受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2015年2月のBooks

 中学入試シーズン真っただ中の今、受験生にとって最大の敵の一つは風邪などの病気です。特に強敵のインフルエンザには要注意。人とインフルエンザとのつき合いは古く、今月紹介する『おしえて! インフルエンザのひみつ』によれば、何と今から2500年も前の記録に、インフルエンザらしき病気があったことが記されています。インフルエンザ・ウイルスは、それだけ長い時代を生き延びてきた強者だということになります。「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」。本書で敵の正体と予防法を知って、インフルエンザを撃退しましょう。

『絵本 いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日』

  • 坂本義喜=原案
  • 内田美智子=作
  • 魚戸おさむとゆかいななかまたち=絵
  • 講談社=刊

  • 定価=1,400円+税
  • 対象:小学校低学年向け

お父さんが 仕事ばせんと、みんなが 肉が食べれんとやね

注目の一冊 坂本さんは熊本県の食肉センターに勤めています。仕事は牛を解体してお肉にすることです。坂本さんはこの仕事が嫌でした。牛と目が合うたびに「いつか辞めよう」と思っていました。坂本さんにはしのぶくんという、小3の息子がいます。しのぶくんは学校では、お父さんの仕事を「普通の肉屋」と言っています。格好悪いと思っているからです。
 ある日、坂本さんが事務所で休んでいると、1台のトラックが食肉センターに入ってきました。荷台には1頭の牛が積まれ、トラックが止まると、助手席から出てきた女の子が荷台に上がって行きました。女の子は牛に話し掛けていました…。
 原案者の食肉解体作業員、坂本義喜さんが20数年前に体験したことをもとにしたお話です。それまで坂本さんは、自分の仕事は、「ただ運ばれてきた動物を肉にすることだ」としか思っていませんでした。ところが運ばれてきた牛が、女の子になでられているときの幸せそうな顔を見て、自分の仕事は「牛たちが少しでも楽な気持ちで天国に行けるようにすることだ」と気づいたそうです。
 坂本さんのような仕事をしてくれる人がいるおかげで、わたしたちは食事を頂くことができます。そして人間に食事を与えるために、自分の命を差し出してくれる動物たちがいることも忘れてはなりません。毎日当たり前のように食事をするなかで、わかってはいるけれど、忘れてしまいがちな食の大切さ、そして「命を頂く」ことの意味。それを子どもたちに教えてくれる、親子で読んでもらいたい絵本です。

『スノーベアとであったひ』

  • サイード=作
  • マリーネ・ルーディン=絵
  • はたさわゆうこ=訳
  • 鈴木出版=刊

  • 定価=1,500円+税
  • 対象:幼児向け

森に置いてあった赤い冷蔵庫中から出てきたのは…

 雪が積もる森に、独りで雪イチゴを摘みに出かけた少女マリー。雪イチゴを探して歩いていると、ぽつんとたたずむ赤い冷蔵庫がありました。不思議に思ってマリーが扉を開けると、中から大きな真っ白いクマが出てきました。「ボクはスノーベア。ただのクマじゃないよ」。マリーと仲良しになったスノーベアは、一緒に雪イチゴを摘んでくれることになりました。おまけに願い事を二つかなえてくれるというのです。そこでマリーは…。
 少女と不思議なクマの交流を描く、スイス生まれのメルヘンです。白い雲のようなスノーベアの体は、まるでふかふかなクッションのよう。冬の夜の読み聞かせにぴったりです。

『おしえて! インフルエンザのひみつ』

  • 岡田晴恵=著
  • きしらまゆこ=絵
  • ポプラ社=刊
  • 定価=1,300円+税

  • 対象:小学校中学年・高学年向け

毎年はやるのはなぜ? その正体を知って 感染から身を守ろう

 インフルエンザの名は、もともと「インフルエンザ・シエリ」。「星の影響」を意味することばから生まれたといわれています。昔は天空の星の動きが影響して起こる病気だと考えられていたからです。このことでもわかるように、インフルエンザは昔から人類を苦しめてきました。その怖さは、ウイルスがどんどん変身していくことにあります。ある型のウイルスに対して人が免疫力をつけても、すぐに変身してしまうので、免疫が効かなくなってしまうのです。
 インフルエンザの歴史から性質、感染・流行の仕方、鳥インフルエンザの怖さ、予防法・対策法に至るまで、インフルエンザのすべてを子どもたちにわかりやすく解説します。

『シロガラス 1 パワー・ストーン』

  • 佐藤多佳子=作
  • 偕成社=刊
  • 定価=900円+税
  • 対象:小学校高学年向け

神社の謎に迫る 子どもたちの身に 不思議な出来事が!?

