「国学院久我山」といえば、ラグビーやサッカーなどの強豪校として思い浮かべる方も多いでしょう。その一方で、進学校としての顔もあり、男女別学の中高一貫校という面も持ち合わせています。そんな同校の誇る施設の一つが、蔵書8万冊超の図書館です。ともに司書教諭の高橋知尚先生(社会地歴公民科主任)と森美里先生に、図書館を軸とした同校の取り組みについてお聞きしました。
蔵書数は充実の8万冊超
日本史と日本文学が特に充実
森 美里先生(左)、高橋 知尚先生(右)
-貴校の図書館は中学・高校としては類を見ないほど充実しているとお聞きしています。
森 充実ぶりを測る尺度はいろいろあると思いますが、たとえば蔵書数は8万冊を超えています。
-8万冊というのはずいぶん多いですね。
森 もちろん、内容もバラエティー豊か。小学校にあるような児童書から、大学図書館に所蔵されているような専門書までがそろい、生徒のさまざまな興味・関心に応えることが可能です。
高橋 國學院大學の付属校ということもあり、質・量ともに特に充実しているのが、日本史と日本文学に関連する書籍です。大学で日本史や日本文学について学んでいる卒業生から、「久我山の図書館は大学図書館に引けを取らないし、使いやすかった」という話を聞くことは珍しくありません。
全集も充実しています。文学の場合、中高で学ぶ、たとえば芥川龍之介や夏目漱石などの全集は全巻所蔵しています。また、古典の全集は複数の出版社のものがそろっており、解説などを比較することもできます。上手に活用すれば、学習の幅は相当広がるはずです。
「図書館オリエンテーション」を実施
中高生それぞれにお薦め本のリストを作成
-今、「上手に活用すれば」というお話が出ましたが、これだけの規模を誇ると、図書館を賢く利用するにはそれなりの知識やノウハウが必要になると思います。図書館の利用法そのものを教えるような時間はあるのでしょうか。
森 中1生と、高1の高入生を対象に「図書館オリエンテーション」という時間を設けています(今年は中高一貫の高1生にも中学入学時との変更点を紹介)。『図書館利用案内』という小冊子を配り、図書の借り方・返し方などの基本ルールから始まり、図書の分類法、図書館が提供するサービスまで、事細かく説明しています。高1は1時間で終わりですが、中1は国語の時間のうち週1コマを「図書館授業」としており、図書館に親しめるように気を配っています。ただ、丸々1時間説明の時間に充ててもなかなか頭に残りませんから、後半は読書をする時間としています。
高橋 中2生になって図書館授業がなくなった後がポイントです。中1の1年間で図書館と本に対する距離はかなり縮まりますが、最低でもその距離を保ちながら、引き続き図書館にどう足を運ばせるか、本にどう親しませるかが重要になると考えるからです。その対策の一つとして、各教科の先生には「わからないこと、調べたいことがあれば、図書館に行こう」と生徒に声を掛けてもらうようにしています。また、中1生から高2生までは10分間の「朝読書」の時間をほぼ毎日設けています。
-お薦め本のリストを作成しているそうですね。
森 前述した『図書館利用案内』に、中学生向けには「文庫の100冊」として日本文学編と外国文学編(各100冊)を、高校生向けには「文庫の100冊」として日本文学編を、さらに「新書の100冊」を掲載しています。このうち「新書の100冊」は別刷りで簡単な解説を付けた冊子も配布しています。本校では生徒に毎月1冊本を読み、「読書ノート」をまとめることを課しているのですが、この100冊シリーズのなかから選ばせることもあります。
中学生向けのリストのテーマは「背伸びをしよう」。自分の興味・関心に従って本を選ぶだけではなく、ちょっと難しいものも紹介することで、読書の幅を広げ、名作・古典に触れるきっかけを与えようというわけです。また、高校生ともなると、将来の進路について考え始めますから、「新書の100冊」では進路選択に役立つような本も入れています。こちらは2年に1度、必ず改訂し、アップデートしています。中学生・高校生とも自身と将来に対する「気づき」になればと思っています。
図書館を利用する際のバイブル『2022年度 図書館利用案内』(左)と新書の道しるべ『久我山高校 新書の100冊』(右)
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広々とした館内には閲覧スペースが2か所に設けられており、同時に2クラスが授業を行うことも可能です
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工夫が凝らされたディスプレーは書店顔負け。読書意欲が刺激されるはずです
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「図書館ポータル」でより高度な学習を
将来を決める1冊との出会いの場に
「図書館ポータル」トップページ。
「知の宝庫」への入り口です
-貴校の公式サイトには図書館のページがあり、そのなかには「図書館ポータル」があります。これはどのようなものですか。
高橋 中学生なら各教科における調べ学習、高校生なら「総合的な探究の時間」に役立つリンク集です。与えられた課題やみずから立てた課題を解決するには、さまざまな面から調べることが必要です。「図書館ポータル」はその一助となることを願って2021年11月に開設しました。
森 たとえば、ある課題についてその解答が載っている書籍を2冊、ウェブサイトを二つ、それぞれ提示するという授業を行ったことがあります。世の中には多種多様な調査方法と情報源があることを知ってもらうのがその狙いでした。徹底的に調べて解答にたどり着く力は大学生・社会人になってからのほうがより強く求められますから。
-最後に、受験生と保護者の方にメッセージをお願いします。
森 本校の図書館には8万冊超の本があります。そのなかには自分の興味・関心を引くものが必ずあるはずです。それをさらに深めるのに役立つ本にも巡り合えるでしょう。本校の図書館で、ぜひ自分の世界を広げてください。
高橋 先日、本校の卒業生で、中国史を専門にする大学教授が訪ねてきたのですが、本校の図書館で『三国志』関係の本を読んだことを鮮明に覚えていると話してくれました。また、ここにある恐竜の本を読破し、恐竜研究の道に進んだ卒業生もいます。皆さんも本校の図書館で、自分の可能性を広げてくれる1冊に出会ってみませんか。