受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

※お好きな本のタイトルをクリックして下さい。その本に関する内容が、表示されます。

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2015年3月のBooks

 春休みは何か計画がありますか。期間は短いですが、夏休みや冬休みと比べて、春休みは宿題がない学校が多く、また気候も穏やか。この機会を利用して好きな本をたくさん読みましょう。そして、春休みが終われば、学校では新学期です。新しく『さぴあ』の読者になってくれた皆さんも多いと思います。このコーナーではおもしろい本、心に響く本、ためになる本など、毎月えりすぐりの新刊本を中心に紹介しています。本を選ぶときはぜひ参考にしてください。

『ABC! 曙第二中学校放送部』

  • 市川朔久子=作
  • 講談社=刊
  • 定価=1,500円+税
  • 対象:小学校高学年向け

今でなくてもいい いつか伝わるかもしれない だから手を伸ばしていよう

注目の一冊  曙第二中学校放送部、あけぼのブロードキャスティングクラブ。略して“ABC”。みさとはその副部長です。とはいえ部員は部長と2人だけの廃部寸前の弱小部。みさとはバスケ部でしたが、訳あって退部し、気楽そうな放送部に入部したのです。
 ところが、アナウンスに不慣れなみさとの放送を、バスケ部の亜美たちはからかいます。いつものように嫌がらせをしてきた亜美。みさとの怒りが頂点に達しようとしたとき、亜美に向かって「ブス」と言った人がいました。転校生の葉月です。葉月は美人でクラスの注目の的。でもほとんど口を利かず、周囲の誰ともなじもうとしません。その葉月の口から出たひと言に、教室は静まり返りました。
 その後、葉月は放送部に入りますが、放送コンクールのための作品作りに加わろうとしません。怒りをぶつけたみさとの胸に、葉月のことばが突き刺さります。「あなたは何のために放送のコンクールに出るの。部の存続のため? 内申のため? それともみんなの前で上手に読む自分?」。真っ正面からぶつからないと気が済まない葉月との関係に戸惑うみさと。その心の変化を軸に、ひそかに思いを寄せる男子、能天気な顧問の先生など、個性豊かな人たちを交えながら、ラジオ番組作りを通して、主人公たちの思いが形になっていくまでを描きます。
 表面的なやりとりで流れて行く日常のなかで、立ち止まらなくてはいけない瞬間がたくさんあることに気づかせてくれます。中学入試問題でも取り上げられた『紙コップのオリオン』の作者による、青春小説です。

『あなぐまアパート』

  • あんびるやすこ=作・絵
  • 鈴木出版=刊
  • 定価=1,300円+税
  • 対象:幼児・小学校低学年向け

広い家にたった1人 そこにお客さんが 次々と訪ねてきて…

 あなぐまくんは穴掘りが大好き。いつも家で穴を掘っているので、そのたびに家が広がっていきます。でもここで暮らすのは、あなぐまくんだけ。あなぐまくんはとても寂しくなりました。そこに訪ねてきたのはうさぎの親子でした。
 何でもそろうキッチン、ピアノのあるリビング、古い本が並ぶ図書室など、お客さんが来るたびに紹介されるあなぐまくんの家は、どこもかわいらしくておしゃれ。女の子なら「わたしも住みたい」と思うのでは? 最初は、あなぐまくん1人が寂しそうに座っていた食堂が、最後は同じ食堂とは思えないほど、楽しい雰囲気に変わります。何度読んでも温かい気持ちになれる絵本です。

『まほろ姫とブッキラ山の大テング』

  • なかがわちひろ=作
  • 偕成社=刊
  • 定価=1,300円+税
  • 対象:小学校中学年・高学年向け

葉っぱを頭に乗せれば ほらこのとおり! 化け上手の姫が大活躍

 まほろ姫は里のお屋敷に住むお姫さま。タヌキに育てられたせいで、人や物に化けるのが得意です。化けるにはブッキラ山のカシワの葉が必要です。まほろ姫は子ダヌキの茶々丸と一緒にブッキラ山に葉っぱを取りに行くことにしました。ところが、山で大テングを怒らせてしまった2人は大変なことに…。
 タヌキのように化けることができるお姫さまが主人公の、楽しいお話です。一見、怖そうだけど心優しく物知りな大テングも魅力たっぷり。かぐや姫やカチカチ山を思わせる場面が出てきたり、竜や天女さまが出てきたり。日本の昔ばなしの材料を使いながら、現代の子どもたちが楽しめる新しい冒険物語です。

