新日本銀行券について
知ろう
「博物館は国立印刷局の王子工場の敷地内。外の花壇には、ミツマタをはじめ、樹皮が紙の原料となる木も植えられているよ」
「それじゃ、中に入ってみよう。おっ、1階のメインテーマは、ぼくたちが『お札』と言っている、日本銀行券の偽造防止技術についてだ。ここでは2024年に登場した新札の特徴も、拡大図などを使って説明しているぞ」
「今のお札は戦後6番目の発行。アルファベットの並びから、F券とも呼ばれているのね。F券は、角度によって立体的な肖像が回転して見える3Dホログラムを、世界で初めて採用したお札なんだって」
「光にかざすと絵柄が見える透かしも、一つ前のE券より細かい模様が増えているのか。ほかにも額面の大きな数字を漢数字からアラビア数字へ変えるなど、F券はわかりやすさも大事にしているんだね」
江戸時代後期に伝わった
貴重な印刷機に注目
1階の奥に置かれたスタンホープ印刷機は、国の重要文化財。江戸時代の終わりの1850年、長崎のオランダ商館長から、江戸幕府12代将軍・徳川家慶へ贈られたイギリス製の機械なんだ。当時はこれで洋書などを印刷したそうで、国内で近代的な出版印刷が始まったころの資料として、非常に価値が高いんだよ。
偽造を防ぐ
さまざまな技術
「こっちは偽造防止技術の歴史のコーナーだ。どの国でもお札造りには、その時々の最高の技術を用いているんだね」
「技術が大きく進歩したのは近代に入ってから。それまで、文字や絵を彫り込んだ版は木製だったけど、金属板に細かい絵柄を彫って刷るようになってから、偽造が断然難しくなったのね。この手法は今も変わっていないんだ」
「金属板を彫る道具も飾ってあるよ。これはビュランという特殊な彫刻刀で、熟練の技を持つ工芸官(専門職員)が使うと、わずか1mmの間に10本以上も線を刻めるんだって。すごいな!」
「紙の厚みを部分ごとに変えて造るすき入れも、偽造防止のポイントだね。わあ、透かしの技術で作った舞妓さんの肖像もあるよ。きれい!」
偽造防止体験コーナー
1階のフロア中央にずらりと並んだ装置で、偽造防止技術を体験できるよ。たとえば、E券やF券には特殊発光インキが使われていて、紫外線(ブラックライト)を当てると、表面の印章などが光るんだ。また、備えつけのルーペで拡大して見ると、カラーコピーでは再現できないほど細かいマイクロ文字が、お札のあちこちに入っているのもわかるよ。この機会に自分の目で確かめてみて。
持てますか1億円
ぜひともトライしたいのが、1億円の重さを体験するコーナー。1万円札は1枚約1gなので、1億円だと約10kgになるんだ。体験用の札束は本物ではないけれど、雰囲気はなかなかリアル。みんなは1億円を持ち上げることができるかな?
お札の移り変わり
「2階には世界中のお札と切手が集められているよ。まずはお札についてだけど、誕生の地は10世紀末の中国。世界最大のお札も中国で、縦が約34㎝、横は約22㎝だったそうだよ。A4のノートより大きなものだったなんてびっくり」
「日本初のお札は、1600年ごろに登場した『山田羽書』か。これは三重県の伊勢神宮の門前町・山田だけで使われていたもの。こうした地域限定紙幣のシステムは、やがて領内限定で使う『藩札』として各藩に受け継がれていったんだね」
「近代的な国産のお札の第一号は、1877年発行の1円札。明治政府に招かれたイタリアの銅版画師・キヨッソーネが、日本人技師に製造技術を教えて造ったのね。だから絵柄が西洋風なんだ」
「歴代の日本銀行券も勢ぞろいしているぞ。どれも高級感があって、アート作品みたいだな」
世界のめずらしいお札
「わあ、世界のめずらしいお札のコーナーだ! ひゃあ、中央アメリカの東岸に位置する国、ベリーズの10ドル札は金箔で覆われているよ。コレクターズアイテムだそうだけど、豪華だなあ」
「世界最小のお札はロシアの10カペイカね。サイズは30mm×24mmで切手と同じ。第一次世界大戦中に金属が不足したとき、コインの代わりに切手の版面を利用して造られたんだって」
