受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2014年5月のBooks

 この夏休み、おもしろい本に出合いましたか。今月紹介する『世界クワガタムシ探険記』の著者は、進化論を提唱したダーウィンの『ビーグル号航海記』を読んだことをきっかけに、自分も見知らぬ国を探検して、生き物を見てみたいと思うようになったそうです。もしかしたら、この『世界クワガタムシ探険記』を読み、将来、昆虫学者や昆虫写真家になりたいと思う人も出てくるかもしれませんね。そんな昆虫好きには見逃せない一冊です。夏休みに捕まえた昆虫のことを思い出しながら、ぜひ読んでください。

『世界クワガタムシ探険記 ダーウィン・ビートルを求めて』

  • 山口進=写真・文
  • 岩崎書店=刊
  • 定価=1,600円+税
  • 対象:小学校低・中・高学年向け

美しい姿にびっくり! 熱帯の大自然を歩き続けて 出合った珍しいクワガタの数々

注目の一冊 表紙に出ているクワガタムシ。変わった形だと思いませんか。角のように伸びた大あごは細長く、脚が長いところも、日本でよく見るクワガタのイメージとは違います。これはチリクワガタという種類です。進化論を提唱したチャールズ・ダーウィンが南アメリカに上陸したときに見つけたので、ダーウィン・ビートルと呼ばれています。
 著者はダーウィンが書いた『人間の由来』という本のなかで、チリクワガタの挿絵を見て以来、このクワガタのことが忘れられなくなってしまいます。「ダーウィンと同じようにチリに行って観察してみたい」。そう思った著者は、ダーウィンが探検したときのルートと、クワガタムシ図鑑に書かれた分布図をもとに、チリの港町からブナの森に入って行きました…。
 チリをはじめニューギニア、タイ、マレー半島、アフリカ中央部の山岳地帯など、著者が足で集めた珍しいクワガタムシの写真を探検記とともに紹介しています。驚かされるのはクワガタの種類の多さと美しさです。ニジイロクワガタ、キンイロクワガタ、オウゴンオニクワガタといった名前の、光り輝く珍しいクワガタが続々登場します。大あごを突き合わせて戦う姿、植物の茎を切り落として樹液を吸う姿など、その生態も写真で紹介してくれます。
 先住民の家に泊めてもらいながら、食事はサツマイモだけという生活をするなど、地域に入り込んでクワガタを探す著者。発見したときの喜びがそのまま伝わってくる、図鑑とはひと味もふた味も違う写真集です。

『ゆうだち』

  • あきびんご=作
  • 偕成社=刊
  • 定価=1,000円+税

  • 対象:幼児・小学校低学年向け

オオカミの家で 雨宿りしたヤギ、でも大丈夫?

 南の島に夕立がやってきました。空がゴロゴロとぐずり出し、辺りは急に真っ暗になりました。たまたまオオカミの家の前にいたヤギが、ずぶぬれになって困っていると、「どうぞ、お入りください」とオオカミの声。ヤギは喜んで中に入りました。ところが…。
 オオカミの家になんて入って、大丈夫なのでしょうか。でもまったく予想外のことが起きるのが、この絵本のおもしろさ。ヤギは歌います。「夕立がきたらおかしくなる、むしゃくしゃしてへんになる」。歌いながらどんどんおかしくなっていくヤギ。それにつれて絵も崩れていきます。トリニダード・トバゴの民話をもとに作られた、愉快なお話です。

『あの日とおなじ空』

  • 安田夏菜=作
  • 藤本四郎=絵
  • 文研出版=刊
  • 定価=1,200円+税
  • 対象:小学校中学年向け

戦争で家族を失った ひいばあちゃん その深い思いとは?

 夏休みに、兄と沖縄のひいばあちゃんの家に行くことになったダイキ。ひいばあちゃんの家の門には、魔除けの置物、シーサーが置かれていました。「シーサーは悪いマジムンを追い払ってくれる」とひいばあちゃん。マジムンとは魔物のことで、ひいばあちゃんはマジムンを見たことがあると言います。それは日本が戦争をしていたころでした。
 太平洋戦争末期に起きた沖縄戦で、家族を失ったひいばあちゃん。その体験を通じて、戦争の悲惨さと、命がつながっていくことの重さを訴えます。暗く悲しいばかりになりがちな戦争の話を、不思議な妖怪の話を巧みに取り入れ、子どもたちの心にしっかり届くようていねいに描いています。

