与えられた力を他者のために生かす「ノーブレス オブリージュ」の精神を大切にする晃華学園中学校高等学校。生徒たちは「人のために役に立ちたい」という思いから、さまざまな活動に主体的に取り組んでいます。今回は、そうした活動を生徒同士で共有する「生徒活動報告会」について、教頭の田中寛紀先生と6人の生徒に伺いました。
学年を超えた活動報告会
「あこがれ」から「挑戦」が生まれる
カトリック「汚れなきマリア修道会」を母体とする晃華学園は、神さまから与えられている自分のタレントを磨き高めて人のために使う、Noblesse obligeの精神を大切にしており、たくさんの生徒が学校内外で興味・関心のある物事に積極的にチャレンジしています。これまでは終業式などで活動内容を発表していましたが、新型コロナの影響で、どのような活動に取り組んでいるのか、お互いにわかりにくくなっているため、昨年12月に半日を使って「生徒活動報告会」を実施。2月には第2回を行いました。
「12月の報告会では中学生の発表も多く、学年を超えて刺激し合うことができました。生徒たちの活動は多様で多岐にわたっていて、発表できたのはほんの一部ですが、発表者はもちろん、聴いていた生徒にとっても良い機会になったと感じます」と、教頭の田中寛紀先生は話します。実際、報告会後の振り返りでは、「わたしも何かに挑戦したい」「わたしだったら何ができるだろう」といった感想がたくさん寄せられたとのこと。田中先生は次のように話します。
「仲間が生き生きと輝いているのを見て『わたしもやりたい!』という気持ちが自然と芽生えるのは、本校の校風でもあります。この報告会がまた、自分の取り組みを進めるヒントや、何かに挑戦するきっかけになるのが楽しみです」
自身の興味・関心から
人のために役立つことにつなげる
昨年12月に実施された第1回生徒活動報告会では、中1~高1の、計19題の発表がありました。ここでは、そのうち4題の発表を紹介します。
教頭 田中 寛紀先生
中1のA・Eさんは、ミサワホームのモデルハウスの見学に行き、社会・環境・地球の未来を見据えた家づくりについて学んだことを発表しました。「帰宅時にスマートフォンを消毒でき、食料や日用品の備蓄用の倉庫もあるなど、現代の社会・環境問題に適応した住まいが実現されていました。人々の生活をより豊かにするには、新しいことを取り入れるのが大事だと感じました」とA・Eさんは話します。
中2のH・Kさんの発表は、フィリピンのルソン島の山岳地帯に住む先住民・アエタ族への寄付活動についてです。中1ではアエタ族の子どもたちに文房具を寄付し、中2では自分で英訳した絵本をボランティア団体を通じて贈りました。「文章をそのまま直訳するのではなく、わかりやすい英語を使用するよう心がけました」と話すH・Kさん。「英語を学ぶのに少しでも役に立てたらうれしい」と話します。また、ボランティア団体の代表者と直接話す機会も得られ、貧困に苦しむ民族や国についての問題意識が深まりました。
2021年度入試で出題された晃華学園中の算数の問題について、解説動画を学校ホームページで公開した中3生のグループもいます(現在公開中)。これは、「自分の成長につながると思った」「これまでの探究活動で得た経験を生かしたい」といった理由で集まった23名が、1問ずつ制作したもの。昨年の学校説明会では、その動画を使いながら受験生とその保護者を前に説明しました。12月の報告会では、代表者がその取り組みについて発表。制作メンバーは、誰が見てもわかる動画にするために、図やアニメーションを入れたり、音声を工夫したりと、試行錯誤を重ねたとのこと。一つの問題にじっくり向き合うことで、さまざまな視点から物事を見る大切さも学びました。メンバーのT・Kさんは「受験生と保護者の方々はわたしたちの説明を真剣に聞いてくださり、『役に立っているんだ』とやりがいを感じました」と話します。
中3で執筆した課題研究論文『新聞を通して自分の考えを持つためにできることは何か』について発表したのは、高1のM・Kさんです。M・Kさんは、「調べてみると、新聞社はそれぞれ異なる考えを持っていることがわかりました。それだけに、『自分の考え』を持つには、異なる新聞社の記事を読むことが重要です。一つの出来事に対する異なった意見に触れることで、自身の知識の幅を広げられます」と言います。そして、「調査を通じて、若者の深刻な新聞離れについても知りました。最近の選挙での投票率の低さにも関係があるのではないかと感じているので、今後はその関係性について調査していきたいです」と、今後の目標も話してくれました。
何度も挑戦して得た大きな喜び
進学後はより大きな活動に挑戦
2月の第2回生徒活動報告会では、高2と高3の生徒が9題の発表を行いました。ここではそのうちの2題を紹介します。
「模擬国連」について発表したのは高2のY・Tさん。模擬国連のルールや具体的な内容、参加する醍醐味について述べました。「模擬国連は、各国の大使になりきって他校の生徒と本気で意見をぶつけ合うもの。英語力や論理的思考力をはじめ、議論をするうえで必要な知識や能力も向上させられます」。中1から模擬国連に挑戦しているY・Tさんですが、昨年実施された第5回全国高校教育模擬国連大会では、実行委員特別賞を受賞。模擬国連に参加するようになって以来、初めて賞を受賞したことに「大きな喜びを味わえた」と言います。最後には、「模擬国連は、校内では得られない知識や新しい価値観に触れられる、最高のアクティビティーです。ぜひ挑戦してください」と、下級生にメッセージも送りました。
高3のN・Kさんは、余った食べ物を持ち寄り、それらを必要とする人に寄付する活動「フードドライブ」について発表しました。N・Kさんは、日本における食品ロスや貧困で苦しむ子どもたちに対して問題意識を持ち、こども食堂でのボランティアなど、これまでにさまざまな活動に取り組んできたと言います。なかでも印象に残っているという「フードドライブ」は、N・Kさんが一から企画したもの。生徒の家庭で余っている食品を集め、フードバンクに寄付しました。「多くの生徒が参加してくれて、160点以上の食品が集まりました。想像以上に同級生からの反響もあり、大変だった分、大きなやりがいを覚えました」と、N・Kさんは感想を述べます。さらに、「活動をするうえで、ボランティアだけでは難しい部分があることもわかりました。大学では資金を集め、この経験をもっと大きな活動につなげたいです」と、目標を語ってくれました。
新型コロナの影響で活動を制限せざるを得ない状況が続いていますが、そのなかでも晃華学園の生徒たちは歩みを止めずに、前進し続けています。
生徒活動報告会では、司会進行も生徒が行います。司会を務めたY・Tさんは「ほかの生徒の取り組みについて知る機会がなかったので、詳しい内容が聞けてうれしい」と話します
今回、お話を伺った生徒たち。前列左よりA・Eさん(中1)、H・Kさん(中2)、T・Kさん(中3)。後列左よりM・Kさん(高1)、Y・Tさん(高2)、N・Kさん(高3)