発信できる力の重要性と
探究の本質
髙村 亮 教諭
大妻中野中学校・高等学校は、全校生徒の10%以上、約160名が海外帰国生。都内の女子校ではトップクラスの人数を誇ります。2015年度にSGH(スーパーグローバルハイスクール)アソシエイト校として文部科学省の指定を受け、グローバル社会で活躍できる人材の育成をめざしてきた同校が、2016年に帰国生クラスを発展させて新設したコースがGLCです。SGH校としての教育プログラムを学校全体で実践するなか、GLCはそのプログラムのけん引役として力を発揮してきました。
「帰国生と外国語学習・主体的学習に関心を持つ一般生が在籍するGLCの生徒たちには、単にハイレベルな英語を学ぶだけではなく、このコースのあらゆる取り組みを学校全体に広げていくことが求められます。“グローバル”も大切ですが、“リーダーズ”の意味はそこにあります」と髙村先生は語ります。
英語の成績だけでなく、発信する力の育成を重視するGLCでは、ネイティブの教員による授業や、プレゼンテーションの機会を多く設けています。生徒たちは、プレゼンやポスターセッションなどの各種フォーラム、コンテストに積極的に参加し、成果を挙げるなかで、発信力を着実に身につけていきました。こうした挑戦する姿勢は、他の生徒にも波及しています。
「生徒が自己肯定感を持てるようにするために、自分でこれと決めたことに自由に挑戦することを勧めています。単に知識を吸収して終わりではなく、その知識をベースに何をすべきかを考えることが大切だからです。さまざまなことへのチャレンジを通して、自分が追究したいことに出会いみずから課題を設定し、自分自身で答えを見つけることが、自信につながります」と髙村先生は語りました。
自分事として考える課題解決型学習と
積極的に取り組む姿勢
GLC新設の前年、高1から参加できる年間留学を経験した生徒は4名でしたが、1期生が高1となった年には25名が参加。参加者が増えたのは、教員が留学を勧める指導をしたわけではなく、GLCの生徒同士が刺激し合い、留学への関心が高まった結果です。参加したのは主に帰国生ではない生徒、GLCにコース移動で加入した生徒です。影響を与える「リーダーズ」の成果がここにも表れています。
2020年、新型コロナウイルスの感染が広まったときに、25名の生徒は海外に留学中でした。「こうした時代に教育を受けるということは、課題解決型学習の大切さを身をもって知ることでもあり、大きな経験となるでしょう。たとえば日本の感染拡大状況に関しても、日本の視点だけでなく、世界の視点に立ったときにどう見えるかを、留学先から発信した生徒もいました」と髙村先生は話します。
同校独自の科目として展開してきた「グローバル イシュー スタディーズ(GIS)」は、グローバルな視点での課題設定力・解決能力を鍛える授業。まさに感染症という地球規模の課題に直面する状況となり、留学先から意見を発信する生徒も、その意見を日本で受け止める生徒も、自分の問題として考えるきっかけとなりました。
また、一斉休校措置がとられたときには、教員も生徒も“学びを止めないためにはどうすべきか”という課題に直面。そのときにアドバンテージとなったのが、すでに同校で定着していたICTを活用した教育です。2016年から1人1台タブレットを所有し、特にGLC1期生は、「タブレットを使いこなすこと」を4年間実践してきたので、オンライン授業を始めることになったときにもすぐに対応できました。
新型コロナウイルス感染症の拡大や不安定な国際情勢など、先の見通せない時代の変化をみすえて絶えず変革しつづけていることが同校の強みであり特色といえます。外部プログラムへの積極的な参加や新しいプログラムの導入など、生徒たちが自由にチャレンジできる雰囲気とそれらをサポートする体制が確立されてきたなかで、今後さらに重視するのが探究学習とSTEAM教育です。STEAM教育を体現する専門チーム「S-TEAM」では、意欲的な生徒たちがウェブ制作や動画制作などを実践しています。高村先生は「何事にも積極的に取り組む姿勢は、仲間や後輩に影響を与え、波及していきます。GLCでの6年間で培った、『良き影響を与える』という意味でのリーダーの在り方を、学校全体に広げていきます」と語りました。
外国語発表会の様子。発信する力を身につけます
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留学先での経験は、グローバルな視野をさらに広げます
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「S-TEAM」の活動。ウェブ制作や動画制作を実践します
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