受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2014年10月のBooks

 皆さんが本を読むのは何のためですか。おもしろいから? ためになるから? 今月取り上げた『子どもの創造力スイッチ!』では、創造力と表現力を育む学びの場を提供する活動を紹介しています。そのなかで著者は「子どもは絵を描くのも本を読むのも、それが楽しいから」「“楽しい!”と思う心こそが学びの原動力だ」と言っています。10月27日から11月9日は読書週間です。「楽しい!」と思える本をたくさん見つけて、学びの世界を大きく広げてください。

『北加伊道 松浦武四郎のエゾ地探検』

  • 関屋敏隆=文・型染版画
  • ポプラ社=刊
  • 定価=1,600円+税
  • 対象:小学校低・中・高学年向け

江戸末期の探検家が くまなく歩いて調べた アイヌの暮らしと文化

注目の一冊 北海道はかつて「エゾ地」と呼ばれていました。この地を「北加伊道」と命名したのは幕末の探検家、松浦武四郎です。「加伊」とは「この国(大地)に生まれたもの」、つまりアイヌ人を指すアイヌ語です。「北海道」の地名はこの「北加伊道」から生まれました。
 江戸時代末期に現在の三重県で生まれた武四郎は、生涯6回にわたりエゾ地を探検しています。現地ではアイヌの人たちの案内で歩いて地図を作り、アイヌ民族の生活習慣や文化を記録して回りました。そんな武四郎の旅を追いながら、雄大な北の大地に生きるアイヌの人々の姿を生き生きと描き出しています。
 アットゥシ織という樹皮の繊維で織る民族服、命懸けの巨大なカレイ漁、喜びの星として歓迎するほうき星への思いなど、旅のなかで触れたアイヌの習俗は珍しいことばかり。イワシを煮る釜に湯を沸かしてお風呂に入ったらウロコだらけになったなど、ユニークなエピソードもあります。旅そのものは丸木舟で急流を下り、何か月も山中を歩き回る過酷なものでした。加えて、当時この地を治めていた松前藩によって、アイヌ人が不当な扱いを受けていることを、武四郎は幕府に訴えたため、命を狙われることもありました。
 アイヌの文化を伝える旅の絵本として、アイヌの苦難の歩みをつづる歴史の本として、学ぶことの多い探検記です。特に、異なる文化、価値観に敬意を払って理解しようとする武四郎の姿勢には、教えられることがあります。型染版画の絵が、北海道の大自然と素朴なアイヌの人々の姿を力強く描き出しています。

『ポッタとポッテ ランプのあかり』

  • さとうまりこ=作
  • 童心社=刊
  • 定価=1,450円+税
  • 対象:小学校低学年向け

おうちが真っ暗になる! 明かりを求めて ふたごの子リスが冒険

 ポッタとポッテはふたごの子リス。ある日、家の明かりが切れていることに気づいたお母さんは、子どもたちにランプ屋さんへのお使いを頼みます。子どもたちだけで町に行くのは初めてです。何とかランプ屋さんを探しますが、店員のキリンも、明かりがなくて困っていました。そこへお店のご主人のモグラがやってきて、明かりを取りに行くというので、ふたごたちはこっそりついていくことにしました。
 ランプの明かりは一体どこにあるのでしょう。どきどき、はらはらのふたごの小さな冒険が始まります。明かりがともると幸せがやってくる。そんな温かい気持ちを、美しい色彩の絵が運んでくれます。

『地球はメリーゴーラウンド』

  • 水谷孝次&MERRY PROJECT=作
  • てづかあけみ=絵
  • PHP研究所=刊
  • 定価=900円+税
  • 対象:小学校低・中・高学年向け

誰もが笑顔で暮らせる 地球であるために 何ができるか考えよう

 貧しい国では今、安全な飲み水や教育が足りません。豊かな国では愛と思いやりが足りません。また、こうしている間にも化石燃料は減り続け、大気や海は汚れ、森林が破壊されています。地球の人口はあっという間に100億人になります。限りある食糧、エネルギーをめぐって奪い合いが起こるかもしれません。「大切なのは、地球の人たちみんなが笑顔で協力し合い、アイデアを出して問題を解決し、仲良く笑顔で生きていくこと」と著者は言います。
 子どもたちの笑顔がプリントされた「笑顔の傘」を世界に発信する「メリープロジェクト」。その代表が、地球環境を守る大切さを、イラストと英語対訳の易しいことばで伝えます。

