この人に聞く
早稲田大学スポーツ科学学術院教授が語る
睡眠の質は成果を大きく左右する
よい眠りは日々の環境づくりから

トップアスリートであっても、受験生であっても、実力を最大限に発揮するのに欠かせないのが「睡眠」です。長年にわたってスポーツの現場で選手を支えてきた、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の鳥居俊先生は、「睡眠の質が心身のコンディションを左右する」と語ります。競技力向上における睡眠の役割に加え、受験生の学習効果や成長期の体づくりと睡眠との関係、家庭で整えたい睡眠環境について、お話を伺いました。

早稲田大学スポーツ科学学術院
教授 鳥居 俊 先生
睡眠不足はパフォーマンスにも影響
休むことも大事なトレーニング
SAPIX YOZEMI GROUP
共同代表
髙宮 敏郎
髙宮 鳥居先生は東京大学医学部を卒業後、複数の病院で整形外科医として勤務され、1998年から早稲田大学で教鞭をとられています。現在はスポーツ科学学術院教授として研究・指導をされていますが、スポーツと睡眠の関連性に着目されたきっかけをお聞かせください。
鳥居 スポーツの現場に深くかかわるようになったころからですね。早稲田大学に着任する前から日本陸上競技連盟で選手のコンディショニングを担当しており、1992年のバルセロナオリンピックでは、日本代表選手団の時差調整合宿でのコンディション管理を任されました。その際に実感したのが「睡眠の重要性」です。よく眠れる選手は心身の状態が整い、パフォーマンスの安定度も増します。逆に睡眠が乱れると、どれだけトレーニングを積んでも結果につながりにくいのです。
髙宮 当時は睡眠医学が今ほど発達していなかった時代で、情報も少なかったのではないでしょうか。
鳥居 そうですね。まだエビデンスが十分にそろっておらず、経験的に「よく眠る選手は強い」と感じていた程度でした。今ではマットレス内蔵センサーなどで睡眠中の体動・心拍・呼吸といったバイタルデータを詳細に取得できますが、それでも睡眠研究そのものは非常に難しい分野です。
髙宮 アスリートは体をよく動かす分、自然によく眠れるというイメージがあります。実際はどうですか。
鳥居 実は個人差が非常に大きいんです。生活リズムや練習時間、仕事の有無などによって睡眠のとり方は変わります。たとえば朝練のある選手は、どうしても睡眠時間が短くなりがちですし、疲労回復のために昼寝をしすぎて夜眠れなくケースもあります。選手から「何時間寝ればいいですか」とよく尋ねられますが、基準は「翌朝しっかり疲れが取れ、心身がリフレッシュしているかどうか」。3~4時間で平気な人もいれば、10時間必要な人もいます。重要なのは、規則正しい睡眠を確保すること。これは、けがの回復やホルモン分泌にも直接かかわります。成長ホルモンをはじめ、筋肉や組織の修復にかかわるさまざまなホルモンは睡眠中に分泌が高まります。しっかり眠れないとけがの回復が遅れますし、成長期の痛みや微細なダメージの修復にも影響します。中学生などの成長痛が睡眠と深くかかわるのもそのためです。
髙宮 睡眠とパフォーマンスとの関係は、科学的にも明確に示されているのですね。トップアスリートほど、睡眠への意識が高いのでしょうか。
鳥居 特に持久系の競技では意識は高いですね。ただし朝練などの影響で睡眠時間が削られてしまうことが多いのが現実です。だからこそ、「短時間でも質を上げる」工夫が求められます。最近では県単位で中学校での朝練を廃止する動きも出てきていますが、これも睡眠の重要性が社会全体に浸透してきた証しといえるでしょう。
髙宮 睡眠環境の面では、どのような点がポイントになるのでしょうか。
鳥居 照明・音・室温などの環境要因に加えて、寝具の役割もとても大きいですね。人は睡眠中に寝返りを打つことで体圧を逃がし、体の負担を分散させています。柔らかすぎる寝具は沈み込みすぎて腰が反り、硬すぎると体を圧迫してしまいます。特に成長期の子どもにとっては、睡眠中の姿勢を自然に保てることが重要です。
睡眠は子どもの健康な体づくりの基本
集中力を高め、記憶を定着させる効果も
髙宮 睡眠に関する考え方は、受験生にも当てはまりそうですね。
鳥居 もちろんです。同じ時間眠っていても、環境が悪ければ睡眠の質は下がってしまいます。途中で目が覚めたり、朝起きたときにだるさが残ったりすることもあるでしょう。快適な照明や室温、寝具などは、子どもにも大人にも共通した大事な条件です。受験勉強は長期戦ですから、睡眠を削って集中力を落とすより、しっかり休んでパフォーマンスを維持するほうが効率的です。睡眠不足は集中力・判断力・記憶力のすべてを低下させます。アスリートも受験生も、「翌日によいパフォーマンスを出す」という点では同じであり、そのために質のよい睡眠は欠かせません。
髙宮 特に成長期は、寝具の影響も大きいのでしょうか。
鳥居 とても大きいです。寝返りがスムーズにできないと体圧が偏り、眠りが浅くなります。成長期の子どもは骨格や筋肉が発達途上にあるため、睡眠中の姿勢が崩れると疲労が残りやすいのです。腰からお尻の部分が沈み込みすぎず、自然な寝返りを促す設計の寝具を使うことで、深い睡眠状態をキープできるでしょう。
髙宮 寝る前には、どんな点に気をつけるべきでしょうか。
鳥居 できれば、スマートフォンは見ないことですね。画面を見ると覚醒レベルが上がり、寝つきが悪くなります。カフェインの摂取や、熱すぎるお風呂も避けたほうがよいでしょう。体温と自律神経を自然に睡眠モードへと向かわせることが大切です。
髙宮 受験生はつい夜遅くまでがんばってしまいがちですが、睡眠を整えるとどんな変化が期待できますか。
鳥居 学んだ内容を記憶してきちんと定着させるはたらきが強まります。睡眠中に脳が情報整理を行うため、覚えたことがしっかりと脳に定着して翌日に活用できる。これは睡眠研究が示す確かな成果です。体の疲労回復だけでなく、脳のはたらきを最大化する意味でも、睡眠は欠かせません。アスリートと同じく、受験にも“試合日”があります。ベストパフォーマンスを発揮するためには、脳も体も万全である必要があります。「眠ることは勉強の一部」と考えてほしいですね。
髙宮 受験生と保護者の方に、メッセージをお願いします。
鳥居 睡眠は健康な体づくりの基本であり、成績向上にも直結します。どれだけ勉強しても、睡眠が不足すれば効果は出ません。アスリートが練習で傷ついた筋肉を睡眠で修復して成長させるように、受験生も睡眠によって脳が整理され、学習内容の定着が強固になります。ぜひご家庭でも、よい睡眠環境を整えることを習慣化して、お子さんを支えてあげてください。
髙宮 本日はありがとうございました。
鳥居先生のアドバイスを基にエアウィーヴと共同開発
「エアウィーヴ KIDS」を2026年3月から先行販売


成長期の子どもに合わせて腰部を強化し、理想的な寝姿勢と寝返りをサポート。両サイドも硬くすることで寝具からの落下を防ぎます。
◎学校関連リンク◎
◎人気コンテンツ◎













