2005年に中高一貫部を開設した大宮開成中学・高等学校は、国公立大学や難関私立大学などへの進学実績を着実に伸ばし続けています。その実績を支えるのは、一人ひとりの生徒を大切にしたきめ細かい学習指導と、手厚い進路指導です。生徒との向き合い方、学校の取り組みと魅力について、教頭の小林佑樹先生にお話を伺いました。
生徒と教員がお互いを知り
相談しやすい関係になる
教頭 小林 佑樹先生
大宮開成中学・高等学校は、生徒の心身の成長に応じた最適なカリキュラムを展開しています。6年間を2年ずつに分けた3ステージ制を導入し、第1ステージ(中1・2)では基礎学力の完成を、第2ステージ(中3・高1)では進路意識の確立を、第3ステージ(高2・3)では現役合格力の完成を、それぞれ目標とします。教育の根幹にあるのは、校訓の「愛・知・和」の精神です。「人を育てるのは、人。」という考えの下、愛(利他の心)、知(豊かな知識と知性)、和(愛と知の調和、多様性)という三つの資質を育み、他者のことを考えて行動できる人づくりを実践しています。
「近年、進学校としての実績に注目していただくことが多いのですが、開校以来、本校が大切にしているのは人間教育です。生徒は人間的に成長してこそ、学力も伸びていくからです」と小林先生は語ります。
人間的な成長の第一歩として、特に第1ステージを重視し、学習習慣、生活習慣を確立していきます。学習面において徹底した基礎固めを行うとともに、同校オリジナルの生活記録ノート「Pride」を通して、担任は生徒一人ひとりの学習状況を把握します。「今日の国語の授業はここがわからなかった」「今日の数学の授業はおもしろくて、もっと勉強したくなった」など、生徒は書くことで自分の状況を確認でき、担任はそれぞれの生徒が何につまずいているのかを知ることができます。第1ステージの中1・2生はノートを提出し、担任がチェックします。週末には保護者にもコメントを書いてもらいます。
「このノートがあることで信頼関係が築かれ、対面でも相談がしやすくなります。Face to Faceでの二者面談の頻度も増えていきます。そのため、職員室前に面談ができるスペースを増やしました」と言う小林先生。生徒と教員がお互いを知り、学習面と生活面を安定させていくのが第1ステージなのです。
発表する機会や行事のなかで
主体性が芽生え、成長していく
進路への意識を高めていくのが第2ステージです。生徒は「職業研究」を通して興味ある職業に出合い、「そのために何を学ぶか」を考え、その分野について学べる大学や学部・学科を調べるなどして、大学受験へのイメージを膨らませていきます。
また、1年かけて興味あるテーマを探究し、学年末に発表する同校の特徴的なプログラム「プレゼンテーション教育」が本格的になるのも第2ステージからです。高1からは、自分で決めたテーマをより深く掘り下げ、「自由学術研究」として取り組んでいきます。これは将来の進路選択へのきっかけにもなります。
「中3・高1になると、こうした取り組みを通してプレゼンテーション力が確実にアップしていきます。ほかにも英語のスピーチコンテストなど、発表を多く体験していくなかで、生徒たちの成長曲線はぐんと上がります」と、小林先生は話します。
第2ステージになると、体育祭や文化祭などの行事においても、主体的に取り組む姿勢が表れてきます。生徒たちの成長を見守ってきた小林先生は、「最も盛り上がる行事の一つとして、学園全体で行う文化祭が挙げられますが、文化祭実行委員長や実行委員は、中高一貫部の生徒が多く担っています。『学校のために貢献したい』『みずから動いて行事を成功させたい』といった意識は、中高をまたいだこの時期に強くなっていくようです」と話します。
また、「プレゼンやスピーチの力の向上と、行事への主体的な取り組み方に、生徒たちの人間的な成長を感じる」と小林先生。「みずから興味のあることを学ぶ。みずから動いて学校に貢献する。この“みずから”が芽生えてくる成長を、教員としてはとてもうれしく思います」と語ってくれました。
1年かけて探究し、発表する「プレゼンテーション教育」は、進路選択へのきっかけにもなります
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生活記録ノート「Pride」。生徒と教員はお互いを知り、信頼関係が築かれます
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昼休みや放課後など、二者面談は校内の日常。一人ひとりと向き合います
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生徒一人ひとりと向き合い
それぞれの強みを生かす進路指導
第3ステージでは、生徒それぞれの進路、志望校に合わせた放課後の補習が増えていきます。東大対策、難関私立大対策など、大学別の対策講座や、リスニングの講座などが開かれ、各教科の教員による添削もきめ細かく行われています。昨年度は、国公立大学の合格者数が倍増するなか、医療系の大学・学部をめざす女子が増え、それぞれ第一志望校に合格しています。
また、総合型選抜、学校推薦型選抜に対応できる生徒が中高一貫部に多いのは、プレゼンテーション教育で取り組んだそれぞれの研究テーマを、面接などで生かせることが要因となっています。プレゼンテーション教育は、高1まではプレゼン発表ですが、高2では探究成果を論文にまとめます。「その論文が、推薦入試などで研究テーマを提出するときに生きてくる」と、小林先生は話します。「論文の生かし方はさまざまです。たとえば、ダンスが好きでチアダンス部に所属し、体育の教員を志望していた女子生徒は、体育大学の推薦入試を受けたときに、高2で書いたダンスについての論文を生かして合格しました」と、その成果の例を挙げました。
学力をつけて一般入試に臨む生徒、推薦入試の面接で得意なプレゼン力を発揮する生徒など、それぞれ自分の強みを生かして入試に挑んでいます。同校の進路指導の基本方針の一つは、生徒それぞれの強みをしっかりと見極めることです。教員は一人ひとりの希望進路とともに、強みを生かす挑み方を、細かい面談を重ねて一緒に考えていきます。教員が生徒の強みを理解し、生かしていくことができるのは、6年間という時間のなかで、学力を詰め込むだけでなく、あらゆる活動を通して一人ひとりと向き合ってきたからです。
「放課後の校内では、教員が生徒の質問・相談に応えているのはもちろんですが、高3が中学生に教えているシーンもよく見かけます。学び合い、高め合う学校の雰囲気は、生徒たちがつくってくれています。中高一貫部を開設して18年が過ぎ、この雰囲気が学校の文化、伝統になってきたと感じています」と言う小林先生。同校では、「人を育てるのは、人。」という教育と、人と人とのかかわり合いによる学びがしっかりと根づいているといえます。
最後に小林先生は「本校は一人ひとりを大切にする温かい学校です。6年間でじっくり人を育てるという強い思いがあります。生徒同士、そしてわたしたち教員も生徒と共に学び合いながら一緒に成長したいと思っています。入学後は一緒に学び合っていきましょう」というメッセージを送ってくれました。