『よみがえる二百年前のピアノ』

  • 佐和みずえ=著
  • くもん出版=刊
  • 定価=1,400円+税
  • 対象:小学校中・高学年向け

ショパンの時代の ピアノはどんな音色? その再現に挑むプロに密着

 松尾淳さんはピアノ修復家。今日は福岡県にある松尾さんの作業所に、19世紀初めにピアノの名職人によって作られたぼろぼろのピアノが送られてきました。松尾さんの仕事は、こうした古いピアノを元の姿に戻すことです。修理ではなく、作られた時代と同じ材料を使って、その時代に奏でた同じ音色を出すピアノに戻すのです。
 ベートーベンやショパンが活躍したころ、ピアノはどんな音を奏でていたのでしょうか。その音色は現代のピアノとは「まったく別の楽器」というほど違うそうです。当時の音色を再現するために、木材はもちろん、接着剤一つにも昔のものにこだわる、ピアノ修復家の仕事ぶりを追います。

『伝記 ヘレン・ケラー 
 村岡花子が伝えるその姿』

  • 村岡花子=著
  • 偕成社=刊
  • 定価=800円+税
  • 対象:小学校中・高学年向け

人々に希望の光を! 同時代を生きた著者が つづる感動の生涯

 目が見えず、耳も聞こえず、口も利けない、という不自由な身体を持ちながらも、サリバン先生をはじめ多くの人に助けられ、ついには自分の声で講演することまでできるようになったヘレン・ケラー。その生い立ちから、同じ障害を持つ人々に希望の光を与えた晩年の活動までを、朝の連続ドラマでも話題の村岡花子さんがつづります。
 村岡さんはヘレン・ケラーが来日した際、通訳を務めています。そのときその人柄に触れたためでしょう、ヘレン・ケラーを「偉大な聖女」と呼んで尊敬しています。それだけにヘレン・ケラーへの熱い思いが込められた感動的な作品になっています。1960年初版作品が文庫になりました。

『子どもの創造力スイッチ!』

  • 石戸奈々子=著
  • フィルムアート社=刊
  • 定価=1,300円+税
  • 対象:保護者向け

子どもたちがわくわくする 新しい学びの アイデアが満載

 子どもたちが描いた絵を動画にして映したり、紙コップの糸電話で世界とつながる体験をしたり、即興的にパーカッションのアンサンブルを作ったり。各地で開かれる「ワークショップコレクション」は、毎年さまざまな創作活動が展開され、10万人を動員するほどの盛況ぶりです。
 実行委員長を務める著者は、NPO法人「CANVAS」の活動を通して「かんじる→かんがえる→つくる→つたえる」のスパイラルを基本とする、主体的で協調的で創造的なワークショップを行っています。本書ではその理念と実践例を紹介。学びのアイデアはもちろん、子どもたちの創造力、表現力を育む接し方のヒントも詰まっています。

『ぼくたちの骨』

  • 樫崎茜=著
  • 講談社=刊
  • 定価=1,400円+税

  • 推薦者:環境教育センター責任者  小河原 信介 先生

命と向き合う 剝製作りを通じて 大切なことに 気づかせてくれる物語


環境教育センター責任者
小河原 信介 先生

 主人公は足を痛めて陸上部を休部している中3の女子。ある日、新聞部の友だちの誘いで休園間近の動物園の取材に同行します。園内の古い小屋には不格好な肥満体のチーターの剝製がありました。そんなところからストーリーは展開していきます。
 最初は、剝製というなじみのない世界に引かれて読んだのがきっかけです。チーターは動物のなかで最速ですが、主人公が見つけた剝製のチーターは、とても走れないような不格好な、本来の自分ではない姿で、剝製にされています。そこに主人公は陸上選手として走れない自分の姿を重ね合わせますが、剝製の修復をする専門家から話を聞き、動物の死体を扱う剝製作りは、一つの命と向き合う仕事だと感じていきます。
 印象に残ったのは、主人公が近所の猫がくわえてきたモグラのような生き物をスケッチする場面です。お母さんはそれを見て「死体をスケッチするなんて!」と叱ります。それに対して主人公は「デジカメで撮るのは簡単だけれど、それでは細かなところがわからない」と主張します。与えられた情報をただ受け入れるのではなく、みずから問題点や疑問点を能動的に調べたり、思考を深めたりすることが本当の学びには必要だ、そんな意味にも受け取れる主張です。
 さらに主人公は「生きている動物に優しくすることは誰でもできる。動物が死んだときにどう接するかに、その人の人間性が出るのではないか」とも主張します。これが剝製作りに触れていくなかで主人公が身につけた、命への思いにつながっていると思います。
 剝製の世界を通して主題が複層的に絡み合い、いろいろなことに気づかせてくれる作品です。主人公が前向きに歩いていこうという姿勢の変化も魅力的に描かれています。ぜひ一度読んでみてください。

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