『ワカンネークエスト わたしたちのストーリー』

  • 中松まるは=作
  • 北沢夕芸=絵
  • 童心社=刊
  • 定価=1,500円+税
  • 対象:小学校高学年向け

弟を救い出さなくちゃ! 姉は女剣士となって 冒険の旅に出発した

 「あんたなんていなくなればいいのに」。弟の和樹とけんかして、つい言ってしまった姉の美琴。その日、学校で和樹のクラスの子が救急車で運ばれるという事件が起きます。学校から帰ってきた和樹は部屋に閉じこもり、いくら声をかけても出てきません。中からは「死ね!死ね!」という弟の声が聞こえます。どうしよう。とにかく和樹と話をしなくちゃ。美琴にあるアイデアが浮かびました。
 弟思いの姉が、ゲームの世界で冒険をしながら、弟に降りかかった謎に迫ります。一つの出来事によって、それぞれが独りよがりのストーリーを作り、悩み苦しんでしまう。そんな弱さを持つ現代人への警告が込められた物語です。

『高校野球のスゴイ話』

  • 『野球太郎』編集部=著
  • ポプラ社=刊
  • 定価=650円+税
  • 対象:小学校高学年・一般向け

名勝負から雑学まで 甲子園大会をめぐる おもしろい話が満載

 ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手、愛称「マー君」。この愛称を広めたのは、北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹投手です。8年前の高校野球選手権大会決勝で、2人はそれぞれ駒澤大学附属苫小牧高校と早稲田実業学校高等部のエースとして投げ合い、延長15回引き分け。37年振りの決勝再試合となり、日本中が沸きに沸いた夏でした。2人はその後、日米親善高校野球大会で一緒になり、「マー君」「佑ちゃん」と呼び合う仲になったそうです。
 今年で96回を迎えた夏の甲子園大会。100年近い歴史が伝える名勝負や珍事件、さまざまな記録について、おもしろい話が詰まっています。親子で読めば会話が盛り上がります。

『本物の勉強法』

  • 白川敬裕=著
  • ダイヤモンド社=刊
  • 定価=1,500円+税

  • 対象:保護者向け

勉強の成果は 感情×戦略×思考 三つのかけ算で決まる!

 「本物の勉強法」とは、効率的で王道の勉強法のこと。これを地道に堅実に実践することが大事です。それには三つの力が必要です。第一に感情、やる気をコントロールする力です。第二に戦略、計画を立てて継続する力です。第三に思考、自分の頭で深く考える力です。この三つの力のかけ算によって、「勉強も仕事の成果も決まる」と著者は言います。
 著者はラ・サール高校から東京大学法学部に進み、在学中に司法試験に合格した弁護士。小学校のころは普通の子だった著者が、なぜ数々の難関試験を突破できたのか。自身の経験から生まれた、誰にでもできる本質的で効果的な勉強法を紹介してくれます。

『戦争童話集』

  • 野坂昭如=著
  • 中央公論新社=刊
  • 定価=514円+税

  • 推薦者:国語科副教科責任者 国定 栄太 先生

戦争とはどういうものか きちんと向き合わせてくれる12の物語


国語科副教科責任者
国定 栄太 先生

 戦争がどんどん遠いものになっていくなか、子どもたちに戦争を自分のこととして考えるきっかけを与えてくれる一冊です。わたしが初めて読んだのは小学4~5年生のころです。アニメ映画の『火垂るの墓』を見て興味を持ち、同じ作者の本を読んでみようと思ったのがきっかけです。当時、戦争は知識として知っていましたが、どういうものかはよくわかっていませんでした。でもこの本は、子どもがたくさん出てくる話なので、自分を投影して読むことができ、家族を失う悲しさなど、子どもながらに身につまされました。
 本書は、戦争をテーマにした童話形式の物語が12編収められています。そのなかには親子をテーマにした話がいくつかありますが、なかでもわたしがインパクトを受けたのは『凧になったお母さん』という物語です。やせ細ったお母さんの体が、空襲の後の強い風で宙に浮き、凧のように空に舞い上がって見えなくなってしまうのです。その表現が子ども心に、とても怖かったのを覚えています。お母さんは死んでしまっているのに、主人公の男の子はお母さんが戻ってくることを信じて、その場所で待っています。お母さんとの別れがぴんとこない主人公が、とても印象に残りました。
 この本に登場する子どもたちには、お母さんやお父さんが死んでしまったことの悲しさに気づけない幼さがあります。「死がどんなに怖いものか、死ぬとはどういうものか」。それがわかっていないほど幼いことの悲しさ。単に「戦争は悲惨だ」「死んでしまって悲しい」だけではないのです。
 サピックスで国語を学んでいる皆さんは、本書を読んだとき、そうした悲しさを感じられる人であってほしいと思います。そして戦争とはどういうものか、それがどういう影響を与えるものかをきちんと自分なりに考えてほしいと思います。

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