受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2014年5月のBooks

 もし過去に旅することができたら、どの時代に行ってみたいですか。どの時代もおもしろそうですが、過去に行って誰かとかかわったことで、その人の人生が変わり、その子どもが変わり、孫が変わり…と巡り巡れば、今の時代に戻ってこられないこともあり得ます。「過去からつながる今がある」。今月紹介する『サクラ・タイムトラベル』は、そんなことを感じさせてくれる、江戸時代にタイムスリップするお話です。現実にはありえなくても物語なら何でもあり。あなたも主人公と一緒に江戸時代を旅してみませんか。

『ボタ山であそんだころ』

  • 石川えりこ=作・絵
  • 福音館書店=刊
  • 定価=1,500円+税
  • 対象:小学校低学年向け

昭和時代の炭鉱の町で 子どもたちは強く たくましく生きていた

注目の一冊 炭鉱のある町で生まれた「わたし」。家ではご飯を炊くのも、お風呂を沸かすのも石炭を使います。通学路のそばには石炭を運ぶ列車が通り、線路の両側にはボタ山があります。ボタ山とは、石炭を掘り出すときに出る石や土が捨てられた山のこと。ボタ山には石炭くずも混じっていて、石炭が買えない人たちは、警備員の目を盗んで拾いに来ます。その人たちのなかに、同じクラスのけいこちゃんを見た気がしました…。
 昭和40年代、石炭が日本の経済を支えていた時代の、炭鉱の町の子どもたちの暮らしが、作者の体験をもとに生き生きと描かれています。子どもたちのお父さんは炭鉱で働いていますが、炭鉱は事故が多く、いつ自分の親が事故に巻き込まれるかわかりません。そんな不安な生活のなかでも、子どもたちは笑い合い、家族は支え合ってたくましく生きています。
 鉛筆タッチの線で力強く描かれた絵に迫力があり、石炭を洗う水で真っ黒く濁った川が目の前に迫ってきます。「落ちたら真っ黒やから、探しても見つからんで助からんよ」。そうお母さんに言われているのに、川を跳び越えて遊ぶ子どもたち。親に禁じられている場所でどきどきしながら遊ぶ。そんなところにも、少し前の時代の日本の子どもたちの生活があります。
 生活スタイルは変わりましたが、子どもたちの祖父母や曾祖父母が生きた時代からつながっている今を知って、「生きる」とはどういうことかを感じてほしい。黒い川に塗り込められた作者の思いが、読む人に強く訴えかけてきます。

『りんごの花がさいていた』

  • 森山京=作
  • 篠崎三朗=絵
  • 講談社=刊
  • 定価=1,100円+税
  • 対象:小学校低学年向け

古い木の椅子は お母さんの 思い出がいっぱい

 そのおばあさんは、古い小さな家に独りで住んでいました。おばあさんが病気で亡くなると、3人の息子のうち、長男のイチロは家を、次男のジロはヤギをもらいました。三男のサブロには何も残っていなかったので、おばあさんがいつも座っていた木の椅子をもらうことにしました。「さあ、母さん、2人で行こう」。お母さんをおんぶするかのように背中に椅子を背負い、若者は遠い町に帰っていきました。
 座り心地の良さそうな、どっしりした木の椅子は、大きな愛情で受け止めてくれたお母さんの姿そのもの。お母さんの思い出がたくさん詰まった古い椅子が、優しくて、生きるのが少し不器用な若者に、幸せを運んでくれる物語です。

『ゆいはぼくのおねえちゃん』

  • 朝比奈蓉子=作
  • 江頭路子=絵
  • ポプラ社=刊
  • 定価=1,000円+税

  • 対象:小学校中学年向け

一人っ子のぼくの前に ある日突然、本当の お姉ちゃんが現れた!

 「ヒロトにはお姉さんがいるんだ」。ある日、パパから打ち明けられた話にヒロトはびっくり。ママと結婚する前に別の女性との間に生まれた子で、何とその子をしばらく家に預かるというのです。女の子の名前はゆい。ヒロトより3歳年上の6年生です。突然自分の生活に割り込んできた「お姉ちゃん」にパパを横取りされたような気がして、おもしろくないヒロトでしたが…。
 両親に甘えて育ってきた少年が、人の心配ごとに寄り添い、その子のために何かしてあげたいと思うようになる。その変化がていねいに描かれています。見ず知らずだった2人が、本当の姉弟になっていくまでを描く心温まる物語です。