 パワースポットとして人気の白烏(シロガラス)神社。その境内には白いカラスの石像があり、触れると災いが起こるという言い伝えがあります。千里の祖父は白烏神社の宮司で、古武術の師範。小5の千里も古武術の天才少女です。ある朝、カラスの群れが1羽の鳥をいじめていました。それは白いカラスのようでした…。
 白烏神社を舞台に、不思議な事件に巻き込まれていく子どもたち。千里を含む6人の子どもたちが個性豊かに描かれるなか、物語は神社に伝わる謎の解明に向かって進んでいきます。中学入試で取り上げられることが多い著者によるファンタジー。現在3巻まで刊行されており、4巻以下も続刊予定です。

『東京駅をつくった男』

  • 大塚菜生=著
  • くもん出版=刊
  • 定価=1,400円+税
  • 対象:小学校高学年向け

東京駅の赤れんがには 建築家・辰野金吾の 思いが詰まっていた

 東京駅は2014年12月20日、開業100周年を迎えました。駅舎は3階建てで、北と南にはドームがあり、全体の外観は赤いれんがに白い花崗岩の帯が特徴です。3階部分は戦争で焼けてしまいましたが、2012年に開業当初の姿で復原されています。
 設計したのは工部大学校(現在の東京大学工学部)で学び、イギリスにも留学した建築家の辰野金吾。設計の注文がきたのは1907(明治40)年です。当時はコンクリート造りの建物が流行していましたが、命を燃やしているような赤いれんがの色に、金吾は特別な思いがありました。建築の道を志し、日本銀行や私鉄の駅舎など、数多くの建物を設計した辰野金吾。その努力の生涯を描きます。

『マララ
教育のために立ち上がり、世界を変えた少女』

  • マララ・ユスフザイ、  パトリシア・マコーミック=著
  • 道傳愛子=訳
  • 岩崎書店=刊

  • 定価=1,700円+税
  • 対象:小学校高学年向け

同世代に語りかける 友だち、学校の惨状、 そしてあの日のこと

 「400以上の学校が破壊されました。女性たちはむちで打たれました。人々が殺されました」。2014年、17歳でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんは、受賞演説のなかでこう語ります。「なぜ学校が破壊されたのか、なぜ女性たちがむちで打たれ、人々が殺されたのか」。本書がマララさん自身のことばで伝えてくれます。
 学校への思い、家族や友だちのこと、女の子の悩み。ありのままに語るマララさんは普通の女の子。普通の女の子が、命を狙われる恐怖を感じながらも、教育のためにイスラム過激派に立ち向かっていく。パキスタンの惨状に驚かされるとともに、彼女の信念の強さに心を揺さぶられます。

『武士の家計簿  「加賀藩御算用者」の幕末維新』

  • 磯田 道史=著
  • 新潮社=刊

  • 定価=680円+税
  • 推薦者:第一教務部 山口 拓司 先生

映画化もされた作品。 学問としての歴史に触れる 最高の入門書


第一教務部
山口 拓司 先生

 突然ですが、「江戸時代に11歳で就職試験を受ける人もいた」と聞くと、皆さんは驚かれるのではないでしょか。昔の子どもは遊んでばかり…と思う人もいるかもしれませんが、昔の子どものなかにも皆さんと同じように、勉強をがんばっていた人たちもいたのです。
 現在は、テレビで時代劇が放映されているほか、江戸時代を題材にした時代小説や漫画などもたくさん刊行されています。しかし、本書はそのような物語としての歴史ではなく、学問としての歴史に触れる最高の入門書ではないかと思います。
 学問の入門書ですが、けっして堅苦しい内容ではありません。偶然発見された、加賀藩の下級藩士で代々御算用者(会計処理の役人)を務めた猪山家の家計簿をもとに、江戸時代から明治初期までの武士の生活を生き生きと描き出します。借金まみれだった猪山家が、家計を建て直していく様子を軸に、当時の生活や行事、行政や教育などが織り交ぜられており、歴史学者ならではの豊富な話題や、鋭い見識には本当に驚くとともに、感心させられます。
 また、家計を立て直し、出世していく様子には、やはり「勉強は大事なのだな」という思いをあらためて痛感させられました。特に算数好きには励みになる内容だと思います。歴史の本なのに? と思うかもしれませんね。その答えは読んでからのお楽しみ、としましょう。
 そして、緻密な研究から浮かび上がる150年前と現在との変わらぬ深い家族の絆や愛情に、恥ずかしながら感動を覚えてしまいました。しかし、こうした感情はわたしだけではなかったようで、2010年にはこの本をもとに映画も制作されています。
 サピックスで歴史を学んで中学受験を経験した人であれば、十分理解できる内容だと思います。受験後に楽しみながら読んでもらえれば幸いです。

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