Spotlight
(「22年10月号」より転載/22年9月公開)
横浜女学院
中学校高等学校
概念を理解し、知識と連携させる
現代に通じる思考力を養う「探究学習」
イエス・キリストの教えである「愛と誠」を校訓とする横浜女学院中学校高等学校は、「キリスト教教育」「学習指導」「共生教育」の三つを柱として、伝統を守りながらも時代に合った教育に取り組んでいます。なかでも力を入れているのが「探究学習」です。その具体的な学びについて、社会科担当の岩田賢先生にお聞きしました。
親しみやすいゲームで疑似体験しながら
概念を理解することで知識も定着
探究学習の様子 「ESD(持続可能な開発のための教育)」と「CLIL(内容言語統合型学習)」の二つを軸に、英語運用能力と国際的な視野の養成をめざす横浜女学院中学校高等学校。学びをより深めるために、各教科の授業で実施される「探究学習」も、同校の特徴的な取り組みの一つです。「どの単元においても、概念と知識を分けることを意識しています」と話すのは、社会科担当の岩田賢先生です。「固有名詞や年号といった知識を覚えるだけでは、ひと通りの解釈の仕方しか身につきません。探究学習では、教科書から一歩踏み出して、概念的に理解できる仕組み作りを心がけています」
たとえば、1学期の高1の歴史総合の授業では、「貿易ゲーム」を通して、「グローバルなかかわり」「貿易」「相互依存」の三つの概念を関連づけた「探究ステートメント」を中心に、探究学習を実施しました。「貿易ゲームとは、各国のチームに分かれて、保護貿易や自由貿易など、生徒たちにさまざまな条件下での貿易を疑似体験してもらうゲームです。それによって、各貿易形態のメリットやデメリット、また貿易によって生まれる国家間の相互依存の関係などを実際に体感してもらいます」と、岩田先生は説明します。
一方で、上記の三つの概念は、同じく1学期で扱う「産業革命」「中国の開港と日本の開国」などの単元に広く共通するもの。最初に概念を理解することで、こうした知識との結び付きが容易になり、より深く学べるようになります。実際に、1学期の中間テストの平均点は、想像以上に高かったそうです。「授業が終わった後も、貿易ゲームについての議論が交わされている光景がよく見られ、生徒たちの熱中ぶりには驚きました」と岩田先生。「探究学習を通して、多面的に物事をとらえる力をつけ、自分たちが生きる時代に合った思考ができるようになることを期待しています」と話します。
多くの場面で表れる成果
固定観念からの解放にもつながる
社会科担当 岩田賢先生
探究学習の成果は、さまざまな場面で見られると言います。たとえば、昨年の中2の授業では、政治思想「イデオロギー」についての探究学習を実施。それに感銘を受けたある生徒は、今年の夏休みに、自分の興味・関心がある分野について、英語でプレゼンテーションを行う企画「ラーニングバイティーチング」を、生徒みずからが発案・実行して「ファシズムと共産主義の親和性」について発表しました。また、「ある生徒からは、『苦手だった歴史が好きになった』と言われました」と岩田先生。「概念化して考えるようになってから、歴史というのは単なる過去の出来事ではなく、現代を生きる自分たちにも通じるものだと感じたそうです。“歴史=暗記科目”という固定観念から生徒たちを解放することは、探究学習の本質的な意義だと思います」と、目を細めます。
「学習指導要領が大きく変わり、大学入試のあり方もどんどん変化していきます。このような不安要素が多いなか、本校では概念と知識を結び付けることで、確かな学力を身につけていきます」と岩田先生。今後も同校では、生徒たちの興味・関心を引き出すような学習ゲームを織り交ぜながら、教科の垣根を越えた探究学習を行い、より広範囲で生かせる思考力の養成をめざします。
《学校のプロフィール》
横浜女学院中学校高等学校
●所在地:〒231-8661 神奈川県横浜市中区山手町203
●TEL:045-641-3284
Information
学校説明会などの情報はこちらよりご確認ください。
https://www.yjg.y-gakuin.ed.jp/examinees/explanatory_meeting/
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