「ハンガリーの10垓ペンゴや、ジンバブエの100兆ドルなど、超高額のお札も並んでいるよ。『垓』は10の20乗、『兆』の1億倍! こうしたお札は、その国の経済が行き詰まり、物価が急上昇した際に発行されたものなんだ」
「えっ、こっちのバーレーンのお札には、1/2ディナールって書いてある? 額面を分数で表す国もあるのね。ちょっとびっくり」
世相に合わせてデザインも変化
お札や切手のデザインには、発行された時代の社会の様子が色濃く反映される。関東大震災の直後や太平洋戦争中は印刷事情が悪化し、裏が白いままのお札や、裏のりのない切手も刷られたんだね。また、女性の社会進出とともに、最近のお札の肖像には、歴史に名を残した女性(F券・津田梅子、E券・樋口一葉)が選ばれているんだよ。
切手の移り変わり
▲日本初の切手「竜文切手」
「現在の切手を使った郵便制度は、1840年に英国で生まれたのね。世界初の切手は当時の英国君主・ヴィクトリア女王を描いたもので、『ペニーブラック』と呼ばれているんだ」
「郵便制度は世界中に広まり、日本は1871年に初めて『竜文切手』を発行。この切手にはギザギザの目打ちや裏のりはないけど、翌年にはそれらが入ったものが造られたのか」
「その後、切手の製造技術はどんどん向上。偽造されにくく、カラフルにもなって、昭和30年代には切手ブームが起こったのね」
「最近はシール式のものや、変わった形のもの、自分の好きな写真を入れられるものなど、バラエティー豊かな切手が登場しているんだ。切手はまさに『小さな芸術品』だね」
世界の切手
▲世界初の切手
「ペニーブラック」
▲トランプ型やテニスボール生地のものなど、個性的な世界の切手
2階には世界各国の切手が約280点も展示されているよ。世界地図にその国の切手が貼られているので、旅行の感覚で見て回ろう。さらにフロアの一角には、珍しい切手のコーナーも設置。ニジェールがFIFAワールドカップ2014を記念して発行した世界最大の切手(135mm×186mm)など、ユニークな品がそろっているのでチェックしてみて。
見学を終えて…
「いやあ、日本の偽造防止の技術ってすごいんだねえ。あらためて見ると、彫りも透かしもとても精密でびっくりしたよ。今のお札を偽造するのは絶対に無理だね。あんなに複雑なものを完全再現するのは、誰にもできないよ」
「あはは、わたしもそう思う。でも、過去にはお札と切手の偽造事件が起きていて、そのたびに政府は対策をしてきたんだよね。今日はそういう歴史の解説はもちろん、世界各国のお札や切手もたくさん見られたし、本当に楽しかったな」
「国立印刷局の前身は、1871年創設の大蔵省紙幣司。その100周年を記念して、1971年に開館したのが『お札と切手の博物館』なんだ。当初は新宿区の市ケ谷にあったんだけど、2011年に王子に移転してね。お札と切手をメインに、国立印刷局が手掛ける品々について広く無料で紹介しているんだよ」
「ああ、国立印刷局はパスポートや証券など、公的な書類も造っているんだってね。実際の印刷の様子が気になるけど、そっちの見学は難しいのかな」
「いや、国立印刷局の工場は全国に6か所あって、そのうち東京・小田原・静岡・浜松の4か所は見学者を受け入れているんだ。どこも事前予約制だから、確認してみるといいよ」
「おもしろそう! それにこの博物館でも、紙づくり(手すき)体験や、お札と同じ印刷方式(凹版印刷体験)のイベントをやるって聞いたよ。こっちにもまた来てみないとね」
特別展・イベントも定期的に開催
お札と切手の博物館では、特別展示や体験イベントなどを定期的に開催しているよ。小学生でも参加できるイベントもあるので、興味のある人はホームページをこまめにチェックしてみよう。
INFORMATION
お札と切手の博物館
●開館時間
9:30~17:00
●休館日
月曜(祝日の場合は開館、翌平日休館)、臨時休館日
●入館料
無料
所在地:東京都北区王子1-6-1
TEL:03-5390-5194
交 通:京浜東北線「王子」駅中央口より徒歩3分、東京メトロ南北線「王子」駅1番出口より徒歩3分、都電荒川線(東京さくらトラム)「王子駅前」駅より徒歩3分