『かぐや姫のおとうと』

  • 広瀬寿子=作
  • 丹地陽子=画
  • 国土社=刊
  • 定価=1,300円+税
  • 対象:小学校中学年・高学年向け

1200年の時を超え 現代によみがえる もう一つの竹取物語

 主人公の想はある日、風に飛ばされた野球帽を取ろうとして、崖から落ちてしまいます。助けてくれた中学生ぐらいの少年は、偶然にも想のおじさんの工房で竹細工の仕事を手伝っていました。名前は「いささ丸」。おじさんの話では、「いささ丸」は1200年前からここで竹を編んでいたというのですが…。
 名前も不思議なら、1200年前に生きていたというのも不思議な話です。しかも「いささ丸」は、「竹取の翁」から竹籠の編み方を教わったというのです。「竹取の翁」とは、かぐや姫に出てくるおじいさんのこと。さて「いささ丸」とは何者なのでしょうか。最後まで一気に読ませる、壮大な愛のファンタジーです。

『高崎山のベンツ  最後の「ボスザル」』

  • 江口絵理=著
  • ポプラ社=刊
  • 定価=1,200円+税
  • 対象:小学校中学年・高学年向け

どん底からはい上がった 伝説のボスザルの 波乱に満ちた一生

 若くしてリーダーとなり、威厳を振りまいたのもつかの間、よその女性に熱を上げて自分のグループをほったらかし。そのせいでグループから追い出され、新しいグループで下っ端から人生をやり直す。人間の話ではありません。ニホンザルの話です。彼とは伝説のボスザル、ベンツです。
 大分県にある野生ザルの王国、高崎山。ここで最年少でボスになり、後に別の群れで再びボスとなり、大暴れしてほかの群れを一つつぶしてしまうなど、波乱万丈の生き方をしたオスザルの一生を追います。義理と人情に厚いベンツのボスぶりに加え、群れ社会のルール、行動や表情の意味など、ニホンザルの生態が生き生きと伝わってきます。

『地雷をふんだゾウ』

  • 藤原幸一=写真・文
  • 岩崎書店=刊
  • 定価=1,500円+税
  • 対象:小学校中学年・高学年向け

地雷で命を落とした アジアゾウは1万頭以上 悲劇は今も続いている

 メスのアジアゾウ、マライは、タイの森で伐採された木を運ぶ仕事をしていたとき、敷設されていた地雷を踏んで、右後ろ足の一部分を失いました。命は助かりましたが森では働けなくなり、町で物乞いの仕事をさせられるマライ。コンクリートの道を歩いたせいで傷が悪化して歩けなくなり、ゾウの保護施設に引き取られたのは3年後のことでした。
 それでもマライは恵まれているほうです。アジアの紛争地帯では、これまでに1万頭以上のゾウが地雷で命を落としたといわれています。著者は奇跡的に生き残ったゾウたちを訪ね、その姿をカメラに収めるとともに、人間の身勝手さで苦しめられる野生動物の現実を伝えます。

『シュナの旅』

  • 宮崎駿=作
  • 徳間書店=刊
  • 定価=448円+税

たとえハッピーエンドでも すべてが解決するわけではない 現実がそこにはある


国語科教科責任者
渡邊 健次 先生

 宮崎駿さんが、30年以上前にチベット民話をもとに書いた物語です。貧しい国の王子シュナが、大地に豊作をもたらすという「金色の種」を求めて「神人」の土地をめざすお話です。全体的には人間味のあるストーリーですが、描かれている世界ではすべてがハッピーエンドで終わるわけではありません。
 物語の最後でシュナは「神人」の土地で「金色の種」を手に入れて麦を育て、自分が救ったテアという少女と心を通わせます。でもそこまでの過程では、たとえば人買いに買われた人間たちが「神人」の土地に連れ去られるシーンが描かれており、「金色の種」も、単に「神人」の土地がもたらすものではなく、人々の犠牲と、人間の「業」が詰まったものだということが象徴的に描かれています。主人公は、自分なりに問題と格闘して答えを見つけて進んでいきますが、それで世界のすべての問題が解決されたわけではないのです。
 シュナは人買いの車を襲撃して、捕らわれた人間たちを助けようとします。でも自分から飛び出ようとしたのはテアとその妹だけ。不自由な自由を求めて自由になるより、奴隷のままの気楽な人生を歩む選択もありうる、そんな人間の苦い真実もきちんと描かれています。
 「神人」の土地から戻ってから意識が不安定になり、ことばを失ってしまったシュナ。冬の嵐が去って春が訪れたある日、シュナは意識を取り戻し、テアは自分の名前を呼ぶシュナの声を聞きます。涙を流してシュナを抱きしめるテア。絵に短い文章を添えた絵物語なので絵の役割が大きいのですが、2人が抱き合うこの場面の絵は作者が魂を込めて描いたことが伝わる、わたしのいちばん好きな場面です。ストーリーは理解しやすいので、何年生でも、また大人でも、ジブリの映画になじんでいない人でも楽しめると思います。ぜひ読んでみてください。

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