受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

School Now

(「22年8月号」より転載/22年7月公開)

成蹊中学・高等学校

本物に触れる探究学習を通じて
「0 to 1(ゼロ トゥ ワン)」を創造できる人に

 卒業生でもある仙田直人先生が校長に就任し、2年目を迎えた成蹊中学・高等学校は「探究学習」に一層注力するようになりました。多様な個性を尊重し合う環境の下、リベラルアーツを重視した幅広い学びと、「本物に触れる」体験ができることがさらに大きな魅力となっています。仙田先生にこの1年間を振り返っていただくとともに、新たな取り組みについてもお聞きしました。

「個性の尊重」という建学の精神の下
「本物に触れる」多様な学びを実践

校長
仙田 直人 先生

 成蹊中学・高等学校の前身である成蹊実務学校は、今から110年前の1912年に創設されました。「知育偏重ではなく、人格、学問、心身にバランスの取れた人間教育の実践」をめざした創設者の中村春二は、「個性の尊重」「品性の陶冶」「勤労の実践」を建学の精神として掲げました。

 この精神を受け継ぐ同校が、特に重視しているのが「個性の尊重」です。生徒が6年間の学校生活を送るなか、どんな物事が各自の琴線に触れるか。これは生徒ごとに異なるうえ、成長につれても変わっていきます。そこで、同校ではリベラルアーツを重視して幅広い教養を身につけられるようカリキュラムなどを工夫。生徒が旺盛な知的好奇心を持って学ぶことのできる環境の整備に注力しています。

 さらに同校では、そうした教育のなかで「本物に触れる」ことも大切にしています。たとえば、天体や気象を観測できる施設を校内に設けているほか、校内の竹林で収穫したタケノコを使い、たけのこご飯の調理実習をしているのはその表れです。

 同校の卒業生でもある校長の仙田直人先生は、2021年4月に就任して以来、「探究学習」の拡充に力を入れてきました。その理由について仙田先生は、「AIが急速に社会に浸透しつつある今、学校の使命は課題を見つけ、何が正解なのかわからない世の中で新たな物事を創造する『0 to 1』の発想を持つ人材を育てていくことだと思います。そのために不可欠なのが探究学習です」と力を込めます。

ユネスコスクールとして
探究学習を積極的に展開

 では、同校が行っている探究学習の具体例を紹介しましょう。

 平和や国際的な連携を実践するユネスコスクールに認定されている同校では、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け、ESD(持続可能な開発のための教育)に取り組んでいます。その一環として、昨年は中3生の道徳の時間を探究活動に充て、3学期にはポスターセッションを行いました。「大切なのは発表までのプロセスです」と仙田先生は説明し始めます。

 「まず、10年後にどんなSDGsが達成可能かを一人ひとりに考えさせます。その動機づけの意味で、1学期には講演会を開催しました。今年は、アフリカの民族衣装を使ったアパレルブランドを立ち上げ、それを収益化してアフリカに公共の学校をつくる活動をしている銅冶勇人さんに講師をお願いしました。その後、2学期に骨子を発表させて不足している箇所を示唆し、冬休みにはそれを補強する現場訪問や関係者インタビューを実施。その総仕上げがポスターセッションです」

 また、高2生は以前から夏休みに家庭科の課題学習を行っているのですが、昨年は優秀な成果を収めたグループの発表大会を外部から審査員を招いて実施しました。最優秀賞に選出された生徒は、医療的ケアが必要な子どもを受け入れられる保育園が足りないという社会課題について発表。ほかにも、インドネシアの生徒たちと共に、太陽光パネルのリサイクル推進や過剰包装の防止などといった社会課題を話し合うオンラインミーティングに参加したグループもありました。

 こうした探究学習をさらに発展させ、中3生から高2生までが英語でプレゼンテーションを行う“Change Maker Awards”や、企業と連携して課題解決などに挑む「クエストカップ」といった外部の大会に出場する機会が増えているそうです。「他校の生徒から受ける刺激は大きく、初めは原稿を棒読みする発表をしていた生徒も、プレゼンの技術を着実に向上させています」

「本物に触れる」学習に力を入れている同校では、地学室や生物室をはじめとする理科室も充実しています。教育目的の気象観測を1926年から欠かさず行ってきたのが、敷地内に設けられた気象観測所です。温度計などの観測機器を収めた百葉箱や雨量計などを配した露場に加え、特別棟の屋上には風向風速計と日照計を設置しています(写真左)。自動観測装置の観測データは地中ケーブルを経由して地学室のパソコン(写真中央)に転送されます。中1生は昼休みに3人1組で気象観測実習も行っています。また、生物室(写真右)は1フロアに二つの実験室と講義室があり、水槽でイワナなどを飼育しているほか、生徒が生物助手のサポートを受けながらつくった各種生物の標本なども展示されています
国際理解教育に豊富な実績
今年度からターム留学も実施

ポスターセッションの一例。「里山の保全」(左)と「Well-being」(右)をテーマにまとめたものです

 同校は、アメリカの名門ボーディングスクールのセント・ポールズ校やオーストラリアのカウラ高校などとの交換留学の実績が豊富なことでも知られています。現在も6名の高校生が1年間の海外留学に出かけています。

 また、今年は海外の学校でのサマースクールに参加する予定で、中学生はアメリカのイーグルブルック校とチョート・ローズマリー・ホール校に応募しているとのこと。高校生はオーストラリアのカウラ高校との交換留学に参加できるほか、アメリカのフィリップス・エクセター・アカデミーなどから7〜9月に来日する7名の留学生と交流する機会もあります。このように、しばらくストップしていた国際理解教育がついに再開。さらに、生徒からのニーズに応え、今年度からは高1・2生を対象にカナダへのターム留学(3学期の3週間)も始めます。

 「ターム留学の参加者は15名前後を予定していますが、説明会には118もの家族が参加。海外研修が不可能だった時期も、本校ではエンパワーメントプログラムやイングリッシュシャワーといった校内でできるプログラムを実施してきたため、海外への関心は非常に高いですね」

 最後に、仙田先生は「本校ではすばらしい環境や施設・設備の下、本物に触れる教育を展開しています。そのなかには皆さんの琴線に触れる楽しい学びが必ず見つかるはずです。そうした学びを深く掘り下げ、一緒に学んでいくことが、『0 to 1』の発想を持つ人に育つことにつながると確信しています」というメッセージを送ってくれました。

《学校のプロフィール》

成蹊中学・高等学校

所在地
 〒180-8633 東京都武蔵野市吉祥寺北町3-10-13
 JR・京王井の頭線「吉祥寺」駅より徒歩20分、またはバス5分 TEL 0422-37-3818
H P www.seikei.ac.jp/jsh/ 別ウィンドウが開きます。

《各種行事日程のお知らせ》

学校説明会などの情報はこちらよりご確認ください。
https://www.seikei.ac.jp/jsh/entranceguide/schoolevent.html

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