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「大阪都構想」の是非を主な争点に 大阪で市長・府知事のダブル選挙/橋下徹・前大阪府知事が大阪市長に当選

二つの選挙とも、大阪維新の会が勝利

 11月27日、大阪市長を決める選挙と、大阪府知事を決める選挙の投票・開票が同じ日に行われました(ダブル選挙)。市長選挙では地域政党「大阪維新の会」代表で、前大阪府知事の橋下徹氏が、現職の平松邦夫氏に圧勝。一方、府知事選挙は大阪維新の会幹事長で、前大阪府議会議員の松井一郎氏が、前大阪府池田市長の倉田薫氏ら6人に大差をつけて当選しました。橋下氏も松井氏もこれが初めての当選です。

 今回のダブル選挙は全国から注目を集めました。それは橋下氏が「大阪都構想」(詳しくは後述)を打ち出し、それを実現するために、府知事を任期途中で辞めてまで、あえて市長選挙に立候補したからです。しかも、自分の後継者を決める府知事選挙には、自分が結成した大阪維新の会の幹事長を立候補させたからでもあります。

 このように話題が豊富だったこともあり、有権者はダブル選挙に強い関心を示したのでしょう。市長選挙の投票率は60.92%で、前回より17.31ポイントも上昇し、40年ぶりに60%を超えました。一方、府知事選挙の投票率は52.88%で、12年ぶりに50%を超えました。これは大阪市民と府民が政治に変化を求めたことの表れともいえそうです。民主党と自由民主党(自民党)は共に、市長選挙では平松氏を、府知事選挙では倉田氏を支援したため、この結果は既成政党にとって打撃となりかねません。

大阪府と大阪市の二重行政解消が狙い

 さて、今回のダブル選挙の主な争点は大阪都構想の是非でした。これは現在の大阪府と大阪市をなくして「大阪都」という新しい地方公共団体をつくろうというもの。東京にもかつては「東京府」の下に「東京市」がありましたが、太平洋戦争中の1943年に府の組織と市の組織が統合され、「東京都」になりました。大阪も同じようにするべきだというのが、大阪維新の会の考えです。ただし、東京都に代わって首都をめざそうというわけではありません。その最大の目的は「二重行政」の無駄をなくすことにあります。

 現在、大阪府の人口は約886万人で、これは東京都、神奈川県に次ぐ3番目の多さです。大阪市はその約3割に相当する約267万人という人口を抱えています(政令指定都市としては横浜市に次いで第2位の規模)。どちらも巨大な地方公共団体であるだけに、予算規模も大きく、大阪府は4兆2700億円、大阪市は3兆9300億円に上っています(共に平成23年度の一般会計と特別会計の合計)。

 問題は、都道府県としては香川県に次いで2番目に狭い大阪府のエリアのなかで、府と市が似たような行政サービスを提供していること。たとえば、大阪市内には府立と市立、両方の図書館や体育館があります。その一方で、都市開発や交通網の整備なども府と市がそれぞれ別々に担っているのです。しかも、大阪市は政令指定都市なので、大阪府の中にありながら、本来は都道府県がする仕事を行うことが特別に認められています。つまり、府から半ば独立しているようなものなので、府が市を指導して無駄をなくすことができないのです。

 橋下氏はこの二重行政を問題視し、大阪都として一つに統合してしまえば、無駄をなくすことができると訴えてきました。さらに、お金を効率的に使えば、大阪の景気も回復し、魅力的な都市になるとも主張してきたのです。

 大阪都構想の主な内容は次のとおりです。まず、大阪市とその南隣の政令指定都市・堺市(人口約84万人)を解体し、既存の区を2〜4区ずつ一つにまとめて、人口30万〜50万人の特別自治区を10〜12区設置します(大阪市に隣接する豊中市、吹田市、東大阪市などの市も特別自治区とされる可能性があります)。その特別自治区には、東京23区と同様に選挙で選ばれた区長を置いたうえで、中核市(政令指定都市に準ずる市)並みの権限を与えます。そして、大阪都には水道、消防、公共交通などの大規模な事業を担当させるとともに、特別自治区には義務教育や福祉など地域密着型の行政サービスを受け持たせようというのです。

 この構想を実現するため、橋下氏は2010年4月、大阪都構想に賛成する大阪府議会議員や大阪市会(市議会)議員、堺市議会議員などを集めて大阪維新の会を立ち上げ、みずから代表に就任しました。しかし、当時の大阪市長だった平松氏は「大阪都構想は大阪市をばらばらにするので絶対反対」という立場を崩しませんでした。そこで、大阪市長の任期切れのタイミングをとらえ、橋下氏は大阪府知事を辞任して市長選挙に立候補したのです。

●現時点で想定される大阪都の範囲(太線の内側が特別自治区)

ほかの地域にも同様の動きが

 ダブル選挙の結果、大阪維新の会の代表が大阪市長に、幹事長が大阪府知事にそれぞれ選ばれたため、大阪都構想はスムーズに実現するように思えるかもしれません。しかし、実現までには三つの高いハードルを越えることが必要です。最初のハードルは、大阪府議会、大阪市会、堺市議会で賛成決議を得ること。大阪維新の会は、府議会では過半数を占めています。しかし、大阪市会と堺市議会では、第1党ではあるものの、過半数には届いていません。そのため、三つの議会すべてで賛成決議ができるかどうかはわかりません。

 2番目のハードルは、「大阪都」をつくるための特別な法律を国会で制定し、憲法第95条で定める住民投票で過半数の賛成を得ること。しかし、大阪都構想が具体的に動き出したとき、住民の過半数が果たして賛成するかどうかは予断を許さないといえるでしょう。

 そして、国会で地方自治法などの関連する法律を改正することが3番目のハードルです。現在、大阪維新の会には国会議員がいないため、民主党や自民党などの協力を得ることが必要です。橋下氏は「必要があれば、大阪維新の会が国政にも進出する」と話しています。

 府県と政令指定都市との関係の見直しの動きは大阪だけにとどまりません。たとえば、愛知県の組織と名古屋市の組織を統合して「中京都」をつくる構想や、新潟県の組織と新潟市の組織を統合して「新潟州」をつくる構想があります。また、さいたま・千葉・川崎・横浜・相模原・京都・神戸の7政令指定都市は、所属する府県から事実上独立した「特別自治市」になる構想を検討するための「大都市制度共同研究会」を設置しました。

 大阪都構想に象徴される、地方分権に対応して府県と大都市の関係や組織の在り方を見直す動きは、昔からマスコミをにぎわせながら、今もさまざまな考え方が提唱される、古くて新しい問題です。今後の動きからは目が離せません。

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