ロールプレイング形式で
主体的に参加できる理科実験
理科教諭で広報部副主任の桑子研先生
共立女子中学高等学校がめざしているのは、時代を超えて〝輝き、翔ばたく女性〟の育成です。これからの持続可能な社会、男女共同参画社会の担い手として、一人ひとりが豊かな人生を歩んでいけるよう、学力形成のための「考える力」「解く力」とともに、人間形成のための「関わる力」「動く力」の四つを重視した教育を実践しています。
人間形成のために欠かせないのが、さまざまな価値観に出会える環境です。1クラス約40名で1学年8クラスという規模は、自然に多様な個性に接することができ、興味・関心の幅を広げるのに適した環境といえます。生徒の人数に比例して教員数も多く、授業にはさまざまなアイデアが生かされています。「自由に実践できる風土が本校にはあります」と理科教諭で広報部副主任の桑子研先生は言います。
そのなかから生まれたのが、「SE PUP(シープアップ)」を取り入れた放課後の理科実験講座です。シープアップとは、米国カリフォルニア大学バークレー校で開発された科学教育プログラム。ディベートやロールプレイングといった手法を取り入れ、生徒が目的意識を持って、主体的に学べる内容になっています。「本校の理科でめざしているのは、柔軟な科学的思考力と課題解決力の育成です。この講座の目的は、一つの正解を導き出すことではなく、生徒同士でさまざまなアイデアを出し合い、考察を重ねながら、理科への興味・関心を引き出すことなのです」と桑子先生は説明します。
グループで試行錯誤して
可変抵抗器の仕組みを調査
では、実際にどのような講座が行われているのでしょうか。この日は、桑子先生による中1の希望者を対象とした「電流の性質」に関する実験が行われていました。同校では、指名制の補習のほか、発展的な内容を学ぶ希望制の補講も放課後に実施しています。今回の参加者は、ウェブ上でアンケート機能を使って募りました。「生徒全員がiPadを所持しているため、以前よりも講座の告知や参加者の募集が楽にできるようになりました」と桑子先生。当日は8名の中1生が参加しました。
「グリーンエレクトリック社へようこそ!」。当日、配布されたワークシートにはこう書かれています。架空の島にある架空の会社の新入社員として、電子部品の一つであるボリュームの仕組みについて調べるという物語に沿って、実験・考察を行うというわけです。このようにロールプレイング方式で進むのがシープアップの特徴。生徒たちは三つのワークを通して、電流と電圧と抵抗の関係について学びます。
まずは、鉛筆を使った回路の実験です。紙に鉛筆で回路を描き、そこにLED電球と2個のボタン電池をつなげた装置を乗せると、LED電球が光りました。鉛筆の芯は電気を通すということです。では、明るく光らせるには、どのように描けばいいのでしょうか。「線を太くする」「濃くする」「短くする」といった考察に基づき、生徒たちは実際に紙に描いて試しながら、電気抵抗への理解を深めていきます。
そして、ここまでで学んだ知識を基に、ボリューム(可変抵抗器)の仕組みを調査して発表します。可変抵抗器のつまみを回してLEDの光の明るさを確かめながら、内部がどんな構造になっているのかグループで話し合い、図にまとめていくのですが、生徒からはおもしろい意見が飛び交います。最後にアナログの可変抵抗器のメリットとデメリットについて確認して、講座は終了しました。
紙に書いた鉛筆回路でLED電球が光るのを確認。もっと明るく光らせる方法はないか考えます
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この日の講座で使った電子部品は桑子先生が秋葉原で用意したもの。実物を使って体験することを重視しています
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ボリュームとLED電球をみのむしリード線でつなぎ、つまみを回してその仕組みを調べます
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生徒同士の対話を通じて
豊かな語彙形成を図る
同校では、放課後の講座のほかに、長期休暇中にも英語・数学・国語をはじめ、さまざまな講座を開講しており、そのなかにはシープアップを取り入れた理科の講座などもあります。高1では物理基礎の授業での実験にも導入されており、「今後も放課後や長期休暇中の講座でいろいろ試しながら、いずれは中学の理科のカリキュラムにも落とし込んでいきたい」と桑子先生は考えています。そのために、シープアップ研究会にも所属し、教材開発を進めています。「生徒が楽しんで参加できるのがいちばんの理由ですが、実験を通じてグループで対話を重ねることで協働力や課題解決力が身につき、さらに豊かな語彙形成にもつながります。これらは他教科でも生きる力です」と、その効果を実感しています。
理科実験講座の第2弾として、冬季講習では電子基板「ブレッドボード」を使った実験を行うことも検討中とのこと。「本物の電子部品を使うので、生徒の理解がより深まり、わくわくしながら取り組めると思います。今後も生徒が『おもしろい』『もっとやってみたい』という講座を用意していきたいですね」と抱負を述べました。
グループで話し合い、意見をまとめてワークシートに書き込みます
ICT機器も有効活用。iPadに専用のペンで図を描き込みながら説明します