『はじめての考古学』

  • 菊池徹夫=著
  • 朝日学生新聞社=刊
  • 定価=1,000円+税
  • 対象:小学校中・高学年向け

遺跡はなぜ土の下に? なぜ時代がわかるの? 歴史の謎に挑戦しよう

 弥生時代の遺跡から、石包丁という平たい石器が発掘されることがあります。これは当時、稲の穂を摘む道具として使われたものです。でも、なぜそんなことがわかるのでしょうか。石包丁はその分布から、米作りと同じ時期に朝鮮半島から伝わってきたことがわかっています。そこで石包丁と同じものを作って、イネ科の植物を切ってみたところ、出土した石包丁にあるのと同じ特徴的な傷が付くことがわかったのです。
 発掘調査や研究の方法、考古学から見た日本の歴史など、考古学の魅力をわかりやすく紹介します。遺跡はなぜ土の下にあるのか、なぜ出土された遺物の時代がわかるのかなど、素朴な疑問にも答えてくれます。

『サクラ・タイムトラベル』

  • 加部鈴子=作
  • 岩崎書店=刊
  • 定価=1,400円+税
  • 対象:小学校高学年向け

博物館の非常扉は 江戸時代への 入り口だった

 歴史博物館の無料チケットが手に入り、いとこの龍之介と行くことになった志歩。歴史好きの龍之介を展示室に残し、休憩コーナーのソファでうとうとしていると、黒いコート姿の男が廊下の奥にいるのが見えました。後で龍之介の話を聞いて志歩はぞっとしました。この博物館では、いるはずのない黒い影を何人もの人が目撃したというのです…。
 思わぬことから江戸時代にタイムスリップした志歩と龍之介。自分たちのせいで歴史が変わることのないように注意しながら、火消しの親子を手伝って大活躍します。武士の父子愛、時を超えたはかない恋のお話なども挟みながら、はらはらどきどきの展開で、一気に読ませてくれます。
 

『教えて! 校長先生
「開成×灘式」 思春期男子を伸ばすコツ』

  • 柳沢幸雄+和田孫博=著
  • 中央公論新社=刊
  • 定価=800円+税
  • 対象:保護者向け

東西トップ校の 校長先生が答える 保護者の疑問25問50答

 「面倒見は悪い学校だが生徒は世界一優秀」と語る開成の柳沢幸雄校長。「どんな個性でも受け入れられるところが灘の懐の深さ」と語る灘の和田孫博校長。戦前からの伝統校であること、自由と自主性を重んじる校風であること、東京大学に多数の合格者を出していることなど、多くの共通点がある東西のトップ校の校長先生が、学校、勉強、人間関係、大学受験などについてアドバイスしてくれます。
 今、必要な学びとは何か、効率的な勉強法はあるのか、海外で学んだほうがよいのか、親が心がけるべきことは何かなど、保護者の視点から答えてくれる25問50答。開成中、灘中の学校情報や合格するための勉強法も見逃せません。

『科学と人間の不協和音』

  • 池内了=著
  • 角川書店=刊
  • 定価=724円+税

  • 推薦者:茅ヶ崎校校舎責任者 吉田 朋弘 先生

科学は何をしてきたのか、 何をしてこなかったのか、 科学のあるべき姿を説く


茅ヶ崎校校舎責任者
吉田 朋弘 先生

 宇宙物理学者の著者が、科学の役割について多方向から論説しています。小学生が読むには難しい内容ですが、前文と後書きにアウトラインがまとめられているので、ここを読むだけでも内容をつかむことはできます。
 日本では科学に対してプラスのイメージを持つ人が多いと思います。科学の進歩で生活が豊かになった、便利になった等々。ところが西洋でのとらえ方は違います。科学が発展し過ぎると身を滅ぼす、天才的な科学者は何をしでかすかわからない、そういった科学への警戒心を持っています。それが小説や映画の題材にもなっていて、「フランケンシュタイン」や「ジキル博士とハイド氏」などには、恐ろしい科学者が出てきます。日本人は科学に対してそうしたイメージはあまり持っていません。しかし2011年3月に東日本大震災による福島第一原発の事故が起きてから、科学・技術への信頼は大きく揺らぎました。
 本書は、日本人がとらえていた科学に対するポジティブなイメージとは異なる観点から、科学とは何か、科学者はどうあるべきかを説いています。科学と正面から向き合ってこなかったことが、原発の事故、戦争への加担、公害問題、環境問題、エネルギー問題などの問題につながっていると著者はいいます。
 本書は中学入試の国語の問題にも取り上げられています。今年も科学のニュースは多いので、その意味では注目される一冊かもしれません。中学・高校に上がってからでも構いません。特に理系に進みたい人、科学者をめざしている人はぜひ読んで、科学をさまざまな方向から客観的にとらえられるようになってほしいと思います。

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