとりが規律正しく生活することが重要です」。そのため、新入生にはまずあいさつの徹底を指導。なぜあいさつが必要なのかを理解させるところから始めています。
予習・復習のやり方、ノートの取り方など、学習に取り組む姿勢をていねいに教えるのも江戸取流です。「長年、本校では『授業が一番』を合言葉にしてきました。予習して授業に臨み、授業をしっかり聞いたうえで復習するサイクルができれば、成績は必ず伸びます。その基礎を中学の早い段階で身につけさせたいのです」と強調します。
道徳教育を軸にした「心の教育」にも力を注いできました。定期的に実施する校長講話では、前校長の竹澤賢司先生と同じく「偉人に学ぶ」をテーマに話し、生徒がみずから考えるきっかけを提供しています。これらの取り組みを通じてめざすのは、心豊かなリーダーの育成。「物事をよく考え、多様性を尊重し、目標に向かって先頭に立ち、『ここ』というところで決断を下す。そんなリーダーとして成長してほしいと考えています」
3コース制で目標を具体化
希望の進路実現につなげる
2021年度の大学入試では、筑波大学医学群医学類に7名が合格したのをはじめ、国公私立の医学部医学科に過去最多の111名が合格を果たしました。医学部以外でも東京大学に5名、東京工業大学に4名、早慶上理に200名とすばらしい合格実績を残しました。
その背景には、一人ひとりの生徒がそれぞれの目標や適性に合わせて選べる3コース制があります。高等部に設置された「東大」「医科」「難関大」の各コースを2016年度からは中等部にも拡充。それぞれ「東大ジュニア」「医科ジュニア」「難関大ジュニア」コースとして、中高6年間の一貫教育を実践してきました。
中等部のカリキュラムは3コースとも共通ですが、コースごとに実施する課外授業を実施。医科ジュニアでは現役医師による講話や病院見学、東大ジュニアでは東大のオープンスクールへの参加や東大に進学した卒業生の講話、難関大ジュニアではポートフォリオ蓄積に向けた活動のサポートなど、各コースに特化したキャリア教育を展開しています。
志望校合格を見据えた、きめ細かい進路指導にも定評があります。たとえば、医科コースでは、担当教員が全国82の医学部医学科の入試科目・配点・出題傾向をしっかり把握しており、生徒の学力や個性に合った受験プランを具体的に描くことで合格に導いています。医学部医学科合格者数で全国トップ10に入る近年の実績は、こうした地道な積み重ねによるものです。
放課後や長期休暇中に行う自主選択制の講座「アフタースクール」も同校ならではの取り組みです。学習系から実験系、芸術系、アクティビティー系まで、100を超える講座から自分で選んで受講するシステムで、生徒の学習意欲や知的好奇心を刺激する場になっています。「コースごとの講座のほか、学年を超えて学べる講座もあります。自分の興味や関心、目標に合わせて学べるのがアフタースクールの魅力。多くの生徒が部活動と両立させながら主体的に学んでいます」と山本先生は自信を見せます。

2020年4月に完成した新総合体育館「Sakura Arena」。1階は雨天時運動エリアや部室スペースで、2階には武道場・卓球場・ダンス室などがあります。3階はバスケットボールコートが2面取れる広い体育館になっています
「世界型人材」の育成をめざし
国際プログラムを充実
「世界に挑め」をスローガンに掲げ、多彩な国際プログラムもあります。「世界型人材」の育成をめざし、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)を訪問する「アメリカ・アカデミックツアー」をはじめ、医学部進学をめざす生徒が対象の「アメリカ・メディカル・ツアー」や、現地の貧困や飢餓などについて学ぶ「SDGsスタディーツアー in カンボジア・ベトナム」などを実施。昨年と今年はコロナ禍による中止が続きましたが、オーストラリアの学校とのオンライン交流など代替プログラムもスタートしています。状況を見ながら、今後、中3・高1を対象にした3か月間のオーストラリア中期留学を導入するなど、海外で学ぶプログラムは一層の充実を図る計画です。
こうしたプログラムの土台となる英語の授業では4技能の向上も重視。ネイティブ講師が中高全学年で授業を担当する一方、高等部では大学受験を意識した実戦的な内容の授業も重視しています。
2022年度の中学入試には大きな変更点があります。従来の4科目に加え、英語を必修とし、「5科目入試」とすることが決まりました。山本先生は「世界型人材の育成のためには、英語は大切だということを訴える本校からのメッセージだと思ってください。試験内容は小学校の教科書レベルのリスニングのみですから、特別な対策は必要ありません」と説明します。
最後に山本先生から受験生に向けてメッセージをいただきました。「わたしも40数年前に中学受験を経験し、学ぶことのおもしろさを見いだせました。自分で一生懸命考えたり、工夫したりしたことは、必ず将来につながります。ぜひ江戸取で将来の夢を実現しましょう。保護者の皆さまには、最後までお子さんを信じて見守ってあげてほしいと思います」